2024年03月19日( 火 )

最先端技術による“まるごと未来都市” 内閣府の「スーパーシティ」構想とは(中)

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スーパーシティの下位概念?似て非なる「スマートシティ」

 スーパーシティによく似た言葉として、「スマートシティ」というものがある。

 「スマートシティ」とは、IoT(モノのインターネット)などの先端技術を用いて、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市のこと。主導している国土交通省による定義では、「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」とされている。最先端技術を活用して新たな都市をつくっていくという点では、スーパーシティとよく似ているように思われるが、両者の違いは一体何だろうか――。

 「『スーパーシティ』構想の実現に向けた有識者懇談会」(座長:東洋大学教授・竹中平蔵氏)による最終報告では、以下のようにその違いが言及されている。

 これまで日本国内において、スマートシティや近未来技術実証特区などの取り組みがあった。しかし、エネルギー・交通などの個別分野での取り組み、個別の最先端技術の実証などにとどまっていた。「スーパーシティ」は、これらとは次元が異なり、「まるごと未来都市をつくる」ことを目指す。すなわち、①エネルギー・交通などの個別分野にとどまらず、生活全般にまたがり、②最先端技術の実証を一時的に行うのではなく、未来社会での生活を先行して現実にする。③その際、何より重要なことは、技術開発側・供給側の目線でなく、住民目線で理想の未来社会を追求することである。

 つまり、「さまざまなスマートを同時に行っていること」「技術の実証ではなく、暮らしへの実装であること」「住民目線のプロジェクトであること」の3つの要素が必要なところが、スマートシティとの大きな違いだ。これらを鑑みるとスーパーシティは、便宜的にスマートシティの上位互換モデルだといっても差し支えないだろう。

 なお、スーパーシティ構想の実現に向けては、法的な整備が不可欠。これについては、従来の国家戦略特区制度を基礎としつつ、より迅速かつ柔軟に域内独自で規制特例を設定できる法制度の整備が求められている。この「スーパーシティ」構想を実現する国家戦略特区法改正案――通称“スーパーシティ法案”の成立については、19年度の通常国会で提出されて廃案となったうえ、臨時国会では見送りと、これまで2度の失敗に終わっていた。同法案は今年2月に改めて閣議決定され、4月には衆院本会議を通過し、5月13日からは参議院本会議での審議を開始。5月27日に可決され、“3度目の正直”で成立となった。今夏ごろから自治体を募って選定作業が始められ、秋以降に全国で5カ所ほどエリアが指定される予定だ。当然、関心を示す全国の地方自治体がこぞって手を挙げて“誘致合戦”が始まるだろうが、そのときに福岡市はどう動くのか――。

(つづく)
【坂田 憲治】

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