建築との出会いからこれまで 建築家から見た福岡のまちづくり(2)
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2017年02月24日 14:42

建築との出会いからこれまで 建築家から見た福岡のまちづくり(2)

SAKO建築設計工社 代表 迫 慶一郎 氏

 中国を中心に、世界各国で独創的な建築を生み出す建築家として注目されるSAKO建築設計工社代表の迫慶一郎氏。迫氏が建築家を目指したきっかけから、中国に進出して数々の建築を世に発信してきた経験談、さらに福岡の『まちづくり』に対する現状や、今後の発展の可能性について聞いた。

中国進出のきっかけ なぜ中国だったのか

金華キューブチューブ

 迫 そして、3番目のプロジェクトが、北京のプロジェクトでした。山本さんが北京大学に講演で招かれ、それを聞きに来ていた北京のデベロッパーの社長に「コンペをやりたいと思う、それに参加してくれないか」と誘われたんですね。「建外SOHO」という70万㎡のプロジェクトで、これに参加しないかと。山本さんも驚きの大プロジェクトで、すぐに北京から横浜の事務所に電話がかかってきて「迫、すぐ北京に来い」と言われました(笑)。

 当時、まだ海外の経験はなかったのですが、海外のプロジェクトもぜひやってみたいと思っていました。そこに、このコンペの話が舞い込んできました。山本事務所として初の海外プロジェクトでしたから、絶対に成功させようと。しかも、そんな大きな規模を一建築家事務所でやっているところなんて、当時まったくない状況でしたから、なおさらですね。

 ――経済性から見ると、地元(中国)の設計事務所に依頼してコストを安く求めることもできたと思うのですが、あえて日本の建築家にやってもらいたいというのは、どういうことでしょうか。

 迫 社会の状況ですね。右肩上がりのときって、良いデザインのものと普通のものとでは、価格に差がつけられるんですよね。経済が停滞すると、良いものをつくっても付加価値はあまりありませんが、経済成長期には良いものをつくるための追加の初期投資が最終的に何倍にもなって返ってきます。この仕組みがわかっていても、実力がなかったり、ビジョンがないデベロッパーはそれができません。

 その社長は、とにかく世界でもっとも良い建築家としか仕事をしないというポリシーを持っていて、ザハ・ハディッドの建築を北京で2つ、上海で1つ、計3つ発注してつくりました。ザハの建築ってすごくわかりやすい未来的なアイコンでもあるし、建築的にも革新的である。それをあえて選ぶんですね。当然、建築費もすごくかかりますし、ザハに対する設計費ももちろんかかるんですけど、それを遥かに超える価値をつくり出して、ちゃんとマーケットとして成立させる、良い循環をつくったんです。

独立、そしてコロンビア大学へ留学 中国初の日本人建築家事務所

 ――そして、北京でのプロジェクトを終えて独立、という流れになったのですか。

 迫 北京のプロジェクトは工期がいくつにも分かれていて、反復複製的な全体計画でした。だから半分ぐらいできた2004年に退社して、私は次のステップとしてニューヨークに行こうと思いました。

 このまま中国に身を埋めてしまうのは、どうかと思っていたんですね。そして以前から、欧米に対するつながりを持ちたいと思っていました。それで、山本さんに「ニューヨークに行きたい」と相談をしたら、「もう十分力はついているんだから、他の建築家のために働くのではなく、研究機関とかで自分の力を試した方が良いんじゃないか」と言ってくれました。

 そうして、いろいろな方々のサポートもあって、コロンビア大学の客員研究員というポジションを得ることができました。実は、ニューヨークに行く半年くらい前に、中国の建築評論家から突然携帯に電話がかかってきて、「辞めるって聞いたよ、どうするの?」って言われて、「秋からニューヨークに行く予定が決まっています」と答えたら、「まだ半年あるじゃない。半年、このプロジェクトをやってから行けば良いじゃないか」と言われまして、それで紹介されたのが、1万㎡にわたる中国の公共建築の仕事でした。

 振り返れば、まさに運命の電話でした。あの1本の電話がなかったら、まったく違う展開で、それっきり中国と関わらなかったかもしれませんね。そのとき紹介してもらったのが、金華ハムで有名な金華市です。私がデザインした案を、役所のホールでお偉いさんたちを前にプレゼンしました。奇抜なデザインだったので、賛否両論あったのですが、最後に市長が、「我々(金華市)は、経済規模はそれほどでもないが、これから良い建築をたくさんつくっていくことで、中国に名を轟かせたい。私はこの案を支持する」と演説したのですが、痺れました。それが「金華キューブチューブ」というプロジェクトです。最初のデザインのまま実現しました。

(つづく)

<COMPANY INFORMATION>
SAKO建築設計工社
代 表:迫 慶一郎
設 立:2004年2月
資本金:10万米ドル
URL:http://www.sako.co.jp/

<プロフィール>
迫 慶一郎(さこ・けいいちろう)
1970生まれ、福岡市出身。筑紫丘高校を卒業後、東京工業大学に進み、96年東京工業大学大学院修了。山本理顕設計工場で8年間の勤務を経て、2004年SAKO建築設計工社を設立。04年~05年には、米国コロンビア大学客員研究員・文化庁派遣芸術家在外研修員を務め、北京を拠点に現在までに100を超えるプロジェクトを、中国、日本、韓国、モンゴル、スペインで手がける。

 
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