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2016年06月16日 07:03

ギャンブル依存症とのつきあい方(後)

大さんのシニアリポート第45回

 その後も噂は、しきりと耳に届く。

 宮西さんは、完璧な「ギャンブル依存症」であると思う。こうして詳報しているのは、ギャンブル依存症の本人と、彼女を取り巻く周囲の人たちとの関係性を具体的に掘り起こすことで、問題解決の困難さを報告しようとしたからだ。

 少し古いが、次のような数字が報告されている。

 「公益財団法人『日本生産性本部』(東京)が15歳以上の男女を対象に調査した結果によると、60歳以上のパチンコ遊技人口(推計値)は過去10年間は200万人~300万人で推移していたが昨年は急増し、約430万人にのぼった。遊戯人口全体の25%を占めている」「弁護士や司法書士でつくる『依存症問題対策全国会議』(事務所・熊本市)には最近、高齢者の家族からの相談が相次いでいる。(中略)患者数の正確な統計はないが、専門家の間ではパチンコ依存症は全国で100万人以上にのぼると試算されている」(「朝日新聞」2010年11月8日)

 あれから6年後の今、その数字が減ることは考えられない。

 「ギャンブル依存症」は病気である、というのが主流な考え方だ。

 「ギャンブル依存症とは、個人の資質や性格ではなく、ドーパミンの機能不全が原因で発症する脳の病気のことです。『やめたい』という意識がありながらもやめられないという時点で、依存症の疑いが強くなります」(「ギャンブル依存症問題を考える会」代表・田中紀子氏談、「ビジネスジャーナル」5月3日号)。

 ドーパミンというのは、「快感や興奮を促すことから『脳内麻薬』といわれる物質で、ギャンブルの刺激によって過剰に分泌されると依存症を引き起こす可能性がある」(同)という。田中氏は、「日本ではまだ自分の意思で何とかなる問題と思われがちだ。(中略)精神論や道徳論で片付けられると相談しにくくなり、問題が長期化してしまう」(「朝日新聞」2015年5月28日)と述べ、「世界保健機関はギャンブル依存症を治療すべき病気と位置づけており」(同)、だから「(依存症から)立ち直る、更生する」という言い方を、行政機関の啓発文書に使わないように警告している。

yuyake 14年11月17日放送の「クローズアップ現代」(NHK総合)で、ギャンブル依存症で入院中の男性の話が生々しく紹介された。パチンコにはまり、会社の同僚からも借金を繰り返すようになる。その都度、借金の肩代わりをしてきたのが両親。それでも足りなくて、家財道具から父親のゴルフクラブ、パソコン、テレビまで質屋に入れる。借金は1,000万円を越した。家にいられなくなり、家出。食い詰めて帰宅。その後、専門病院に入院。退院後は同じ悩みを抱える「自助グループ」に参加して回復を図るものの、不安の毎日を送るという内容だ。

 依存症患者がつぎ込んだ金額の平均額が1,293万円。なかには、1億円をつぎ込んでもやめられない重症患者もいるという。父親が依存症の30代の息子を殺害するという事件も起きている。依存症の家族が何とかしようと抱え込んでしまうことが、「発見・治療」を遅らせることになると警告する。
 ギャンブル依存症は、完治しない病気であるという。だから、家族や友人をはじめとする暖かい“周囲の目”が不可欠とされている。

 宮西さんの場合は、問題山積である。まず本人にギャンブル依存症という自覚がない。ないから、ひたすら軍資金を求めてさまよう。基本的な軍資金の元は、年金と生活保護費だろう。支給日のある偶数月はまだいい。奇数月は借りまくる。周囲の人たちも、ギャンブル依存症が“病気”であることを知らない。この「負の連鎖」をどこで、どのように断ち切ればいいのだろうか――。

 関わらないという立ち位置も考えられる。一方で、宮西さんは「ぐるり」の常連だった。その「ぐるり」という居場所に宮西さんの仲間が集うことによって、宮西家を訪ねる人が激減、そして霧消した。寂しさから一度仲間と入ったパチンコにはまったという事実が、私の責任感を執拗に刺激する。

usirosugata 私が直接宮西さんに忠告しても、「余計なお世話」と言われるだけだろう。それに、ギャンブル依存症が“病気”である以上、どのように個人的に接すればいいのか。宮西さんの家族構成も身内も、当然、連絡先も知らない。個人情報云々がかまびすしいこの時期、個人的な“お節介”がどこまで許されるのかどうか。

 思い切って市社会福祉協議会の「CSW(コミュニティソーシャルワーカー)」に相談してみた。CSWは、個人のさまざまな問題に寄り添って解決を図る地域の相談員である。
 「第三者が立ち入りにくい難しい問題です。基本的には、家族が専門病院に入院するよう説得する必要がある。家族がいない場合、もし、金を貸している人が『返さないので問題にする』と、被害届を警察に出すか、社協などに相談に来て問題が事件(表面)化した場合には、関係機関と連携して宮西さんを説得・収容することが可能になる場合がある」という。

 宮西さんの報復を恐れたり、これ以上関わりたくないと思う“被害者”が、被害届を出すとは考えにくい。問題は放置されたまま、時間だけが過ぎていく。

(了)

 
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