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2019年06月17日 17:23

「第4回 『サロン幸福亭ぐるり』講演会」(前)

大さんのシニアリポート第79回

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 6月8日(土曜)、地域にある公民館の多目的ホールで、「第4回『サロン幸福亭ぐるり』講演会」を開催した。講師は桜井政成(立命館大学政策科学部教授)さん。専門は「組織社会学」「福祉社会学」。ボランティア活動を通して、実践的に学説を構築していく若手のホープ。出会いは、拙著『親を棄てる子~新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)上梓時に取材させていただき、拙著にも登場いただいた。取材時に「『サロン幸福亭ぐるり』を見たい」といわれたので、ついでに講演も依頼した。講演料が薄謝なので、完全に教授の持ち出し。申し訳ない気持ちでいっぱいである。2回に分けて報告する。

会場風景

 当日は梅雨入り直後で、今にも雨が落ちてきそうな曇天。入場者数は、予想した100人よりは若干下回ったものの、遠方(京都)からの講演者に対して失礼のない入場者数で収まり、安堵。講演会は「第一部 桜井教授の講演」。テーマは「コミュニティ活動に求められるもの」。「第二部 桜井教授とわたしとの対談」。テーマは「今、地域で起きていること」の二部構成。

 これまでの講演会は、第1回(2009年11月15日)、講師は丹直秀((公財)さわやか福祉財団理事)さん。演題は「ふれあいの居場所作り~元気なお年寄りの尊厳ある生き方を地域で支える~」。第2回(2010年11月28日)、講師は中沢卓実(千葉県松戸市常盤平団地自治会長・NPO法人「孤独死ゼロ研究会」理事長)さん。演題は「『孤独死ゼロ作戦』から学ぶ」。第3回2013年(12月15日)、講師は足立己幸(女子栄養大学名誉教授 保健学博士・管理栄養士)さん。演題は「65歳からの共食~仲間力や地域力を活かして~」。すべての講演会で、私との対談を設けた。

対談する大山氏(左)と桜井教授
講演する桜井教授

 桜井政成教授は1975年長野県生まれ。立命館大学ボランティアセンター主事・同助教授を経て現職。ちなみに39歳で教授就任とは驚きである。桜井教授が本格的にボランティアとして取り組んだのは、1995年の「阪神淡路大震災」である。現場に駆けつけ自分もボランティアの一員として主に避難所に指定された学校で活動した。そこで支援の仕組みをつくり、ネットワークを広げる大学生のリーダーや、いきいきとボランティア活動する茶髪の中学生を目の当たりにして、ボランティアの多様性を知る。その後、高齢者施設(デイサービス)でのボランティアを通して、自分は何の役に立っているか、誰かの役に立つということに注視するようになる。

 ボランティアを日本語に訳すと「自発的活動者」という。いわゆる「奉仕活動」に対する英語は、ボランティアとはいわない。サービス(service)という。ボランティアは、「してあげる」という一方的なものではなく、「お互い様」「自分にもプラス」という双方的な関係性が重要となる。ちなみに生活満足度と幸福度(感)の高い(強い)人は、よい社会的な関係性を維持でき、ボランティアへの参加率が高いともいわれている。ボランティアは主に「高齢者のすること」という空気があるが、若い人はどうなのだろう。この「幸福度」に関して講演の内容からは少し外れるが、どうしても明記したい気になる数字がある。

 国立青少年教育振興機構が平成26年に実施した「高校生の生活と意識に関する調査」がある。「高齢となった親を自分で世話をしたい」と答えた日本の高校生は37・9%で、日米中韓4カ国の高校生のなかで最低だった。トップの中国が87・7%、次が韓国で57・2%、自立しているアメリカでさえ51・9%で半数を超す。ちなみに2004年度調査時での日本は、43・1%だから、10年で5・2ポイントも減少している。

 また、同機構が平成27年度に行った調査によると、「自分がだめだと思うことがある」という質問に、日本の高校生の実に72・5%が、「とてもそう思う」「まあまあそう思う」と回答している。同じ質問に、中国の高校生は56・4%、アメリカ45・1%、韓国35・2%となっている。日本の高校生の数字が突出して高い。

