• このエントリーをはてなブックマークに追加
2018年08月11日 07:01

シシリー島便り・日本人ガイド、神島えり奈氏の現地レポート~資格取得に挑む(中)

 いよいよ試験日、パレルモ市にあるシシリー州観光振興会議所のなかに設置された試験会場は、試験初日ということもあり、人が部屋の外に溢れ出すほど多く、圧倒された。受験者は私を含め、25人だが、それ以外の見物人の数が圧倒的に多い。応援に駆け付けた受験者の家族や友人、また、後日、試験を控えた受験者たちが試験の様子を見にきていたのだ。

 試験内容はシシリー州全般の各分野にわたる。歴史、文化、美術、考古学、地学、祭り、法律についても細かく問われる。会場前方に長い机が1つあった。10人近い各分野の専門家や大学教授たちが座っている。対面してイスが真ん中に1つ置いてある。日本の面接会場のような雰囲気だ。受験者が座る椅子の後ろに、そのほかの受験者が座り、前の人が終わるのを待つが、日本とまったく違う点がある。試験会場内に大勢の見物人がおり、なかには受験者と関係のない人の姿があることだ。つまり大勢の人の前、公の場で試験が行われるのだ。

 静まり返る室内、全員に緊張感が走る。私は3番目だった。あらかじめ、自分でシシリーを訪れる旅行客のための旅行プランを準備してくるのも試験課題だった。その内容についても質問される。あるいは、内容とは関係のない別分野についても問われた。

 試験結果は、その日の受験者全員が試験を終えた後で、即刻発表された。事前にそういったことを知らされておらず、試験の流れもその場次第という感じだ。実にイタリアらしい。

 すぐに合格発表があることを知らなかったため、試験がとりあえず終了したという解放感に浸っていると、試験監督責任者が合格者名を早口で呼び、嬉しさのあまり泣く合格者や、抱き合う家族が続出した。私の名前も聞こえた。私は飛び上がりたいほどの喜びで胸がいっぱいになり、大きな達成感に包まれたことを覚えている。

 ほかにもいくつか試験経験がある。自動車免許もイタリアで取得した。日本では大学時代にオートマ車限定免許を取得していたが、東京に住んでいたこともあり、まったく運転する機会がなかった。

 当時のイタリアは9割以上がマニュアル車であり、公共交通機関が発達していないこの島で、子どもがいる場合、車の運転は必須だった。というわけで、妊娠中、会社に行きながら教習所に通った。

 イタリアの場合、日本のようにまず教習所内で練習してからということはなく、すぐに実際の道路へ出て教習する。マニュアル車による坂道発進は難しかった。同時に交通規則についても指導を受ける。

 年配の教官は優しく、まったく怒ることなく、「アダジョ、アダジョ(ゆっくりね)」が口癖だった。妊娠6カ月目で、あまりおなかは大きくなっていなかったが、出産前に何とか免許を取得したいと、足しげく教習所に通った。

 筆記試験に合格すると実地試験となる。私のような外国人は考慮してもらえたのか、筆記ではなく口頭試験だった。試験官は無表情な男性だった。すべての問題に正解していた私が憎かったのか、最後の質問で、「車の長さは何mか」という意図の分からない質問をしてきた。私の後ろで試験の一部始終を見ていた教習所の人が、「単なる嫌がらせをしたかっただけだろう」と、あとで私に教えてくれた。

 妊娠8カ月目で実地試験に無事合格でき、免許証を取得した。日本でペーパードライバーだった私が、イタリアで、しかもシシリーで車の運転をするのはかなりの度胸がいると思うかもしれないが、私は「パレルモの人が皆運転できるのだから、私にも絶対できるはずだ」と確信していた。

