外資消費財企業の中国事業、集中売却動向

中国経済 イメージ    中国国家統計局データによると、2025年上半期の社会消費品小売総額は前年比3.8%増の約24兆元(約524兆円)に達し、回復基調を保つ。しかし、この巨大市場の裏側で、外資系消費財企業による中国事業の売却・譲渡が相次いでいる。スターバックスが中国事業の最大60%の株式を中国本土資本に売却すると公式発表した直後、バーガーキング中国も中資のCPE源峰に多数株式を譲渡。「ハーゲンダッツが中国事業を売却する」という噂も市場を騒がせ、 1週間で2つの大規模なオーナー交代が起き、「外資消費財企業の中国事業集中売却」の論調が急速に広がった。これにより、在華外資の運命と戦略調整への関心が急激に高まっている。

 この「売却ラッシュ」は単なる撤退ではなく、市場競争の激化、国産品台頭、消費構造の変化に対応した戦略的再編だ。

スターバックス中国:60%株式譲渡の衝撃

 11月4日、スターバックスは中国トップ私募ファンドの博裕投資(BOYU)と戦略提携を発表、合資企業を設立し、中国市場での小売事業を共同運営する。博裕が合資企業の最大60%の株式を保有、スターバックスは40%を保持し、ブランドと知的財産の所有・授権者として継続。企業価値約40億ドル(現金・債務除く)に基づき、BOYUの権益を算出。スターバックスグローバルは、中国小売事業の総価値を130億ドル超と予測(博裕への支配権譲渡所得、スターバックス保持権益価値、将来10年以上の授権運営収入含む)。

 この取引は、スターバックス中国の成長ポテンシャルを反映している。10月29日発表の2025会計年度(2025年9月28日終了)業績報告によると、中国市場収入は31億ドル(前年比5%増)で、グローバルでの平均的な増加幅を上回る。第4四半期収入は8億ドル(同6%増)で、四半期連続成長。新店183店開設、47県級市場進出、年間ネット新店415店。全国1,091県級都市に8,011店、新店の2年以内同店売上は平均超と貢献している。報告書は中国市場を「1店舗当たり良好な経済効果を示す」と明記、国際市場で「最も健康的な収益地域の1つ」と位置づけ、店舗運営利益率は常に2桁を維持している。

 スターバックスはラッキンやコッテによる低価格の衝撃を受け、開店速度を鈍化させたが、一連のプロモーションと「下沈市場」(地方・小都市への進出)で対応。それらの市場を拡大・核心とし、店舗モデルを「小型で美しい」軽量モデルに調整。2025年度のデータは悪くない。

バーガーキング中国:株式83%譲渡で本土化加速

 11月10日、CPE源峰とレストランブランドインターナショナル(RBI)は合資企業「バーガーキング中国」を設立。CPE源峰が83%株式保有、RBI17%。CPE源峰は3.5億ドル(約25億元)初期資金を注入し、店舗拡大・マーケティング・メニュー革新・運営向上に充当。バーガーキング中国全資関連企業は20年の開発協議について締結し、中国での独占的開発権を付与した。

 現在約1,271店(2025年第3四半期同店売上高10.5%増)。RBICEOのJoshua Kobzaは、中国を「グローバルで最も魅力的な長期成長市場の1つ」と位置づけ。CPE源峰董事総経理の毛衛氏は、「バーガーキングはグローバル知名ブランド、この投資は中国長期成長ポテンシャルヘの自信を示す」と語る。以降、製品アップグレード・ブランドマーケティング・オフライン店舗拡大・オンラインチャネル再構築・デジタル化・財務最適化を重点に置く。計画では、2035年までに4,000店以上に拡大、持続可能な成長を実現することを目指す。

 CPE源峰のチェーン消費サービス分野投資額は累計約100億元で、蜜雪(ミーシュエ)冰城・愛爾眼科・老舗黄金・泡泡瑪特など複数の企業に投資した。これらの取引は今年初頭の現地化新経営チームの構築と一致しており、バーガーキング中国をさらに「本土化」させる。

売却噂の真相:ハーゲンダッツ、デカトロン、イケアなど

 売却中の事業としてネット上で挙げられているのは、ハーゲンダッツ中国事業、コスタコーヒー中国事業、ピザハット中国、デカトロン中国株式、イケアショッピングセンター事業。これらは突然出た話ではなく、数カ月前から噂されていた。

