2024年04月20日( 土 )

変貌しつつある大阪港~アフターコロナ時代の万博を 実現できるか?(3)

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夢洲インフラ整備に900億円以上を投入

 大阪市は会場建設費とは別に約900億円以上を投じて、大阪メトロの延伸、埋め立て、上下水道などのインフラ整備を行う。大阪市以外でも、電気やガス、通信設備などの整備が行われるほか、京阪電鉄が京阪中之島線(大阪メトロ中央線)の九条駅までの延伸を計画中だ。事業規模は500~1,000億円と言われている。インフラの多くは、今年度から工事を本格化させる予定。これらの投資は、万博のためでもあるが、その後のIR(統合型リゾート)開業をにらんだものだ。

 夢洲では現在、パビリオンワールドの用地(約30ha)を埋め立て工事中。埋め立て土には、建設残土、購入土を充てる。大阪府も、急速施工に関する費用の一部を負担する。21年度の完了を予定している。協会への土地の引き渡しは23年度の見通しだ。

ボロノイパターンを用いたパビリオンワールド
(出典:経済産業省「ビッド・ドシエについて」)

 大阪メトロ中央線の延伸とはどのような事業なのか。大阪メトロ中央線は現在、長田~コスモスクエア(17.9km)までが開業している。中央線の延伸計画自体は、コスモスクエア(咲洲)から夢洲、舞洲を経由し新桜島に至る7.5kmにおよぶが、今回、工事対象となる延伸区間はコスモスクエア~夢洲の3.2kmの区間だ。コスモスクエアと夢洲の間には海があるが、09年に自動車用の海底トンネル「夢咲トンネル」(延長約2.1km、4車線)が開通している。この沈埋トンネルには、すでに鉄道用のスペースが途中まで確保。海底区間はこのトンネルを活用し、夢洲陸部から新たにトンネル(シールド+開削)を掘り進めていくことになる。開業は24年度の見通しだ。

 夢洲へのアクセスには、夢洲と舞洲を結ぶ夢舞大橋、夢洲と咲洲を結ぶ夢咲トンネルの2ルートがある。夢舞大橋ルートは、夢舞大橋~舞洲幹線道路~此花大橋から成り、現在すべて4車線だが、これらを6車線化する。夢舞大橋は現在、4車線で供用しているが、もともと6車線で建設されているため、ガードレールの規制を外すことで、6車線化する。此花大橋は、歩道部分を車道に変更することで6車線化する。万博後には、張り出し架設により、新たに歩道を設置する計画だ。夢舞大橋、此花大橋、舞洲の6車線化工事は21年度完了予定だが、夢洲は工事が錯綜するため、24年度完了を予定している。

 夢洲と舞洲に架かる夢舞大橋(橋長878m)は、橋全体が旋回する可動橋を採用している。大阪港の主要航路は、海底トンネルが通る夢洲と咲洲の間だが、この航路が航行不能になった場合に、橋を旋回し、大型船が通過できるようにしている。夢洲東側には、大阪港でメインとなるコンテナターミナルがある。物流トラックと万博車両の動線を分離確保するため、万博車両のための高架道路を整備する。

 万博会場へのアクセスは、鉄道とシャトルバス、自家用車を想定。このうち、鉄道が4割を担う。一般自家用車での来場者は会場外駐車場に車を駐車した後、シャトルバスでの移動になる。シャトルバスの自動運転実施などについては、まだ検討中だ。メインの駐車スペースは舞洲内に設置する方針で、7,500台程度を想定している。夢洲での海上交通も確保する。IR会場に近い島の北側に、小型旅客船のための浮桟橋を整備する計画だ。就航便としては、関西国際空港や神戸空港と夢洲を結ぶベイシャトル船を想定している。

(つづく)

【大石 恭正】

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