2024年04月20日( 土 )

哀れ、「苦労人」佐川氏の末路~父親を亡くした後は、兄が学費を捻出

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 いまや、「佐川事件」の汚名を着せられて、安倍政権延命のために人身御供になる寸前の佐川宣寿前国税庁長官。国会の外でも、かつての部下から「パワハラ上司」と告発され、取材から逃れるためにホテルを点々とする日々。さんざんな状態で官僚人生を終えたわけだが、意外にも苦労人としての顔も持つという。

 福島県生まれの佐川氏は中学生の時に父親を亡くし、それ以降は3人の兄が学費を捻出するなどして佐川氏を支えたという。上京して都立九段高校を卒業するも東大に入るまで2浪しており、佐川氏はもちろん兄たちの苦労がしのばれる。東大経済学部を卒業後は、大蔵省(現:財務省)に入省する。そのころの初々しい笑顔をとらえた写真が残っている。

 写真週刊誌の元祖として一世を風靡した『FOCUS』(2001年に休刊)の81年12月11日号には、佐川氏とともに大蔵省に入省が決まった若者たちの写真が、コメント付で掲載されている。佐川氏は高校時代に芥川龍之介や柴田翔などを読み、大学では「高橋和巳を読んだ」と自己紹介。このときは、「部下を死に追いやった極悪人」として矢面に立たされることになるとは、夢にも思っていなかっただろう。父親代わりになって弟の立身出世を願ったであろう、佐川氏の兄たちは何を思うのか。

 もっとも佐川氏は、出世の階段を上るために多少の汚れた水なら飲み干すくらいの覚悟は持っていたのかもしれない。大蔵省では傍流の経済学部、しかも2浪したために同期とはスタート時点で差がついていた。経団連会長を叔父にもつ今井尚哉総理大臣秘書官のような毛並みの良さも持ち合わせず、人知れぬコンプレックスを抱いてはいなかったか。苦労して育ててくれた兄たちのためにも出世しなければ――佐川氏の傲慢な態度の裏にそんな焦りがあったとすれば、どこか悲しい。佐川氏が守ろうとしているのは、自身の東大生時代には鼻にもかけなかったであろう成蹊大学の出身で、苦労しらずのボンボン・安倍晋三首相だ。努力でのし上がった勉強秀才の末路がエスタブリッシュメント(支配階級)へのご奉仕とは、世も末だ。

 佐川氏にはひとこと、「どんなことがあっても生き延びて、官僚としての初志を貫徹せよ」と言っておきたい。

 ちなみに『FOCUS』の同じ特集には、奇しくも、近畿財務局が国有地売却交渉を進めていた時の理財局長、迫田英典元国税庁長官の若かりしころの姿も掲載されている。37年後のスクープとは、写真週刊誌おそるべし。

片山さつき議員(左)も大蔵省の同期だ/『日刊ゲンダイ』2017年3月30日号より

 

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