2024年04月26日( 金 )

7月15日上場予定のLINE いささか脆弱な経営力(前)

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 今年最大級の大型上場として世間から注目を集めているLINE。7月15日に東京証券取引所に、さらに米国ニューヨーク証券取引所にも上場する”日米同時上場”を果たす。経済マスコミの間ではもてはやす声が多いが、実は子細に検討すると、かなり行き当たりばったりの経営なのだ。

office LINEは2013年7月、福岡市に大掛かりな開発拠点を設けると発表し、博多駅近くに約1,600平方メートルの用地を取得。約1,000人が働ける地上11階建てのビルを建設する予定だった。LINEの親会社は韓国のネット企業ネイバーであるため、韓国からも東京・渋谷のLINE本社からも行きやすい福岡が選ばれたとみられる。

 LINEの福岡進出に福岡の政財界はおおむね好意的な反応を示した。最先端企業のLINEが立地するとなれば、日韓のIT技術者が集まり、波及効果が見込める。LINEは福岡オフィスを「LINE Fukuoka」として現地法人化し、九州全域の優秀なIT技術者をリクルートするつもりだった。福岡市の「都市部機能更新誘導制度」の適用を受けて容積率がかさ上げされ、洗練されたデザインのビルが建つはずだった。

 ところが5月26日、LINEは東京五輪決定後の建設コストの高騰を理由に社屋建設を断念、取得した用地はJR九州に6月29日に50億5,000万円で売却することになった。土地売却益は24億万円を見込んでいるから特別損失が発生するわけではない。LINEは決して福岡進出をあきらめたわけではなく、福岡現地法人の「LINE Fukuoka」は、JR九州などが建てた「JRJP博多ビル」にすでに入居し、開発スタッフとカスタマーセンター要員700人でサービスを開始している。

 とはいえ福岡に現地オフィスを自前で建てると触れ込んでいただけに、計画の白紙撤回にはみっともなさがつきまとう。東京五輪決定後の建設費高騰を事前に読み込めなかったのは仕方がないとはいえ、振り回された福岡市をはじめ、朝令暮改ぶりには驚きが伴う。

 今年、毎日新聞がスクープしたことで明るみに出たのはLINEのゲーム「LINE POP」などで使われるアイテムが、資金決済法上で規制されるゲーム上の「通貨」にあたるとされた問題だった。関東財務局がLINEに対して立ち入り検査を実施して詳細が判明。未使用「通貨」の半額を供託していなければならないのに、そうしていなかったことが分かったのである。

(つづく)
【経済ジャーナリスト・車 光】

 
(後)

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