ワールドカップとサッカーボール(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
サッカーボールの重さは410g~450g、ボールの外周は68cm~70cmだとされている。それでは、サッカーボールの表面を覆う皮パネルの変遷を見てみよう。
現在、サッカーボール産業はアディダスとナイキの2社により牛耳られている。ワールドカップに使われるボールでは、その大会ごとの特色を生かし、デザインなどを変えることが認められている。また、それぞれのボールには名前もつけられている。
サッカーボールといえば、1960年代までは12枚ないし、18枚の細長い皮パネルで構成されたボール(ゲーリックフットボールのボールと同一)が一般的に使われていた。1970年のメキシコ大会から表面を覆う皮パネルが黒い五角形の皮12枚、白い六角形の皮20枚という「黒と白のボール」が登場する。
1970年のメキシコ大会からアディダスがワールドカップのスポンサーになり、品質の違うボールを使うことによって起こるトラブルを避けるため、32枚で構成された「テルスター」という試合球を使うことになる。これが最初の公式試合球である。この時期はカラーテレビが普及した時代であり、ボールの見やすさが評判となり、「サッカーボールといえば、このボール」と連想されるほどまでになる。
その後、サッカーボールのデザインが変わっても、五角形と六角形の皮パネルで構成されるサッカーボールの構造は続いた。ところが、2006年のドイツ大会の公式試合球である「チームガイスト」は、今までのボールとはまったく違う構造になった。14枚の表面を覆う皮パネルを採用し、真球に近くなったのだ。この時から皮パネルを縫う方式から機械熱を利用して皮パネルを圧着する方式が採用された。
2010年の南アフリカ大会の公式試合球である「ジャブラニ」は8枚の皮パネルで構成され、さらに真球に近い形状になり、2014年のブラジル大会の公式試合球、「ブラズカ」の皮パネルは6枚になった。また、空気抵抗を減らす表面処理と、糸による不規則なバウンドをなくす品質改善もあった。
このようにサッカーボールは進化を続けている。皮パネルの枚数は減り、皮パネルの材料も天然皮革から人工皮革に代わる。天然皮革のボールは水を吸うと重くなっていたが、人工皮革は水を吸わないので、天候によって試合が左右されることが少なくなった。皮パネルを繋ぐ方法も、糸を使わない圧着方式になっている。
また皮パネルを糸で縫っていた時代はサッカーボールの製造に熟練工が必要だったが、圧着方式になり、中国で機械による大量生産がされるようになった。サッカーボールのメッカはパキスタンのシアルコートという地域だったが、安い中国製サッカーボールの台頭により、閉鎖する工場が増えている。
サッカーボールの製造、流通過程を調べてみると、ボールを生産する側のマージンは薄く、ほとんどの利益が多国籍企業であるアディダスやナイキに流れる構造だということもわかった。
(了)
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