戦前の空き家30軒以上を改修、大阪・蒲生4丁目が飲食店でにぎわうまちに(後)
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がもよんモデルでまちを活性化
「日本の人口は減少し、空き家が増加すると相場の下がる賃貸物件も発生し、住宅を借りやすくなるだろう。住人が住みやすいまちを求めて引っ越しやすい時代になっても、蒲生4丁目が住みたいまちとして選ばれるように、まちづくりを工夫したい」――と和田氏は話す。
住みやすいまちと一言でいっても、人によってその価値観はさまざまだ。デジタル化が進み、オンラインで家探しができる今では、子どもの学校やスーパーが近くにあることなどの利便性を重視するケースが多数派だが、和田氏は「多くのまちは利便性のみを強化する方向に進むだろうが、利便性だけでなくコミュニティを重視し、人情を感じられることを居心地の良さとして価値を置く人々も残るだろう」と予想する。
たとえば、大型商業施設は1カ所ですべての買い物ができる利便性はあるが、蒲生4丁目は個人商店が多いため、買い物では複数の店舖を回り、地域の人に挨拶する。大都市のコミュニティが希薄化しつつあるなかで、地域の店主と顔を合わせて買い物し、挨拶を交わすまちに、ホスピタリティや人間味を感じるか、面倒だと感じるかという感覚の違いで、いずれのまちに住みたいかが決まる。蒲生4丁目は下町らしさがあり、ほどよい空気感を醸し出している。コロナ禍で非接触の生活様式が推進されるなか、人らしく暮らすため、人との関わりの大切さも再認識されつつある。
和田氏は既存の商店街の活性化について、「本来もっていた地域ぐるみのホスピタリティを生かし、どこまで真摯に取り組めるかにかかっている。しかし、店主は商店街の店舗以外に商売や生活の基盤をもち、商店街が住むだけの場所になって個人主義が進んでいる場所も多い。そのため、空いたテナントを新しい店に貸すという方向に進みにくく、大きくリノベーションするには課題が残る」という。
和田氏は、徳島県美馬市脇町の重要伝統的建造物群保存地区で6年前から、「がもよんモデル」での古民家再生に取り組んでおり、十数店舗を飲食店に改修。今は、地域の運営者が「がもよんモデル」を受け継いでいる。都市であれば、駅から歩いていける交通の便が良い場所ならば、「がもよんモデル」が再現可能だという。
今は空き家となっているが、再生できる古民家は全国に点在している。空き家を飲食店として生かしまちを活性化させる「がもよんモデル」は、蒲生4丁目だけにとどまらず、多くの場所で生かせるのではないだろうか。
(了)
【石井 ゆかり】
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