 シシリーの街中でゆったり運転することは、まずありえない。四方八方、車や人、自転車やバイクに気を付けなければならない。信号は少なく、交通事故は多い。シシリー島の街中での運転は大変だが、一歩町の外へ出ると、田舎の公道は、走りやすく、駐車場も見つけやすい。しかし、街中では駐車場探しが難しい。日本のような立体駐車場はなく、地下駐車場があるが数が少ない。一方、路上で駐車できる場所が多いので縦列駐車がものすごく上手になる。ただ、シシリーでも高齢者ドライバーが増えてきているので、その点には注意が必要だ。

(つづく)

<プロフィール>
神島 えり奈(かみしま・えりな)
2000年上智大学外国語学部ポルトガル語学科を卒業後、東京の旅行会社に就職。約2年半勤めたのち同社を退職、単身イタリアへ。2003年7月、シシリー島パレルモの旅行会社に就職、現在に至る。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2018年12月10日 17:59

明治「明治エッセルスーパーカップ」など計23商品の値上げを発表

   明治(本社:東京都中央区、松田克也社長)は10日、来年3月1日から市販用アイスクリームの価格改定を実施すると発表した。  対象商品は「明治エッセルスー...

2018年12月10日 17:53

中九州横断道路 朝地IC〜竹田IC、来年1月19日に開通

    国土交通省九州地方整備局は4日、中九州横断道路の一部として建設中の「大野竹田道路」のうち、朝地IC〜竹田ICを結ぶおよそ6.0kmの区間が、2019年1月19...

2018年12月10日 16:23

豊洲市場の「闇」に光差す!東京高裁「抗告許可」決定(前)~技術専門家が解説

   豊洲市場水産仲卸売場棟の構造計算偽装(設計:日建設計)をめぐる裁判において、仮の使用禁止申立に関して、5日、東京高裁は「抗告許可」を決定した。東京地裁、東...

2018年12月10日 15:26

福大・医学部で、浪人生が不利になる不適切な評価を実施~データ・マックスの取材に虚偽回答か?

   福岡大学(福岡市城南区)は8日、同大医学部の入試で浪人生の配点が現役生より低く設定されていたことを発表。同日行われた記者会見で、「不適切だった」と陳謝した。 ...

2018年12月10日 15:08

西鉄、年末年始に太宰府天満宮までの臨時列車、臨時バスを運行

   西日本鉄道(以降、西鉄)は7日、太宰府天満宮参拝客の利便性向上のために臨時列車「大晦日(終夜)臨時列車」「臨時急行『初詣号』」と臨時バスを運行すると発表した。 ...

2018年12月10日 13:50

福岡県知事選の進退、小川知事「早い時期に決めたい」

  議会中継より  小川洋福岡県知事は10日、福岡県議会で来年4月に行われる福岡県知事選の進退について公明党県議団の代表質問(田中正勝県議)で...

2018年12月10日 13:39

『脊振の自然に魅せられて』「ヤブコウジ」藪柑子 ヤブコウジ科

   山道を歩いていると背丈は10cmから15cmぐらいで、ひっそりと赤い実をつけた植物を目にします。晩秋から冬にかけて、たくましく花や実をつける「ヤブコウジ」です。...

2018年12月10日 13:22

くるり九州ひたすら歩く旅~九州一周、完歩を目指す(21)

   国道3号線と10号線をひたすら歩く“九州一周完歩”の旅。歩行距離は実に833kmにおよぶ。週末を利用しつつ、実際に現地に赴き九州の...

2018年12月10日 11:51

仮想通貨関連の(株)フィスコ 業績予想を修正

   ビットコインを中心とした仮想通貨などの金融情報提供、仮想通貨取引所運営などの(株)フィスコ(東証JASDAQグロース、本社:東京都港区、狩野仁志社長)は12月7...

2018年12月10日 11:30

芝浦グループが忘年会開催~かくし芸大賞はホールディングスが受賞

  新規事業を発表する新地哲己会長兼CEO  太陽光発電事業で知られる芝浦グループは、12月7日、「ホテルニューガイアオームタガーデン」で忘年...

pagetop