福岡を活性化させた傑物伝 アパマングループ代表大村浩次氏(18)
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新しいビジネスの場所をつくるfabbit
APAMANグループのコワーキングスペース・fabbit(ファビット)は、国内23拠点、海外19拠点に広がり、会員数は3,000を超える。スタートアップ企業や個人むけのオフィスの提供にとどまらず、まわりからスタートアップ企業や個人のビジネスをサポートする仕組みをつくりあげている。
これから起業したい人をサポート
fabbitではスタートアップ企業を支援するだけでなく、これから起業することを考えている人をサポートしたいと考えている。たとえば、fabbitのセミナーや交流会などのイベントは、これから起業を考えている人も参加することができる。起業を考えながら今の仕事をしている人も、起業している人とイベントで会って話をすることで、情報を交換するだけでなく、新しく事業を始める一歩を踏み出すきっかけになる。起業するまえの人にとって、起業した後はわからない世界だ。多くの人にとってわからないことは慎重になりがちだが、起業している人とふれあうことで起業が身近なものになり、起業に対するハードルが下がるのではないかと感じる。日本の起業率は約5%と低く、平成24年度の起業家精神に関する意識調査(GEM)によると、「身近に起業した人を知っている人」は全体の約14%と、若い世代の周りには起業した人が少ないことが多い。起業を考えている人が起業している人と出会うことで、起業という生き方にふれることができて、前向きな視点をもてるようになるのではないだろうか。
起業をして間もない若い世代にとって事業をすることは、初めてのことばかりでわからないことも多い。fabbitでは、事業やビジネスの経験のある人が起業家のビジネスの段階に合わせてアドバイスする「メンター」「コミュニティアクセラレーター」「インキュベーションマネージャー」のシステムを整えている。そして、fabbitではセミナーなどのイベントを開き、起業家が講演者や講師としてビジネスを紹介することでチャンスを広げる数多くの機会をつくっている。また、ワンコインセミナーなどの多くの人が参加しやすいイベントをつくり、起業家がビジネスを立ち上げやすいようにサポートをしている。
働き方改革で副業や兼業がすすむ
働き方改革で進むと予想されている副業や兼業。副業や兼業をするときにニーズが増えると予想されるのが、コワーキングスペースだ。事業を始めることはハードルが高いと思われがちだが、たとえば事務所を借りるなどの大きな初期投資がかかることもネックになっている。fabbitはコワーキングスペースのため、大きな都市の便利な一等地に個人がオフィスを借りることができる。コワーキングスペースを使いfabbitと提携するCAMPFIRE(キャンプファイヤー)のクラウドファウンディングなどを使うことで、良いビジネスのアイデアが資金面の課題から埋もれてしまうことなく、商品やサービスとして世の中に広がるサポートをしたいと考えている。
fabbitは、これからの人の働き方も変えようとしている。仕事をするうえで避けて通れないことは、毎日の通勤だ。インターネットを通してパソコンやスマートフォンで仕事のやりとりができるようになり、離れた場所にいても仕事をしやすくなった。また、政府は働き方改革で場所や時間にとらわれない働き方に前向きに取りくんでおり、仕事をする場所を自分で決める時代になると考えられる。全国にfabbitの拠点を広げることで、遠くまで電車や車で通勤することなく、住んでいる街で仕事ができる社会をつくりたいと考えているという。
外国人ユーザーのニーズ
大手町などのfabbit Global Gateway(ファビット グローバル ゲートウェイ)と呼ばれる拠点は、スタートアップ企業が海外にビジネスを広げる場所になり、海外のスタートアップ企業や日本に住む外国人の起業家の玄関口になる場所。英語や中国語などの外国語が飛び交い、世界各国の人々が集まって仕事をしていると実感できるところだ。fabbitのオープンスペースには仕切りがなく、日本人と外国人が隔たりなくすごせる環境だ。fabbitのイベントや企業同士のマッチングを通して、日本で仕事をしたい外国人の起業家と国内企業が交流できる場をつくり、バックグラウンドがちがう人同士が出会うことで今までになかったアイデアからの新しいビジネスが生まれることを目指している。
近年、日本で仕事をする外国人は増えているが、日本で外国人がオフィスを借りるのは、言葉のちがいや手続きの難しさなどからハードルが高いことも多いといわれている。fabbitは英語などの外国語で入居の手続きをすることができて、コワーキングスペースのため従来型のオフィスを借りるより入居の手続きがしやすい。そのため、fabbitの外国人ユーザーは多く、外国人が日本でビジネスを始めるときに借りやすいコワーキングスペースとして、今後も拠点を広げたいと考えている。
将来は、日本で仕事をする外国人が増えて、長く住んでいる外国人は日本で起業してビジネスをしたいと考える人も増えるだろう。また、日本人と外国人が同じ業界で働いて、隣同士で仕事をする機会も多くなると予想される。日本人と外国人が国籍に関係なく仕事をするコワーキングスペースは、日本のオフィスの未来図かもしれない。
(つづく)
【取材・文・構成:石井 ゆかり】法人名
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