2024年04月19日( 金 )

変貌しつつある大阪港~アフターコロナ時代の万博を 実現できるか?(2)

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夢洲活用策としての万博誘致

 大阪港(ベイエリア)には、夢洲のほか、舞洲(まいしま)、咲洲(さきしま)などの人工島がある。面積約220haの舞洲には、野球場やサッカー場などをもつスポーツアイランド、障がい者スポーツセンター、ごみ焼却工場などが立地している。面積1,045haの咲洲には、アジア太平洋トレードセンター(ATC)、インテックス大阪、大阪府咲洲庁舎(旧・ワールドトレードセンター)などの公共施設のほか、ハイアットリージェンシー大阪などのホテルが立地している。

 夢洲には、国際物流の拠点としての高規格コンテナターミナルやメガソーラーなどが立地しているが、島全体としては造成中で、計画面積約390haのうち、半分以上は「何かに使う土地」として残されてきた。見方を変えれば、「将来的に大規模なまちづくりが可能な用地」として20年以上にわたって温存されてきたともいえるが、大阪市政の「ムダな公共事業」の代表例として、市議会などで槍玉に挙げられてきた。万博の開催地に決定した今でも、批判に晒され続ける“呪われた島”だ。

 この点、ある関係者は「万博会場となる夢洲はもともと、住宅地を中心とした開発をする構想だった。その後、オリンピックの選手村として活用しようという話が持ち上がったりしたが、夢洲はこれまで、廃棄物や浚渫土砂、建設残土の受け入れ場所として粛々と整備が進められてきた経緯がある」と話す。要するに、具体的な活用ができないまま、埋め立てだけ続けられてきたわけだ。

 大阪府市と関西経済界は17年、夢洲がもつポテンシャルの発揮を目指して、「夢洲まちづくり構想」を策定。「SMART RESORT CITY 夢と創造に出会える未来都市」をコンセプトに掲げ、夢洲を「新たな国際観光拠点」+「国際物流拠点」と位置づけ、IRを核とした世界水準のエンターテインメント機能、MICE機能の集積を打ち出していた。

3つの「ワールド」、5つの「空」

会場内5カ所に設置される大広場「空(くう)」 ​​​​
(出典:経済産業省「ビッド・ドシエについて」)

 万博会場は、夢洲南側の用地約155haを予定している。場内は、建築物や展示館などが立地する「パビリオンワールド」、噴水や花火会場、水上ホテルなどで構成される「ウォーターワールド」、メガソーラー(既存)や広場などをもつ「グリーンワールド」の3つに区分される。パビリオンワールドは、中心をもたない離散型(ボロノイパターン)のレイアウトを採用。有機的なつながりと成長を象徴している。場内5カ所に「空(くう)」という名称の大広場を設置。AR技術を活用した展示やイベントを行うことにしている。

 かつての大阪万博では、シンボルとなる「太陽の塔」を配したが、今回はあえてシンボルをつくらず、大小のパビリオンを配置することで、世界の多様性の表現を目指しているらしい。今のところ、パビリオン出展国などはまったくの白紙だ。

(つづく)

【大石 恭正】

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