2022年06月30日( 木 )
by データ・マックス

【WINカンパニー事件】消えた運営助成金3,000万円~設置企業の取締役に「川﨑一派」の飲食店経営者

■口座凍結を巧妙に解除~消えた3,000万円

 連日報じている川﨑大資氏(旧名:塩田大介)が代表を務めるWINカンパニーが関与した助成金詐欺疑惑(関連記事)で新たに、福岡市内の保育所設置企業「JF」社が受け取った助成金約3,000万円が5月31日、WINカンパニーの資金管理を担当していた青木誠敏氏(関連記事)によって引き出されていたことがわかった。3,000万円は青木氏を経由して川﨑氏に渡ったとみられる。

 川﨑氏は、公益財団法人児童育成協会に「川﨑一派」(育成協会内での呼称)とみなされている飲食店経営者を、JF社の取締役として送り込んでいた。助成金が支給されるのを知ったJF社の代表は、助成金が川﨑氏に渡るのを防ぐために5月28日に会社口座を凍結していたが、助成金が支給された31日、JF社の取締役に就任していた飲食店経営者が口座凍結を解除し、同日のうちに助成金を全額引き出していた。

JF社の口座履歴。5月31日に児童育成協会から2929万9870円が振り込まれ、同日に3018万8549円が引き出されている
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■代表者が名前も顔も知らない、謎の「取締役」

 企業主導型保育事業では、保育所開設にあたって要した工事費などにかかる助成金(設置費)とは別に、保育所の運営に必要な経費にも助成金(運営費)が支給される。今回、JF社の口座から流出したのはこの運営費(1年分)にあたるもので、設置企業を隠れ蓑にして助成金を抜き取る、川﨑氏のしたたかな助成金ビジネスの一端が垣間見えたかたちだ。

児童育成協会から振り込まれた運営助成金を引き出した、加藤真吾氏
加藤氏が経営する飲食店「Beef&bar真吾」

 JF社の取締役として口座凍結を解除し、助成金約3,000万円を引き出したのは、九州最大の歓楽街・中洲にある雑居ビル内で飲食店「Beef&bar真吾」を経営する加藤真吾氏。加藤氏は6月21日に取材に応じ、5月31日に青木氏とともに福岡銀行吉塚支店を訪れ、口座凍結を解除して3,000万円を引き出したことを認めた。引き出した際に加藤氏がなんらかの報酬を受け取ったかについては回答しなかったものの、「3,000万円は青木氏が持っていった」としている。

加藤真吾氏を同席させて、助成金3000万円を引き出した、
青木誠敏・全国子ども保育促進機構
株式会社代表取締役社長

 JF社のK代表によると、2017年3月にJF社が運営していた別の飲食店が閉店し、これを知った川﨑氏が同年5月に、JF社を300万円で買収したいと持ちかけてきたという。しかし、300万円は支払われないまま川﨑氏に言葉巧みに誘導され、K代表はJF社の会社口座通帳や社印などをすべて渡していた。

JF社の会社登記。2017(平成29)年5月31日に加藤氏が取締役に就任している
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 今回、3,000万円を引き出した加藤氏は2017年5月31日に取締役に就任しているが、K代表によるとこれまでJF社の株主総会を開催したことはなく、加藤氏を取締役に選任した記録も存在しないという。加藤氏は、川﨑氏とは福岡市博多区の複合商業施設「キャナルシティ博多」そばにあるイタリア料理店「Sorriso」の開店を手伝ってほしいと声をかけられたことをきっかけに知り合ったと話している。

「そもそも、加藤氏の名前も顔も知りませんでしたし、会ったこともありません」(JF社のK代表)

SorrisoではWINカンパニー主催のミニコンサートなどを頻繁に開催。
昨年4月25日には、WIN主催で元プロ野球選手・川口憲史氏のトークショーを開催した
JF社が運営するイタリアレストランSorriso

■入念に計画された「プランB」

 5月31日に児童育成協会からJF社に支払われた助成金は、キャナルKIDSLAND保育園(福岡市博多区)の運営費1年間分に当たる約3,000万円(2,929万9,870円)。JF社は、キャナルKIDSLAND保育園とKIDSLAND天神店(福岡市中央区)の計2カ所の企業主導型保育所の設置企業になっているものの、K代表は両保育所の設置企業になっていること自体、まったく知らなかったと主張している。

 「5月20日に、取引銀行の方から『データ・マックスの記事に名前が出てますよ』と教えてもらって記事を読んで初めて、JF社が保育所の設置企業になっていることを知ったんです。しかも、何らかの犯罪に巻き込まれていることもわかって、記事を読んでいる最中に手が震えてきたのを覚えています」(K代表)

 自身の知らないうちにJF社が企業主導型保育所の設置企業となっていることを知り、さらに川﨑氏が関与していることを確信したK代表は福岡県警や弁護士に相談し、さらに児童育成協会に事情を説明するするなどして事態の収拾を図ってきた。その際、5月31日に児童育成協会から運営助成金が支払われることを知ったK代表は、助成金が川﨑氏に渡ることを警戒して5月28日に口座を凍結したものの、加藤氏を取締役として送り込んでいた川﨑氏が凍結を解除し、まんまと3,000万円を手にしたとみられる。

 川﨑氏が企業主導型保育事業の助成金を受け取る手段として主に使っていたのは、設置企業とコンサルタント契約を交わしたうえで、助成金を迂回させる方法だ。しかし、JF社で使われた手法は、川﨑氏=WINカンパニー自身が会社登記上は名前を出さないまま設置企業に成りすますもので、この場合は助成金申請から助成金受給までのすべてについて実質上、川﨑氏=WINカンパニーが主体となることができるため、得られる利益も大きい。不足の事態に備えて自身の息のかかった人物を取締役に送り込むなど、入念に準備された「プランB」だったといえる。

【特別取材班】

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