2024年10月09日( 水 )

福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(17)

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世界に羽ばたくスタートアップを生み出す

 コワーキングスペースのfabbit(ファビット)事業は、仕事をする場所としてシェアオフィスを提供することにとどまらない。スタートアップ企業同士やスタートアップ企業と一緒に仕事をしたい大企業、ベンチャーキャピタルなどをマッチングして人と人のつながりをつくることで、今までになかった商品やサービスを生み出して新しい市場をつくり、日本の国の力を取りもどしたいと考えている。Google(グーグル)やAmazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Apple(アップル)など、世界で広く使われているITサービスやテクノロジーの多くは、欧米が力をにぎっている。ITなどの新しいサービスをつくる分野は世界に羽ばたく日本企業が少なく、海外でつくられたサービスを使うだけの日本が、国としての立場が弱くなっていることに危機感をもったからだ。

日本からイノベーションを生み出すには

大村 浩次 氏

 日本から新しいビジネスを生み出すためには何が必要なのか。大村社長は、日本から世界に通用する新しいビジネスを生み出すためには、「エコシステム」がカギになると考えている。エコシステムとは、スタートアップ企業のまわりの人や企業が得意な技術やノウハウなどをもち寄って協業し、事業を大きくしていくことだ。イノベーションを起こすには、スタートアップ企業だけでなく、スタートアップ企業をとりまく環境が大切だという。

 fabbitは、スタートアップ企業同士の提携、大手企業とのオープンイノベーション、ベンチャーキャピタルによる資金調達、メンターシステム、行政との関係づくりなどをサポートすることで、スタートアップ企業が一人前の企業に育つことや、グローバルな市場でビジネスすること、事業の上場や売却をすることをサポートしている。これまでの時代は、スタートアップ企業をサポートするエコシステムがなかったため、スタートアップ企業がイノベーションをおこすことは難しいことだったという。しかし時代とともにエコシステムができて、スタートアップ企業がビジネスしやすい環境が整ってきたと感じている。

 また、人と情報とお金が集まるところではビジネスが活発になるという実感から、コワーキングスペースのfabbitは、日本を代表して世界でビジネスを広げるスタートアップ企業を数多く生み出すことを目的にして、新しいビジネスの場所をつくり出している。

人と人が話すことで新しいビジネスが生まれる

 人と人のつながりから新たなビジネスの展開が生まれることから多くのセミナーや交流会などのイベントを開催し、積極的にスタートアップ企業の出会いの場をつくり出している。人と人が出会うことで情報の流れが活発になり、人は人と話すことで今までにもっていなかった新しい視点にふれることができて視野が広がる。また、同じ方向を目指すスタートアップ企業同士が出会うことで、お互いの得意なスキルや技術を生かしてビジネスをともにできるなどの大きな可能性が広がる。

 ビジネスマッチングを目的にした「fabbit Conference全国大会」ではWikipedia(ウィキペディア)の創業者のジミー・ウェールズやTwitter(ツイッター)共同創業者のビズ・ストーンなど、また毎月の「fabbit Conference」では上場した企業の社長を招き、参加者が会って話を聞けるイベントにしている。人と人が同じ空間で会うことで、新しく生まれるものがあると感じているためだ。スタートアップ企業にとって、将来の目指すすがたに近づくための情報を得るとともに、夢を実現した人の姿勢やアイデアから学ぶところは大きい。

 APAMANグループは、コワーキングスペース・fabbitを立ち上げるまえに、多くのスタートアップ企業が利用するマンションタイプのオフィスのSOHOやパーテーションで仕切られたシェアオフィスを運営していた。しかし、SOHOや仕切られたシェアオフィスでは、スタートアップ企業にとって他社との交流が生まれないことに気づいたという。スタートアップ企業が今までにないアイデアを生み出すためには、ほかの業界や職種などのまったくちがう見方をもつ人と話をすることが大切と実感して、人と交流できるコワーキングスペース・fabbitをつくりたいと考えた。多くのもののIT化が進み、人と人のつながりもインターネットの画面に飲みこまれそうになっている世の中で、人と人が会って話をしてビジネスをつくり出すことを大切にして、事業として実現している姿勢がすばらしいと感じる。

オープンイノベーションをサポート

 fabbitのイベントでは、スタートアップ企業と提携したい大手企業とのマッチングをしている。企業は組織が大きくなるほど、組織としての力は強くなる一方でリスクのある新しい事業に挑戦しにくくなる。今までの事業の成果に目が向いて保守的になり、今の事業をこえる新事業に取りくむことのハードルが高くなるためだ。また、成功するかわからない事業を始めることに、賛成を得にくい時代の空気もある。しかし、現状を打開して新しい事業を始めることで、企業を大きく成長させたいという思いはある。

 この課題を解決するのが、近年積極的に行われている大手企業とスタートアップ企業の協業だ。スタートアップ企業の身軽さや柔軟さから生まれた新しい商品やサービスのアイデアを、大手企業の販売力や開発力、資金力などからかたちにして世の中に送り出す。fabbitでは、「アジア各国でのトレンド」などの多くのイベントを開いて、テーマに関心のあるスタートアップ企業と大手企業をマッチングすることで、協業できるパートナーを見つけて新しいビジネスをつくり出せるようにサポートをしている。

(つづく)
【取材・文・構成:石井 ゆかり】

 

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