2021年12月09日( 木 )
by データ・マックス

“コストコ効果”の勢いに乗り、みんながわくわくする御船町へ

御船町長 藤木 正幸 氏

 熊本県のほぼ中央に位置し、古くから熊本・上益城地方の政治・経済・文化の中心地であった御船町。現在も町内に3つの高速道路ICを擁する交通の要衝となっている同町だが、2021年春に会員制大型量販店「コストコ」が出店することで注目を集めている。藤木正幸町長に聞いた。

御船町役場

被災で改めて感じる地域コミュニティの力

 ――2016年の熊本地震では、御船町でも多大な被害を受けたと聞いております。

 藤木町長 熊本地震の際には、山間部を含めて町内の全域が被災しました。それにより、10名の死者を始めとした人的被害や、全壊・半壊を含めた多数の建物被害の発生など、本町でも甚大な被害が出ました。

 ――地震からの復旧・復興の状況はいかがですか。

 藤木町長 当時の本町は、防災行政無線もない、物資もない、避難訓練さえ実施されていないという“ないないづくし”の状況でした。しかし、地震によって防災面での脆弱性が浮き彫りになったことで、その後は町民の安全・安心のために、全力を挙げて災害に強いまちづくりに取り組んでいます。たとえば、地域防災計画の大幅な見直しや、防災行政無線の整備のほか、19年12月には災害時の支援物資の輸送拠点となる「防災備蓄センター」も整備しました。

 今回の被災では、地域のコミュニティの力を改めて感じました。こうした災害時に、最終的に頼りになるのは、近隣の方々のお互いの助け合いです。地域の結びつきを強めていくための政策を、これからも進めていきたいと考えています。

 ――現在、町の人口はどのように推移しているのでしょうか。

 藤木町長 元々緩やかな人口減の状態が続いていましたが、熊本地震の影響などで一時は急激に落ち込み、2010年時点で1万7,888人だった人口は、今では1万7,000人を割り込むまでに減少しています。

 今後、いかにして人口減少を食い止めるかが、自治体としての大きな課題です。私自身、この地域に住み続ける人をどれだけ残していくかが、町長としての自分の使命だと思っており、そのために打てる策を打っているわけです。コストコ誘致もその1つです。

コストコをきっかけに町の活性化・定住促進へ

 ――21年春にコストコが開業予定です。南九州では初の出店となりますが、どのような効果を期待されていますか。

御船IC東側にコストコが開業予定

 藤木町長 御船IC東側に位置する約5万6,000m2の用地に「(仮称)コストコホールセールジャパン熊本倉庫店」が開業する予定で、19年6月には蒲島郁夫・熊本県知事を立会人として、コストコホールセールジャパン(株)と立地協定を締結しました。

 コストコの商圏範囲は元々広いのですが、今回は高速道路ICの至近地という立地もあって、熊本県内だけでなく、宮崎や鹿児島なども含めた広域からの集客が見込まれます。それにより、交流人口の拡大を始め、雇用の創出や町の税収増、さらには定住促進など、さまざまな良い影響がもたらされることを期待しています。

 私は“コストコ効果”と謳っているのですが、コストコが来ることで“勢い”が生まれます。町にとって、この勢いというものはものすごく重要で、勢いのない場所に人は住もうとしません。コストコをきっかけにして生まれた勢いを推進力として、企業誘致や雇用創出、そして町の魅力を向上させ、人口増加へとつなげていく―。それが、私がこれから取り組んでいかなければならない1つの道筋だと思っています。

 ――一方で、周辺での交通混雑などが懸念されます。

 藤木町長 周辺道路は町道として整備を行い、安全対策や渋滞緩和のためにラウンドアバウト(環状交差点)を2カ所設ける予定です。また、渋滞対策などについては、コストコへの来店・退店時の誘導計画を策定し、県警やNEXCO西日本などとの事前協議を実施したほか、熊本県下では初となる周辺自治体との広域調整を実施して対応しております。ただし、これまでの国内のコストコ出店地の状況を統計的に見ると、開業後2カ月間や、その後も連休中などは混雑が予想されますが、それ以外の平時については、週末であっても、それほどの渋滞は発生しないと予想しています。

 ――コストコが来ることについての、町民の方々の反応はいかがですか。

 藤木町長 本町は元々農業中心のまちで、就農人口の減少や高齢化といった課題を抱えていました。町民の皆さまには、私がコストコ誘致に動き出した最初期の段階から何度も丁寧にお話しさせていただきましたが、そのときに伝えたのは、「このままでは御船町はダメになってしまいます。今動かないと、10年後、20年後の町の未来は想像できないんですよ」――という思いです。やはり、町民それぞれが町の将来に対する危機感を覚えていたこともあって、今のところ大きな反対などもなく、皆がコストコ歓迎ムードになっています。

 これから重要なのは、コストコ開業による交流人口の増加を、いかに町に還元していくか。言い方を変えれば、どうやって“外貨”を稼いでいくかです。そのためには、コストコに買い物に訪れた方の町内での滞在時間を、いかに伸ばせるかが勝負だと思います。その方策については、町民全員で一緒になって考えていかなければなりません。理想としては、近隣に長時間滞在できるアミューズメント施設なども誘致できればいいですね。

 ――最後に、御船町を今後どのようなまちにしていきたいか、町長の考えをお聞かせください。

 藤木町長 どんなにキレイごとをいっても、町の財政が悪ければ何もできません。町の財政力を上げていくためにも、コストコ開業を1つの契機としながら、その勢いに乗って、人口減少を脱皮できるような魅力あるまちづくりの施策を打っていきたいと考えています。一方で、町の根本にあるのは地域のコミュニティです。町民同士が手をつないでいけるような、コミュニティ中心のまちづくりという方向性を変えていくつもりはありません。

 19年12月に策定した第6期総合計画では、「みんながわくわくする御船町」を将来像として掲げました。今後も町民の皆が笑っていけるよう、町のもつ多様な魅力を最大限生かしながら、未来を見据えた持続可能なまちづくりを進めていきます。

【坂田 憲治】

<プロフィール>
藤木 正幸(ふじき・まさゆき)

 1965年10月、熊本県御船町出身。第一経済大学(現・日本経済大学)を卒業後、福岡市内の結婚式場での勤務を経て御船町へ戻り、実家の(有)藤木屋で専務取締役として冠婚葬祭業に従事。2015年4月に御船町長に就任し、現在2期目。

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