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2019年03月03日 07:01

衰退進む日本型GMS(総合スーパー) 歯止めがかからない現実(後)

大規模は既存型店舗にもはや当てはまらない

 日本型GMSを見てみよう。かつて抜本的転換ができなくて業態崩壊が起こり、その多くが姿を消した我が国のGMSだが、その過程で盛んに行われたのがM&Aだ。しかし、それを主導して生き残ったGMS企業が思惑通りの結果を手にしたかどうかは大いに疑問が残るところだ。

 M&Aの理想は強者同士の連合だ。しかし、実際に行われたのは破綻したか、破綻に瀕した弱者救済型だ。いかに強者といえども基本的に営業パターンは同じであるからそこに劇的な改善は期待できない。むしろ、顧客から見放され陳腐化した合併先の既存店舗の改善や閉鎖に手を焼いたといった方がいい。結果として生き残ったイオンやセブン&アイHDにおいても四半世紀が過ぎた今もその体質改善は遅々として進まない。

 企業統合のメリットは広い意味での「量的拡大」だ。とくに卸企業を絞って取引量を大きくすれば、仕入れ価格の引き下げが期待できる。しかし、この取り引き先の絞り込みにはある落とし穴がある。一時的には有利な原価交渉の結果、仕入れ価格が下がるかもしれないが、そのうちに競争相手が手を引いたことで残った取り引き先が巧妙に原価引き上げを仕掛けてくる。競争がなくなることはメリットばかりではないのだ。

 一時はその総合力と食品を併せ持つ利便性で坪あたりの売上が400万円と現在の2倍以上の販売効率で小売業界に極めて大きな存在になるまでに成長したGMSだが、今やその売上はピーク時の半分にも満たない。しかも売上の60%前後を食品で構成してこその坪あたり売上である。これは構造的に利益を出すのが容易でないことを示している。とくに売り場面積が広く、在庫に比較してウィークデーの客数が少ない大型SC内の食品売り場は極めて厳しい。

 これらを考えると、SM同士の提携よりさらに効果が薄いGMS同士の協業だ。しかし、イオンと(株)フジ、(株)ドン・キホーテとユニー(株)の提携など協業の流れは止まらない。これは単に規模の拡大だけを目的としたものではなく、提携により競合していた店舗の集約化の狙いもあるのだろう。それでなければあまりにも芸がなさすぎる。

 アマゾンや楽天などのeコマースの参入を抜きにしても、リアル店舗は過剰だ。今後ますますそのシェアを拡大するであろうeコマースやドラッグストアの拡大を考えれば坪効率の改善はとても期待できない。結論としてGMS同士の提携はあまり意味をもたないのではないか。

「次の手が不透明」を理由に進む「やみくも連合」

 戦略的統合の終着地はおそらく圧倒的な寡占だ。先進する米国の場合、ダラーストアもドラッグストアも上位2社のそれぞれの売上は、それ以下に比べて圧倒的に大きい。調剤事業の構成比が売上の60%を超すとはいえ、上位2社はそれぞれ10兆円超だ。我が国最大のマツモトキヨシなどの20倍。ダラーストアも同じで上位2社はそれぞれ2兆円を超している。これも我が国最大のダラーストア、ダイソーの5倍だ。上位4社の売上を合わせてもダラージェネラル、ダラーツリーそれぞれ1社の半分でしかない。市場規模の違いがあるとしてもこの差は大きい。寡占を狙うダイナミズムの明らかな違いがここにあるのかもしれない。

乗り替えできるか?

 【表2】は我が国を代表するイオンの昨年の数値である(19年2月期)。売上の70%がリテールだが、その利益の構成は20%に満たない。GMSに至っては、売上の3分の1を占めながら利益はわずか5%である。実はこれが我が国のGMSの実態である。昨年倒産した米国のシアーズ同様、GMSにはすでに物販競争力はないということを物語る。

 次にイオンのPB・トップバリュを見てみよう【図】。その年間売上は過去5年間、7,000億円台と停滞したままだ。しかし、イオンはその拡販を重点目標の1つに据えている。長い間高止まりしている販売管理費を補うには、高い粗利益率の確保が必要だからだ。しかし、現状のやり方でトップバリュでの目標達成は容易ではなく、それを実現するにはさらなる規模拡大で本部主導による出荷額を増やすしかない。他企業との新たな提携や傘下の小売業の統合にもそんな思いが見え隠れする。

 この5年間のトップバリュの停滞の原因が、販売戦略の欠陥なのか顧客の支持の低下によるものかはわからないが、顧客の求めるものがどこにあるかを見極めない限り、苦心の戦術も徒労に終わることになるのではないだろうか。

※クリックで拡大

(了)
【神戸 彲】

<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)

1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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