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2020年10月20日 07:00

「デジタル庁が目指すべき“人間中心”のAI戦略とサイバーテロ対策」(2)

国際政治経済学者 浜田 和幸

 アメリカでは大統領選挙が終盤を迎えている。近年、毎回のように話題になるのは、外部勢力の介入である。前回の2016年には、ロシアのサイバー部隊が暗躍し、民主党のヒラリー・クリントン陣営から情報を盗み、トランプ候補に有利となる情報操作を展開したという「ロシア介入疑惑」が沸き起こった。今回もロシアに限らず、中国や北朝鮮までもがネット上でさまざまな偽情報を流しているようだ。

群集と国家が対峙する時代

 サイバー攻撃といえば、海外からの侵入や見知らぬハッカーによる攻撃をイメージしやすいが、実際には内部犯の可能性も多く、システムを熟知している人間であれば簡単にセキュリティを潜り抜けることもできることを忘れてはならない。NSAの元契約社員スノーデンがアメリカの国家機密に関わる情報を大量に持ち出した例もあるように、内部からの犯行には効果的な防御策は考えにくいのが現状である。

 言い換えれば、「サイバー攻撃を完全に防ぐことはほとんど不可能である」と認識する必要があるということだ。防御にのみ関心を払うのではなく、攻撃を受けた後の対策を事前に講じておくことが、より実践的な対応といえるだろう。その意味で、速やかな情報開示を行う対応チームを事前につくっておくことが望ましい。

 なぜなら、サイバー攻撃の脅威に対して「想定外」という言葉は通用しなくなるからである。サイバーテロの首謀者は国家とは限らない。十分なスキルと時間さえあれば、個人でも容易に仕掛けることができる。最近のインテリジェントビルはネットワーク化が進んでおり、空調システムを停止させるだけで企業が保有するサーバーをダウンさせ、企業活動をマヒさせることも朝飯前だ。

 今や、個人であっても、国家を相手に闘いを挑むことができる。組織の体をなしていないネット上の群集と国家が対峙する時代に他ならないのである。言い換えれば、個人対国家、あるいは群集対国家といった、非対称の戦闘がサイバー空間で展開される可能性も高くなったわけだ。これまでさまざまな国がサイバー攻撃を受けた際に、他国の関与について懸念を表明してきたが、実際には攻撃の主体として国家が関与する必然性は薄くなっていると思われる。

 これからの情報ネットワーク空間においては、紛争の非対称性が大きくなるに違いない。そうした状況下においては、直接的なサイバー攻撃に対応した防御能力も重要だが、ネットワーク上での扇動や群集コントロール心理戦といった技術も求められるようになるだろう。

 アメリカでは、電力網への攻撃を想定し、カナダやメキシコの政府と合同でサイバー攻撃への対応シミュレーションや訓練を行っている。アメリカの元上院議員ドーガン氏によれば、「電力網に対するサイバー攻撃は2001年の9・11テロと比べ、1万倍もの影響を北米大陸にもたらす危険性がある」という。確かに、その可能性は否定できない。電力網がストップすれば、水や食糧やエネルギーの供給、運搬にも甚大な影響が生じ、地域経済は寸断され、国家機能も麻痺することは容易に想像できる。

 一方、我が国においては、原子力発電所の安全に関しては福島の原発事故以来、関心が高まってはいるが、上下水道をはじめ電力網や運輸網全般に対するサイバーテロ対策は、いまだ緒に就いたばかりと言わざるを得ない。

 海外の事例を参考にしたうえで、早急なハード面での対策に加え、内部の不平不満分子を危険な行動に走らせないようにするためには、どのように対応すべきか、人事管理などソフト面での対策も早急に求められる。新型コロナウィルス対策も必要だが、ネット空間を汚染するウイルス対策も忘れてはならない。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。

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