2024年03月30日( 土 )

国道3号 博多バイパス 全線開通、渋滞緩和や安全性向上に期待の声(前)

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 3月17日、総延長7.72kmにおよぶ国道3号「博多バイパス」が、最終区間3.28kmの開通によってついに全線開通となった。1968年度の事業着手から半世紀――。国道3号の交通渋滞の緩和や物流拠点へのアクセス時間の短縮による生産性の向上など、新たな道路インフラの誕生に多大な期待が寄せられている。

盛大に行われた開通式典

好天に恵まれ、博多バイパス全線開通となった

 福岡市東区の国道3号の「博多バイパス」(下原~二又瀬、総延長7.72km、全線6車線)が3月17日、事業着手から半世紀の時を経てついに全線開通した。当日は快晴にも恵まれ、完成したばかりの真新しい道路は、まるで“万里の長城”を思わせるかのような威風堂々とした姿を見せた。

 同日午前10時からバイパス本線上で開催された開通式典は、香椎宮雅楽保存会による雅楽演奏で厳かに始まった。会場には、地元政治家や地元町内会関係者、工事関係者など約240人が出席。九州地方整備局の増田博行局長や高島宗一郎福岡市長を始め、井上貴博衆議院議員、松山政司・一億総活躍担当大臣、野田国義・参議院国土交通委員長など、錚々たるメンバーが並んでいた。

 最初に登壇した九地整・増田局長は、「博多バイパスの開通により、東の副都心である香椎エリアの交通の流れも大きく変わると思います。国道3号の渋滞緩和により、周辺の生活道路の安全性も高まる。今後、ますます福岡市の発展に寄与することを願います」と挨拶。続けて、「半世紀の時をかけて、多くの皆さまのご尽力で今回の開通に至りました。今後の福岡市のさらなる発展につながることと思います」(高島市長)、「博多バイパスが開通することによって、福岡の発展がさらに加速を増していくと思います」(井上議員)、「ICT舗装工事などの先端的な技術による、ストック効果の高い道路の開通により、今後の渋滞緩和などに絶大な効果を発揮するでしょう」(松山大臣)、「物流および人流の陸・海・空をつなぐための、今後の福岡市の発展に欠かせないバイパスです」(野田議員)など、それぞれが挨拶や祝辞を述べた。

博多バイパス開通式典の様子

 途中、会場内で流されたビデオレター(※)では「東区のまちがますます元気になることを期待しています」「交通の円滑と渋滞解消に期待」「買い物や通勤が便利になります」「これからは安心して通学できるようになるのが嬉しい」「陸・海・空をつなぐ大切な道です」「車も自転車も人も、みんなスムーズ、安全、快適に移動できます」「博多バイパスでまちの活性化が期待できます!」「工事が始まった約50年前を思い出すと感慨無量です。この道路が東区に新たな歴史を刻むことを期待しています」――といった地域の声が紹介された。

 その後、地元・香椎高校の吹奏楽部による演奏や、博多幼稚園の園児たちによる可愛らしいダンスなどが披露された後、来賓客らによるくす玉開きおよびテープカットが行われ、 “通り初め”では、消防車や大型トラック、警察車両や自衛隊車両などが走行。事業着手から半世紀の時を経て、ついに博多バイパスが開通した。一般の通行は、同日午後4時から可能となった。

最新技術の導入と景観への配慮

 「博多バイパス」は、慢性化していた国道3号の交通混雑緩和や安全性の確保を図るとともに、福岡空港や博多港などの広域交通拠点へのアクセス性の改善による物流の生産性向上などを目的とした幹線道路。戦後間もない1946年度に都市計画で決定し、68年度に事業着手。翌69年度から用地買収に着手するとともに、71年度に工事が着工した。その後、関係者の支援や地元の協力を得ながら、事業への集中投資や安全な施工により都市部の整備効果の高い区間から段階的に整備を進めており、2008年9月には新二又瀬橋交差点-松島交差点(2.58km、6車線)および松島交差点‐多々良中学校西交差点(1.86km、暫定5車線)まで開通。その後、最終区間となる多々良中学校西交差点-下原(3.28km)の工事が進められていた。

 この最終区間の工事においては、九州初となる「ICT舗装工」が導入された。「ICT舗装工」では、レーザースキャナなどにより短時間で面的な3次元測量を事前に行ったうえで、3次元設計データと事前測量結果の差分から施工量を自動算出し設計・施工計画を作成。その後、3次元設計データなどによりICT建設機械(モーターグレーダー)を自動制御し施工を行い、さらには施工後の検査もレーザースキャナなどの計測結果を活用することで、省力化できるというもの。従来型の施工に比べて、作業効率の向上により工期が短縮されるとともに、人手不足の解消にもつながると期待されている。

 なお、この最終区間ではその途中、近隣に位置する香椎宮の参道をまたぐことになる。そのため、参道を横切る「香椎高架橋」の橋梁には擬宝珠(ぎぼし)の付いた鋳鉄製防護柵を採用することで、景観に配慮。また、香椎宮の春季氏子大祭で2年に1度行われる「神幸式(じんこうしき)」の際には神輿が橋梁の下を通ることから、「上空には何もない」と見なしてもらう意図のもと、「雲」の文字が描かれたプレートを橋梁の床版下面に取り付けるなど、神事の際への配慮もなされている。さらに、参道に並ぶクスノキのうち、高架橋と交わる6本については、当初は別の場所への移植も検討されていた。だが、「残してほしい」という近隣住民の声を尊重し、上部を枝打ちするなどして木の高さを調整して対応。近隣の歴史・文化・景観に対し、最大限の配慮を行っている。

※クリックで拡大

(つづく)
【坂田 憲治】

※ビデオレターは、以下で視聴可能
http://www.qsr.mlit.go.jp/fukkoku/doro_p/doro_p01/hakataby/​

 
(後)

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