戦前の空き家30軒以上を改修、大阪・蒲生4丁目が飲食店でにぎわうまちに(中)
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がもよんコミュニティ
まちおこしは、「人」だ。和田氏は、「同業の飲食店は通常、ライバルになりがちだが、お互いに挨拶しない関係ではなく、蒲生4丁目のまち全体で顧客を迎えられるように意識改革をしたため、飲食店主の仲が良く、飲食店同士のつながりが深い。地域の人を呼ぶためには、ホスピタリティの高いサービスが必要。まちの人に会ったら挨拶をするなどの行動に移してもらえるように呼び掛けている」と話す。
蒲生4丁目では、飲食店が常連客に別の飲食店を紹介することで、口コミによる相乗効果が出ている。これまで「がもよんばる」など、飲食店が集まるまちならではのイベントを開催し、1回で約4,000食を提供、数十店舗が参加してきたという。和田氏はプロジェクト運営の傍らで、飲食店の誘致や運営にノウハウを生かすべく、自身でも飲食店を運営。飲食店がお互いに運営ノウハウを共有し、地域でまちを盛り上げる仕組みをつくってきた。地域の飲食店と連携したゲストハウスもあり、通常のホテルのような飲食ブースを設けず、宿泊スペースのみで運営している。
まちおこしでは、建物をつくることももちろん大事だが、和田氏は「建物をつくった後は、その場所で魅力ある人が店を開いているかどうかで、人が集まるかどうかが決まる」――と、人がまちをつくることをいつも気に留めている。蒲生4丁目では、まちに行ったら予想もしなかった出来事が起きるという「アナログな体験」を重視。たとえば飲食店に裏メニューがあったり、コミュニティが生まれたり、人と話さなければ聞けない情報を知ることができたり、ということだ。
蒲生4丁目は、SNSなどを用いずに口コミベースでその評判を多くの人々に広げており、利用者の7割を占める地元客が、まちの魅力を広く伝える「営業マン」の役割をはたすことを目指している。和田氏は、「まちおこしでは、SNSなどで話を盛った情報を流すと、実際に行ったら噂ほどではなかったという誤解を生む恐れがあるため、実際に店舗に行った人が生の声を口コミで届けることで評判を広めている」と話す。
蒲生4丁目では、子ども食堂や市民農園も開催。子ども食堂では、でき上がった料理を子どもらが食べるのではなく、飲食店の店主が子どもに料理を教えるというもので、まちの飲食店を身近に感じ、距離も縮まるイベント。和田氏は「空いた土地は駐車場にしたほうが短期的には利益が上がるが、市民農園は長期的に地域の価値が上がるとみて始めた。野菜づくりで食育につなげているが、約1カ月で全区画が契約で埋まった」という。今後は、まちの深みを表現できるように歴史や文化を深堀し、お茶会の開催や史跡の紹介などを行っていく予定だ。
(つづく)
【石井 ゆかり】
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