2024年04月20日( 土 )

ザ・キャピトルホテル 東急が「5つ星」獲得~アフターコロナにラグジュアリーホテルのあるべき姿とは(中)

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 東急グループのフラッグシップホテルである、「ザ・キャピトルホテル 東急」(東京都千代田区/以下、キャピトル)は、フォーブス・トラベルガイドのホテル部門格付けで最高評価の5つ星を獲得した。2020年はキャピトルのリニューアル開業から10周年。節目の年に大きな花を添える快挙だといえる。
 ところが、世界的には今年は新型コロナウィルスが猛威を振るった凶年でもある。5つ星獲得をどう受け止めているのか。コロナによるホテル経営への影響、対策にはどのようなものがあるのか。アフターコロナ時代のホテル業界はどうなるのか。キャピトルの総支配人・末吉孝弘氏に話を聞いた。

独自のコロナ対策を最大限

 ――アソシエイツのモチベーションを保つのも大変でしょう?

 末吉 コロナによって初めて、アソシエイツのモチベーションを上げるだけではダメだということに気づきました。アソシエイツの心を支配しているのは、モチベーションではなく、コロナに対する不安と恐怖なのです。これらを取り除かない限り、仕事に対するモチベーションは上がらないことがわかりました。そもそも出勤することすら、怖がっているわけですからね。そうすると、アソシエイツ個人の感じ方、価値観の問題になってくるわけです。

 私がすごく戸惑ったことがありました。ある会議で、「コロナが蔓延して日本が大変な状況なのに、なぜキャピトルはいまだに商売を続けているんですか」という声が一部のアソシエイツから上がったのです。これを聞いて、ホテリエというより、「個人の素の価値観が出てきた」と感じました。そこで、直感的に「アソシエイツの不安と恐怖を取り除くしかない」と思ったのです。

 そこで、これまでにも増して、キャピトル独自の「最大限のコロナ対策を行う」と決めました。万全の安全対策を講じることで、アソシエイツの不安と恐怖を解消するつもりでした。各現場を回り、安全対策をチェックして不足しているものがあれば、私が直接発注することにしました。時間のかかる既存の決裁ルールは無視して、トップダウンで行ったのです。

 体温計など品薄なものもありましたが、何とか必要な対策品をすべて確保することができました。そのなかには、高性能サーマルカメラの設置による来館者全員の体温チェック、客室内のオゾン消毒、プロバイオティクス(善玉菌)による浄化などがあります。

 アソシエイツのなかにコロナ感染者がいるかもしれないという不安を払拭するために、アソシエイツ全員の抗体検査も実施しました。これで不安の声はだいぶ少なくなり、みんな自然と仕事に前向きになったのです。ホテルの厳しい経営状況についても、具体的な数字を示しながら詳細に説明しました。

 「このままいったら倒産してしまう」「お客さまにうつさない、もらわないためにはどうしたら良いのか」「東急グループのフラッグシップとして、何をすべきか」という話もしました。3カ月ほどかかりましたが、今ではアソシエイツも安心感をほぼ取り戻しています。お客さま向けにも、当ホテルの安全対策に関する日本語と英語の動画を制作し、4月からいち早く配信しています。

建築家・隈研吾氏が手がけたホテルエントランス(写真提供:ザ・キャピトルホテル 東急)

「非接触型」と「接触型」へ二極化

 ――コロナ禍によって、今後のホテルマーケットはどう動くと見ていますか。

 末吉 これも以前、「ラグジュアリーホテルと宿泊特化型ホテルの二極化が進む」と指摘したところですが、コロナによってそれが加速度的に、徹底的に進むと見ています。宿泊特化型は、スマホアプリなどによって完全に人が介さない「非接触型」へ一気にシフトしつつあります。人件費もかなり圧縮できるので、価格競争力にもつながります。非接触型のための投資をしっかりできたホテルだけが生き残ることになるでしょう。リーズナブルな宿泊を好む客層は、そういうホテルばかり選ぶようになり、それで二極化の一極が完結する。そう考えています。

 もう一方の極であるラグジュアリーは、人間がつくるリアル感、そのホテルでしか経験できない空気感、人を介したサービスを提供するといった「接触型」の方向に収斂していくと思います。そのホテルでしか経験できない独自のサービスを求める富裕層は、そのようなホテルを選ぶ。私はそう考えています。

(つづく)

【大石 恭正】

<HOTEL INFORMATION>
ザ・キャピトルホテル 東急
所在地:東京都千代田区永田町2-10-3
TEL:03-3503-0109
URL:https://www.capitolhoteltokyu.com

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