ハーゲンダッツ中国:店舗数激減の苦境 

 6月、メディアはゼネラルミルズが中国のハーゲンダッツ店舗売却を検討、数億ドル規模で顧問と協議中と報じた。ミネソタ州本社のゼネラルミルズは、交渉は未決で、成約に至るかは不明であり、公式には「コメントを控える」と応答した。店舗数は2024年1月の400超から現在247へ、2年で150超減少。2025年第3四半期、国際市場 (中国含む)のネット売上高は3%減少し、中国店舗の客数は2桁減少した。ゼネラルミルズの2025年第3四半期のネット売上高は48億ドル(同5%減)、純利益6.26億ドル(同7%減)。ハーゲンダッツの中国売上は2019年の8億ドルから2024年の7.3億ドルに減少し、第3四半期は3%減となった。

 ハイエンド市場を主戦とするが、国産アイスクリームの台頭でブランドイメージが崩壊した。客単価58元(約1,269円)に対し、競合のDQは23元(約500円)。

デカトロン中国:30%株式売却計画

 今年春から、デカトロンが中国子会社の約30%の株式売却を検討しており、評価額は10億ドル超という。同社は公式には「コメントを控え、長期的な発展に注力する」と応答している。中国市場はグローバルで上位5位で、94%を中国で生産しており、目標は100%という。2024年のグループでの売上高は162億ユーロ(同5.2%増、固定為替基準)、純利益は7.87億ユーロ(同15%減)。中国の成長鈍化、COVIDの影響とeコマースの台頭を受け、以前は高いコスパが武器であったが、経済の低迷と消費の多様化に即して高級化・専門化への変革を試みたものの、「高すぎる」という烙印を押されている。

イケア中国:低価格戦略で売上縮小

 イケアはショッピングセンター事業売却の噂がある。2024年度の売上高は111億元(前年比約10億元減、ピーク時である2019年の157億元と比較すると3割縮小)。過去2年累計で6.7億元投資しており、2024年は550超の低価格製品、2025年も500超に上る。2025年度の投資は2.73億元で、睡眠関連に重点を置いている。オフライン訪問者は12%増え、1元アイスクリームの売上高は29%増加した。不動産調整とオンライン消費の台頭がプレッシャーとなっている。「コスパ」面での強みが「代替品選び」に侵食され、2023年から「より低い価格」戦略を推進している。バーガーキング中国は店舗数が減少しており、マクドナルドの「ゴールデンアーチ時代」に対し、進出もサプライチェーンの現地化も遅れた。

「本土化」と「競争適応」の分水嶺

 上海市外商投資協会会長・黄峰氏は、「最近の外資の飲食企業株式売却は中国資本への譲渡で、現地化の取り組みであり、市場競争の結果」と指摘する。

 「売却ブランドは近年のパフォーマンス低下、拡大の停滞、利益の減少が普遍的に見られる」と上海社科院の詹宇波氏は中国経済新聞に語る。主要原因は激しい競争への対応策不足だ。一方、すべての外資がそうというわけではなく、オレキやサムズ・メンバーシップ・ストアは拡大している。「根本は中国消費トレンド・競争環境への適応力にある」。

 飲食チェーン協会関係者は中国経済新聞に、「中国は巨大市場であり、多くの資本が飲食を資産配置モジュールと見なし、外資ブランドは整っており、成長・規模・利益面で予測可能であり人気という。スターバックスに関するプロジェクトはとくに争奪戦」と語る。一方で本土化リソースが必要であり、もう一方では良好な資産と長期的な発展への期待があり、需要が一致して価格面で合意すれば取引は自然に行われるという。

 「M&Aは常に行われており、最近、大規模な案件が集中した結果、目立っただけであり、ビジネスの案は以前から水面下で暖められてきた」

 外資消費財の中国事業売却は、撤退ではなく戦略的再編だ。スターバックス、バーガーキングの事例は、現地資本との提携による成長の加速を示す。ハーゲンダッツ、デカトロンの苦戦は適応力不足を露呈した。一方、オレキ・サムズの拡大は成功モデルだ。


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