高島宗一郎福岡市長は23日、ホテルニューオータニ博多(福岡市中央区)で市政報告会を開催。1,300人(主催者発表)の聴衆に対し、「福岡未来設計図~アジアのリーダー都市を目指して」と題する講演を行った。
福岡は第2副首都へ
講演の冒頭では、人気テレビ番組「そこまでいって委員会NP」(読売テレビ)への出演時に語った「副首都構想」について触れつつ、都市開発など福岡市の重点施策について論じた。
高島市長は副首都について「2つあり、東京が災害に遭った際のバックアップ、もう1つは経済的に東京ともう1つのエンジンを作っていくことにある」とした上で、「とくにバックアップという点において、福岡は適地ではないか」と語った。
「東京・大阪は南海トラフを考えると同時被災のリスクがあるが福岡は少ない」と高島市長が指摘した背景には、福岡経済同友会が「首都機能のバックアップを福岡市に」と提言した経緯がある。2017年には福岡市・福岡経済同友会・福岡商工会議所の主催による「東京一極集中の是正と本社機能の地方移転を考える」と題したシンポジウムも開催されている。
一方で「大阪との都市間争いをしたいわけではない」「副首都・大阪、第2副首都・福岡のイメージです」と述べ、大阪の取り組みに配慮する姿勢も見せた。
「経済的なエンジン」という観点で現在進行中の天神ビッグバンについて、「2026年までに93棟を竣工し、ビッグバンの後半戦も入れますと120棟ということが計画されている」と状況を解説。「これによって延べ床面積が1.7倍になる大きなプロジェクトで、まさに今こそ福岡は、そうした企業の受け皿にもなれる」と強い自信をのぞかせた。

ワンビル開業と求人倍増の効果
企業にとって優秀な人材確保は至上命令であるが、高島氏は興味深いエピソードを紹介した。「ワンビル(ワン・フクオカ・ビルディング)にクラフティア(旧・九電工)が移転をすると発表したら、なんと新卒の採用応募者が倍になったとのことで、藤井一郎取締役会長は名前をクラフティアに変えたのも良かったのかなと仰ったが、採用がすごく大変ななかで、オフィス環境は採用にも大きく影響がある」と、4月に開業したワンビルの相乗効果を述べた。
福岡市は、都心の公園について民間資金やノウハウを活用した「Park-PFI」を導入し、抜本的整備に力を入れている。高島氏は、市内に1,700カ所ある公園の魅力向上と活用について、来年度から民間の意見公募を行い、そこで出されたアイデアを生かして都市部だけでなく、住宅地の小規模な公園を含めて改善することを明らかにした。
高島市長は、福岡市の元気の源は3つあり「天神・博多そしてウォーターフロント」として、「回遊性を高めて福岡をグングン引っ張っていく」と述べた。そのうえで、ウォーターフロントが動いていない現状を受け、「福岡にとって港は重要でウォーターフロントのゾーニングを考えるチャンスがきた」「福岡の将来に大きく関わってくる」と指摘した。
福岡の歴史を再認識
ウォーターフロントを重視する理由を「福岡博多の歴史は、常に海に向かっていく歴史である」として、鴻臚館や潮見櫓を例に挙げ、「福岡というのは埋め立てを行い、海へ向かっていった」と歴史的経緯を解説。「常にもう一回原点に返るっていう場所は何かというと歴史である」と述べた言葉には、15年福岡市長を務めてきた高島氏が、福岡の歴史・伝統を踏まえた施策でなければ広く市民の共感と支持を得られない、という事実に気づいた点が大きい。
福岡市の都市としての活力の高さを示す要因として、市税収入の増加が挙げられる。高島市長は「前回のセミナーと違うのは、前回は個人市民税が1位だったが、固定資産税が個人市民税を上回って福岡市の財源になっている。これは安定財源が増えたということだ」と述べた。
天神ビッグバンや博多コネクティッドといった再開発事業により地価が上昇し、固定資産税も上がることで、市税収入が増え、「その果実を市内全域に行き渡らせることができる」(高島市長)と強調した。都市間競争のなか、福岡市の都市の成長を支える中心市街地の再開発について、刷新と古き良き街並みや福岡の歴史とをどのように調和させていくのか、新たなステージに入ったといえる。来年11月の市長選についての言及はなかったものの、多くの参加者が今後に期待を寄せた講演であった。
【近藤将勝】








