【流水型ダムを考える】立野ダム工事事務所長に聞く なぜ白川流域に立野ダムが必要なのか?(後)
-
国土交通省九州地方整備局
立野ダム工事事務所 所長
阿部 成二 氏白川上流部、阿蘇くじゅう国立公園内で現在建設中の「立野ダム」(熊本県大津町、南阿蘇村)。2020年10月には本体部分のコンクリート打設がスタート。熊本地震の影響により、工事着手が1年遅れたものの、23年3月の完成に向けて、これまでのところ順調なペースで工事が進んでいる。立野ダムは、平時は水を貯めない流水型(穴あきダム)で、河川水質など環境への影響を低減しながら、必要な治水効果を確保できるメリットがある。なぜ白川流域に立野ダムが必要なのか。なぜ流水型ダムなのか。国土交通省九州地方整備局立野ダム工事事務所の阿部成二所長に話を聞いた。
23年3月の完成に向け工事は順調に推移
――工事の進捗はいかがですか。
阿部 18年8月に立野ダムの着工式を執り行い、基礎掘削を始めました。約70万m3の岩盤の掘削が終わり、20年10月から本体基礎地盤部分のコンクリート打設工事に入っています。熊本地震の影響で少し工事スタートが遅れ、20年に入って新型コロナウイルスにともなう影響も心配されましたが、23年3月の完成に向け、今のところ順調にきています。立野ダムは国直轄ダムとしては小型のダムです。谷が狭くダムサイトが小さいので、そもそも大きなダムはつくれません。
――本体基礎の部分の工事は、ダム工事でかなり重要な部分ではないですか。
阿部 一番大事ですね。最初は荒掘削で一気に掘ります。ダイナマイトや重機などを使って掘り進めるのですが、その後、最後の仕上げとして人がハンマーなどを使って整えます。そして、水で洗って、掃除機でゴミなどを吸い取ります。最終的には、スポンジなどを使って、人がなめても大丈夫なほどピカピカに仕上げます。そこまでしないと、基礎と本体がピタッとくっつきません。ダムは規模が大きな土木構造物であることが注目されますが、最後の仕上げは人の手が必要なほど、実は非常に繊細な構造物です。高さ100mの水圧は、砂粒程度の隙間であっても滲み込んでいくので、ダムには高い水密性、高い強度が求められるわけです。
流水型ダムは観光資源、地域振興の重要なツール
――観光資源としての立野ダムの活用にも取り組んでいますね。
阿部 ええ。私は19年に立野ダム工事事務所の所長に着任したのですが、そのとき、職員に対して「流水型ダムの新たな価値を見出そう」と言いました。景観に溶け込むダムとか、環境に優しいダムをつくるということもありますし、ダムは地域振興のための重要なツールという視点もあります。
「TATENO・D」というキャッチフレーズも私がつくったのですが、この「D」はダムではなく、デザインのDです。我々は、立野と名の付くものすべてをデザインしているのだという意味を込めています。それはダムであり、地域であり、働き方であったりします。今は工事中なので、インフラツアーがメインですが、完成後は、ダムそのものを使って何ができるかについて、南阿蘇村や大津町と一緒にいろいろ考えているところです。たとえば、ダム施設であるトンネルのなかでワインを貯蔵するといったことなどを考えています。
(了)
【大石 恭正】
月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。
ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)関連記事
2024年4月8日 14:102024年4月3日 15:002024年4月1日 17:002024年4月18日 10:452024年4月15日 17:202024年4月5日 17:402024年4月18日 10:45
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す
- 業界注目!特集
-
産廃処理最前線
サステナブルな社会を目指す
- MAX WORLD監修
-
パーム油やPKSの情報を発信
パームエナジーニュース