自民党に家賃の消費税非課税を認めさせた全管協(3)

 これまで当社では、全管協名誉会長・高橋誠一氏が、自民党ちんたい支部連合会会長、全国賃貸住宅経営者政治連盟会長として、与党自民党と近い関係にあることや、全管協の会員企業やその代表者が、自民党の党員勧誘活動に際して本来党員となる個人が支払うべき党費を負担している実態について、政治資金規正法上の寄付行為にあたる可能性があること、そして、全管協名誉会長として政府与党幹部と面会した際、自身が経営する企業が販売権を有するごみ処理プラントの営業活動を行ったことなどを報じてきた。

 6月15日発売の『週刊ポスト』(小学館)2026年6月26日・7月3日合併号が「茂木外相が総裁選ですがった『自民党員水増し団体』」とのタイトルで、2024年の自民党総裁選に際して、現在、高市政権の外務大臣を務める茂木敏充氏が、全管協名誉会長でその職域支部である自民党ちんたい支部連合会の会長を務める高橋誠一氏に、東京都内のある高級飲食店で、総裁選で全管協がもつ自民党員票の一部を自身に投票してくれるよう依頼していたことや、当社が報じてきた自民党員の組織的な獲得に関する問題を3ページにわたって報じている。

石破氏を全管協が応援した理由

 全管協が自民党員を増やすことに力を入れてきたのは、賃貸住宅の家賃非課税を維持することが目的の1つであることは、これまで述べてきた通りである。全管協の自民党内のカウンターパートであるちんたい議連は、石破茂氏が会長を務めているが、石破氏が自民党内で非主流派にいたことは全管協名誉会長・高橋誠一氏らもよくわかっていた。実利を重んじる業界団体が、そのような石破氏を推してきたのはなぜだろうか。

 石破氏は、2012年の自民党総裁選で安倍晋三氏と争い、同年12月の第二次安倍政権発足後、党幹事長に就任した。しかし、安倍政権のスキャンダルである森友・加計問題や桜を見る会問題で、石破氏は安倍氏を批判し続け、安倍氏との関係は良好といえなかった。安倍氏は周囲に「石破氏だけは首相にしてはいけない」と言っていたともいわれるが、安倍氏だけでなく自民党重鎮に共通の認識があった。

 石破氏は自民党が下野した1993年に離党し、その後復党したものの、当時、自民党幹事長を務めていた森喜朗元首相らから敬遠されていた。石破氏について「後ろから鉄砲を撃つ」との評価が出たのは、再び自民が下野する麻生太郎政権の際に、農林水産大臣を務めていた立場にもかかわらず、麻生氏に辞任を迫ったからだ。このことが麻生・石破両氏の確執となり、石破政権発足後に麻生氏が石破おろしを主導した因縁につながったとされる。

 元朝日新聞政治部デスクの鮫島浩氏が、自身のYouTube番組「鮫島タイムズ」で、たびたび「政治の世界は政策ではない」「あいつは嫌いでまとまる」と語っているが、安倍氏が存命のときは石破嫌いの重鎮により石破包囲網が構築され、ポスト安倍の有力候補とされながら、首相就任は菅義偉・岸田文雄両氏に追い抜かれた。石破氏にとっては苦節の時期であるが、持論である地方創生を掲げ、総裁選に挑戦し続けた。

 鳥取県選出の石破氏は、日本列島改造計画を掲げた田中角栄元首相の薫陶を受けたこともあり、地方の発展を重視した考え方が強い。これに対し、小泉純一郎氏や安倍氏は、規制緩和や東京を中心とした大都市の開発に比重を置いた。

 全管協に加盟する事業者は、全国規模の不動産仲介会社だけでなく地方の中小賃貸仲介会社が多数加盟している。大企業を重視する安倍氏よりも石破氏のほうが自分たちの要望を真摯に受け止めてくれると考えたのだろう。実際に全管協は2018年9月の総裁選で石破氏を全面的に支援した。当時、2万5,000人の党員を擁した全管協とその職域支部である自民党ちんたい支部連合会の存在は石破氏にとって心強かったであろう。

菅義偉氏のブレーン・和泉洋人氏とは

 一方で、党内で浮いた存在で、業界団体の要望実現に熱心ではない石破氏だけを頼っていても、全管協の要望は実現しない。そこで全管協は、当時、官邸内で絶大な力をもっていた菅義偉氏に接近している。

 18年は、全管協とも関係が深い全国賃貸住宅経営者協会連合会(ちんたい協会)が結成されて50年という記念すべき年であった。総裁選前の5月に東京・明治記念館で設立50周年記念式典と祝賀会が開催された。記念式典・祝賀会にはちんたい議連会長・石破氏をはじめ、多くの自民党議員が駆け付けたほか、安倍政権の首相補佐官・和泉洋人氏も出席して挨拶を述べている。和泉氏は、国土交通省住宅局長も務めた元国交官僚であり、菅氏の側近であった。

ちんたい協会50周年記念誌に掲載された和泉洋人首相補佐官(当時)の挨拶ちんたい協会50周年記念誌に掲載された和泉洋人首相補佐官(当時)の挨拶
ちんたい協会50周年記念誌に掲載された和泉洋人首相補佐官(当時)の挨拶

 前回紹介したが、ある全管協加盟企業の代表者は「菅さんが安倍政権の官房長官時代から、腹心の和泉洋人元首相補佐官を通じて全管協とは密接な関係を築いており、官僚を動かして要望を通してきた」との見方を述べている。

 現在、衆議院で自民単独で3分の2以上の議席を有する高市政権のスキャンダルが次々と出ているのは、かつて安倍政権時代に官邸が官僚組織の人事権を押さえ、警察を動かし、メディアに対しても水面下で圧力をかけるなどしていたのと比べ、高市政権下で官邸が機能していないことも一因だ。

 安倍政権時の官邸において力をもった官邸官僚が、和泉氏と、官房副長官を務めた杉田和博氏であった。杉田氏は警察庁警備局長を務めた公安警察のトップであった。和泉・杉田両氏は安倍・菅両政権で絶大な力をもったが、21年10月の岸田文雄政権発足にともない退任した。

国土交通省住宅局長時代の和泉洋人氏(2009年 日管協の会合で挨拶)
国土交通省住宅局長時代の和泉洋人氏
(2009年 日管協の会合で挨拶)

 杉田氏は退任後、表舞台に出ることは少なくなり、昨年12月に死去した。対照的に和泉氏は、東京大学住宅都市再生研究センター長に就任し、25年2月、古巣の国土交通省がつくば市・東京大学国際建築教育拠点総括寄付講座と共催した「建築・都市DX国際セミナー」で特別講演を行うなど活発に活動しているほか、菅氏のブレーンとして、現在も建設・不動産業界に隠然たる力をもっている。

 取材を進めていくなかで、ある全管協関係者から、「和泉さんは全管協の特別顧問となっている」との情報を得た。次回、ご紹介したい。

(つづく)

【近藤将勝】

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