辞めない政治家・田久保伊東市長──斎藤知事居座りを模倣か

 学歴詐称疑惑をめぐり市議会から全会一致の不信任決議をつきつけられた田久保眞紀・伊東市長が9月10日に市議会解散を通告し、斎藤元彦・兵庫県知事と瓜2つの“居座り対応”をしている。県議会で不信任決議をされても辞職せずに県知事選で再選された斎藤知事と同様、田久保市長も出直し市長選での再選を目指しているように見えるのだ。

田久保眞紀・伊東市長 出所:伊東市ホームページ
田久保眞紀・伊東市長 出所:伊東市ホームページ

9月8日に集英社オンラインは「『斎藤知事の模倣犯』と揶揄の声も」と銘打った田久保市長の関連記事を出したが、まさに市議会の不信任決議を意に介さずに市長ポストに居座る対応は、斎藤知事とぴったり重なり合うのだ。

 自らの非を決して認めないという共通点もある。東洋大学を除籍されたのに市の広報誌に「東洋大学法学部卒」と記載した田久保市長は、明らかな学歴詐称に当たるとしか見えず、これが市議会での全会一致の不信任決議につながった。

 同じように斎藤知事の公益通報者保護法違反も明白で、これが県議会での全会一致の不信任案可決の理由となった。パワハラやおねだりなどの告発文書の真偽を調べる目的で百条委員会(県議会調査特別委員会)が始まったが、途中から公益通報者保護問題も調査対象に加わり、県議会では後者が不信任決議の理由となった。以下の不信任案動議にあるように、斎藤知事が公益通報者保護法違反の告発者探索(犯人捜し)をしたことをより重く見たのだ。

「(百条委員会の)調査のなかで、告発文書の内容に真実が存在し、文書が『嘘八百』ではなく、告発者への対応が告発者探しや情報漏洩の疑いを指摘されるなど不適切と言わざるを得ないことが明らかになった」「告発文書への初動やその後において、対応が不適切、不十分であった(以下略)」

斎藤元彦・兵庫県知事
斎藤元彦・兵庫県知事

 しかし斎藤知事は「県政混乱の責任は重く受け止める」と述べたものの、辞職は拒否。結局、失職をして出直し選挙に臨み、奇跡の逆転勝利で再選されることになった。そして、不信任決議の理由となった公益通報者保護法違反についても「適切な対応だった」と斎藤知事は強調。同法所管の消費者庁との法解釈が食い違っていると国会や会見で追及されても、自らの非を認めない立場を変えず、現在に至っている。

 こうした斎藤知事の居座り対応が、田久保市長の支えになっているのは確実だ。「議会の全会一致で不信任決議をされても、出直し選挙に打って出て再選される可能性は十分」という自信の裏付けになっているのは間違いないというわけだ。

 ちなみに卒業証書をいまだに見せない田久保市長に対してメディアは、記者会見できちんと答えないことも相まって厳しく批判している。

 このことについても田久保市長は、斎藤知事から多くのことを学んでいるようだ。市議会解散を宣言した後、田久保市長はネット上で「伊東市政の改革と刷新の為、そして地域を守る為に引き続き全力で尽くしてまいります」と発信。改革派市長とアピールしながら続投宣言をしたが、これは斎藤知事が県知事選で逆転勝利をしたときのイメージ戦略とよく似ているのだ。

    斎藤知事も昨年11月の出直し県知事選で自らを改革派とアピールする一方、不信任決議をした県議会やオールドメディアを既得権のように位置付けて、「改革派知事 対守旧派県議」「真実を伝えるネットメディア対オールドメディア」といった対決の構図に持ち込んでいたからだ。これが、N国の立花孝志党首との二馬力選挙と相まって、斎藤知事の再選につながったのは、昨年11月21日の本サイト記事「斎藤兵庫県知事、立花党首と共犯で公選法違反なら失職の可能性も」で紹介した通りである。

 斎藤知事の模倣犯のような振る舞いをしているように田久保市長は、改めて斎藤知事を辞職に追い込む必要性を浮き彫りにする存在だ。「公益通報者保護法違反が明白な斎藤知事が公職選挙法違反の二馬力選挙で再選、いまだに居座っている」という悪しき前例は、全国各地に確実に悪影響をおよぼしつつある具体的事例になっているからだ。

 “居座り首長コンビ”とも呼びたくなる斎藤知事と田久保市長の去就が注目される。

【ジャーナリスト/横田一】

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