 宮台真司(社会学者・首都大学東京教授)が出演していた人気ラジオ番組、「荒川強敬 デイ・キャッチ!」(今はない)の「金曜ボイス」(平成30年4月6日放送)で、「自己肯定感の高い人ほど、親を尊敬します。(逆に)低い人ほど親や教師を尊敬できない」と述べた。前出の、「高齢となった親を自分で世話をしたい」の質問に対する日本の高校生の37・9%という数字と、「自己肯定感が低い」と答えた日本人高校生の72・5%という数字を比較してみると、宮代の言葉と見事に合致する。自己肯定感の低い日本の若者が、将来ボランティアとして他人の世話をするという現実的な問題に不安を覚える。

 日本のボランティアという考え方のなかに、宗教的な背景があると桜井教授は指摘する。「無財の七施」といい、7つの施しをいう。

1-眼施(げんせ):優しい眼差しをもって人に接する。
2-和顔施(わがんせ):やさしい微笑みを持って人に接する。
3-愛語施(あいごせ):思いやりを持った言葉で人に接する。
4-身施(しんせ):身を以て思いやりを示す。
5-心施(しんせ):心を込めて思いやりを示す。
6-床座施(しょうざせ):人に場所や席を快く譲る。
7-房舎施(ぼうじゃせ):人に宿泊や休憩の場所を快く提供する。

(参考:ハフィントンポスト記事より)

確かに、我々が漠然と考えるボランティア像を彷彿とさせる。もっとも、ボランティアを「ラテン語ボランタス(自由意志)を語源とする」という発想では、「自発性に裏づけられた奉仕者、篤志家をいみする」もので、「自発性または自主性、善意性、無償制、先駆性ならびに自己犠牲を伴うことがその行為の基本的特性とされていた」(『ニッポニカ』渡邊益男)と規定している。一神教を基本とするヨーロッパでは、「神に仕える」という意識が強かったからだと思う。多神教の日本ではボランティアの意味するものも多様化し、やがて一方的に「してあげる」から、「お互い様」「自分にもプラス」と変容する。「情けは人のためならず」という精神なのだろう。これを「情けは人のためにならないから、人に情けをかけるべきではない」と解釈する暗愚な人もいるが…。

 阪神淡路大震災を経験した桜井教授は、「震災でコミュニティは3回崩壊する」と話す。(1)応急避難所(無我夢中で駆け込んでみたものの、コミュニティはバラバラ。プライバシーもない)。(2)応急仮設住宅団地(避難場所から出られ、仮設住宅に移り住むものの、周囲は知らない人ばかり)。(3)復興公営住宅(抽選に当選し、引っ越したものの、周りはまたも知らない人ばかり)。とくに高齢者にとって、たびたび新しいコミュニティを構築することは非常に困難なことだ。

 一日中仮設住宅や復興公営住宅で過ごし、やがて誰にも気づかれずに孤独死する。「孤独死」という言葉を定着させたのは、阪神淡路大震災の仮設住宅で「クリニック希望」を開設し、住民の健康を積極的にバックアップした額田勲さんである。額田さんは孤独死を、著書『孤独死』のなかで「緩慢な自殺」と表現した。孤独死は突然起こるような感じを受けるが、実は「孤独死予備軍」と呼ばれる人たちが、さまざまな要因を内包しながら徐々に死を迎えるのである。

 要因のなかには慢性的な疾患、失職による貧困、コミュニケーション不足からくる不安。「独居」→「傷病」→「貧困」のサイクルに巻き込まれ、アルコールに依存した自堕落な生活を送るうちに孤独死する。周囲には震災に遭う前のように「顔見知り」がいない。とくに男性は近所付き合いが苦手である。孤独死者に男性が多いのはそのためでもある。孤独死は高齢者の特権のように思われるが、「条件が整えば」40代でもごく日常的に起きている。地域で独居者を孤立させない方法を見つけださないかぎり、孤独死はなくならない。そのためにもコミュニティ活動が欠かせない。次回は「今、地域で起きていること」を報告する。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。

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