自民党は生き残れるのか?野党との連立も期待薄!

 NetIB-Newsでは、「未来トレンド分析シリーズ」の連載でもお馴染みの国際政治経済学者の浜田和幸氏のメルマガ「浜田和幸の世界最新トレンドとビジネスチャンス」の記事を紹介する。
 今回は、9月19日付の記事を紹介する。

 衆参共に少数与党となった自民党は公明党以外の政党と連携しなければ、補正予算の通過もままならない状況です。10月4日、自民党は新たな総裁を選出する予定ですが、現在、名乗りを上げている5人の候補者はいずれも危機意識が乏しいと言わざるを得ません。

 その上、どの野党とどのような政策協議を進めるのかも明らかにしようとしません。これでは臨時国会が召集されたとしても、国会での審議は開店休業に陥ることになるに違いありません。これでは国民生活の安寧は「絵に描いた餅」そのものです。

 現時点では、日本維新の会と国民民主党が自民党の新政権と連立を組む相手としては有力視されています。これまで野党第1党の地位を占めていた立憲民主党は埋没する可能性が大きく、焦りの色を隠せない野田代表は自民党との水面下の交渉に動いている模様です。

 安住氏を新たな幹事長に選んだのも、過去5年間、国会対策の責任者として自民党とのパイプ作りに励んできたことが評価、期待されてのこと。石破政権で幹事長を務めた森山氏も長年、国会対策委員長を務めてきた経験の持ち主であり、安住氏とはツーカーの間柄です。

 安住氏は「自民党に対抗できるのは立憲民主党しかない」とアピールし、自民党との安定勢力化を目論んでいます。しかし、「ちびっ子ギャング」とあだ名で呼ばれる安住氏の自己中心的な姿勢は自民党の保守派には受け入れ難いでしょう。

 となると、政策面で親和性が期待できるのが日本維新の会です。自民党の幹部からも「最有力の連携・連立候補」と目されています。藤田共同代表もメディアを通じて「自公との連立」に前向きな姿勢を明らかにしているほどです。当然、政策面での合意が大前提になりますが、維新の掲げる「大阪副都心構想」や社会保障改革や安全保障政策については、自民党内にも大きな反対は見られません。

 しかも、小泉候補は維新の吉村代表とも良好な関係を維持しています。加えて、小泉候補の後見役でもある菅元首相は維新の松井元代表とは昵懇です。更に言えば、藤田共同代表は茂木候補とも気脈を通じていることを明らかにしています。

 また、国対委員長に遠藤氏が再任用されましたが、これは自民党と太いパイプを持つ遠藤氏への期待の表れで、小泉総裁が誕生した暁には維新との連立が一挙に実現しそうな雲行きです。とはいえ、連立政権入りは維新が埋没するリスクもはらんでいます。実際、「安易な連立入りには反対だ」と維新の現職の3人の国会議員が離党届を出す有様です。

 一方、先の参議院選挙で議席を大幅に増やした国民民主党ですが、玉木代表は憲法改正や原発活用といった政策面では自民党と共通点も多いため、「まずは政策で一致できるか見極めたい」と連立政権入りには満更でもないような発言を繰り出しています。玉木代表は茂木候補や麻生元総理とも良好な関係を売り物にしているほどです。

 なお、高市候補の唱える物価高対策や減税政策は国民民主党と共通する部分もありますが、高市候補と玉木代表はあまりウマが合う関係ではありません。その観点からすると、茂木総裁が誕生した場合には、国民民主との連立が具体化する可能性は大いにあり得る話です。

 林候補は中道路線が持ち味のため、立憲、維新、国民のいずれとも連携できる可能性を秘めてはいます。とはいえ、岸田元総理や麻生元総理は「勝ち馬乗り」が信条ですから、林候補を押し上げる可能性は少ない情勢です。なお、小林候補は一部の若手の期待を集めてはいますが、党内での役職経験もなく、野党との関係もほとんどありません。逆に言えば、政治とカネの問題で、一番正論を訴えることができる立場でありながら、その自民党のアキレス腱に踏み込まないため、危機感を募らせる地方組織からの支持は得にくい状況です。

 また、「日本人ファースト」政策を掲げ、政界の嵐となった参政党ですが、神谷代表は「他党との連携は全くの白紙。全ての党と政策、法案ごとの協議を進める」と独自路線にこだわりを見せています。そのため、連立入りの可能性はなさそうです。

 結果的に、自民党が掲げる「解党的な出直し」はスローガン倒れに終わり、野党との連立にも独自色は発揮できないまま、条件闘争に終始し、国民の政治不信と政治離れは加速する一方になるでしょう。これでは与野党共に共倒れ状態と言っても過言ではなく、残念ながら「何も決まらない」漂流国会が続きそうです。

 アメリカでは2大政党と言いながら、国内の分裂と分断が収まらないため、一時はトランプ大統領に肩入れしていたイーロン・マスク氏が第3極となる「アメリカ党」を立ち上げると息巻いています。日本にもマスク氏のような経済力も発言力もあるパワフルなリーダーが現れて欲しいものです。


著者:浜田和幸
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