2024年05月02日( 木 )

日本国民として弾劾する日本相撲協会の違法行為(3)

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青沼隆郎の法律講座 第18回

(4)管理監督権行使の建前と現実―告発状の意義
 所轄庁の管理監督が、事業年度を基準として事前報告(事業計画書と収支予算書の提出義務)と事後報告(事業報告書と決算書の提出義務)による、書面審査によるものであることは前述のとおりであるが、問題は、この書面審査のための提出書類等が虚偽であったり、そもそも不都合な資料書類の不提出という違法行為を当該公法人が行った場合(これが本来的な違法行為であり、違法と判る資料書類を公法人が正式に提出するということは事実上ありえない。あるとするなら、それは建前であり、よく弁解に使用される、行政法令が性善説の立場で制定されている、という常套句である。)
管理監督権の行使は事実上、不可能となる。これを打破する国民の最後の声が所轄庁等に提出する告発状に他ならない。
 なお、告発状の法体系上の位置づけ・法論理上の意義については国務請求権として別講で詳論する。

(5)公法人の違法行為の認定手続
 公法人の業務執行について、その適法性の判断は、定款・法令に準拠する。そうであれば、定款の規定や関連法令の規定が、精密かつ論理的に記述されていることが大前提となる。そこで、本来なら、本稿も直接定款の規定や公益財団法人の基本法である一般社団財団法と公益認定法の具体的記述を引用することが、主張や論理の正当性を証明する必須条件であるが、残念ながら、結論を先に言えば、これらの基本法規はザル法であり、理解困難な不備矛盾立法である。それは素人である読者が、念のため一般社団財団法の実物に目をとおせば直ちに理解できる。しかも、団体法の基本構造を知らなければ、社団と財団の区別、私法人と公法人の区別の本質的意味が理解されていないから、使用されている法律用語・術語の大部分が理解不能となり、日本語の文であってもそれは外国語の文に等しく、理解は困難である。国民は、日常触れる団体の典型である株式会社についても、それを団体法という側面から理解する教育も受けていないから、法的理解、つまり、会社法の規定にそった理解など不可能である。そこにほとんど多数の国民が人生の大半の時間を費やすというのに。結局、国民は生活するのが精一杯で、自分が私法人(株式会社)に所属しようが、公法人に所属しようが、考えるゆとりなど全くない状況に置かされている。

 かかる状況の中で惹起した貴乃花親方辞職事件は、国民にとって、唯一、日本の団体法、特に公法人の状況を理解できる格好の機会となった。なにせ、主役の貴乃花親方は不世出の名横綱であり、その人が、普通の力士の集団から無理矢理追い出された状況にあることが、最低でも国民にはわかる。巨大な悪が存在することは、もはや誰の目にも明らかだからである。

 念のため、一般社団財団法がいかにデタラメな立法であるかを要点だけ述べておきたい。立法技術として条文引用・準用条項が多い。この手法は実は条文作成者にも条文読者側にも百害あって一利も無い封建時代の遺物といえる。読者にとって、いちいち引用条文に戻る必要があるため、極めて使い勝手が悪い。そのうえ、さらに最悪の立法技術が駆使されている。それが、「読み替え規定」である。その結果、一般社団財団法の財団法に関する条項はもはや常人には理解不能である。それでも正確な理解のため、複雑な準用・読み替え規定を正確に復元すると、明らかな立法過誤、矛盾規定に逢着する。ここで初めて、作成した官僚自身がその矛盾・過誤に気が付かない程不必要に難解化されたことが判明する。これは現代の今においても封建為政の政治原理「よらしむべし、しらしむべからず」が生き続けていることを示している。

(つづく)

<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)

福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。

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