• このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年01月25日 13:34

【特集】これでいいのか産廃処理(2) 「正直者が馬鹿を見る」中間処理業界

 福岡県と佐賀県の産業廃棄物処理をめぐり、不適切で違法な処理方法が横行していることがわかった。業界関係者の告発で明らかになったもので、背景には「日本一安い」とされる福岡県の処理費用の問題と、「見て見ぬふり」をする行政の怠慢、さらになれ合いが横行しがちな業界事情があるという。

〈2回目〉前回から続く。

厳密に分けられる産廃の種類

 安定型処分場で埋立できる産業廃棄物(産廃)は、“安定型5品目”と呼ばれる、「廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず、がれき類」など。廃棄物の性質が安定しており、有害な汚水などを生じさせないものに限られているので、処分方法は穴を掘って埋めた後に上から土を被せるだけ。処分費用も安価ですむ。

 管理型処分場には、安定型では処分できない産廃が送られる。たとえば、「廃油、紙くず、木くず、繊維くず、動物性残さ、動物のふん尿、動物の死体、燃え殻」などで、こうした廃棄物では含まれる有機物が分解されたり金属などが溶出することで、有害な汚水やガスが発生することもある。したがって環境汚染を防ぐために雨水流入防止側溝や遮水構造などが義務づけられていることが特徴だ。持ち込める産廃の条件に厳しい制限があるため、処分費用は安定型の数倍から十数倍にまでなる。

「正直者が馬鹿を見る」中間処理業界

 特集1回目でも指摘した通り、業界を縛る構造的要因のなか、本来なら管理型で処分すべき産廃が安定型処分場に持ち込まれているという「違法」「脱法」行為がまかり通っている。

 大量の産廃が排出される工事現場では、木くずや繊維くず、紙くずなどの、安定型処分場では処分できない産廃が必ず排出される。工事現場でこうした廃棄物の分別をすることは、かかる手間を考慮すれば現実的ではなく、分別を行わないとすれば管理型処分場に持ち込まざるを得なくなるため処理費用は高額になる。

 こうした「現実」に対して、処理費用を抑えるために中間処理業者が自前の施設で産廃を分別して適切に処分しているというのが、一応の「タテマエ」だ。ただし、分別は多くの場合手作業で行われており、危険で手間のかかるこうした手順を省略してすべての廃棄物を安定型に持ち込むことは、業界の公然の秘密となっているという。結果的に、適正に分別処理している業者だけが「馬鹿を見ている(損をしている)」というのが現実だ。

産廃を分別する「振るい機」

あるはずの「アミ下」が「無い」矛盾

手で選別した後の、管理型混合廃棄物
排出事業者から排出されてすぐの、「管理型」混合廃棄物。
3センチ以下の廃棄物は手選別できない

 こうした不正な産廃処理が行われるリスクは法的にも想定されており、それを防ぐために中間処理業者には産廃を分別する「選別ライン」設備が義務づけられている。

 選別設備として一般的なのは、回転式選別機(トロンメル)や振動式選別機、風力選別機、磁力選別機など。県内の中間処理業者によると、こうした選別ラインを稼働させた場合は必ず「アミ下」や「トロンメル残さ(振るい下残さ)」と呼ばれる未分別の産廃が生まれるという。これらは大きさ10~30ミリ程度の小さなごみで、安定5品目に該当しないため必ず「管理型」で処分しなければならず、高額な処理費用がかかるため中間処理業者にとっては頭痛の種だ。

 中間処理業者が取り得る選択肢は、(1)そもそも選別せずにすべて安定型処分場に持ち込む(違法)、(2)きちんと選別して分別処分し、「アミ下」は管理型処分場に持ち込む(適法)、(3)選別ラインを動かして分別したうえで、「アミ下」の存在は無視してすべて安定型に持ち込む(違法)、の3つ。

 最も経済的なのは(1)だが、これはあまりにも露骨な法律違反になる。(2)は中間処理業者が損を被ることが前提で、事業継続を難しくする選択肢。したがって、(3)が現実的な選択肢となる。しかし、選別ラインを動かせば必ず「アミ下」が出るため、(3)を選んだうえで「アミ下は出ませんでした」という言い訳は、素人ならいざ知らず業者間や管轄行政では通用しないはずだ。

管理型混合廃棄物を選別ラインで選別した、「アミ下」と呼ばれる産廃

 福岡県環境部監視指導課、福岡市環境局、佐賀県県民環境部循環型社会推進課は、一部の中間処理施設に対して立ち入り検査を行っているが、行政のチェック機能が働いているのか甚だ疑問だ。たとえば安定型の最終処分場を持っている中間処理業者は、管理型混合廃棄物が出ていないように行政報告とマニフェスト(※)の虚偽記載を行い、本来なら管理型最終処分場へ搬出しないといけない廃棄物を混ぜて安定型処分場へ搬入しているのが現状だ。産廃処理の現場ではこうしたわかりやすい矛盾が明らかになっているにもかかわらず、放置されたままになっている。

※マニフェスト
 「産業廃棄物管理票」のこと。排出事業者は産廃処理を委託する場合に、産業廃棄物の名称、運搬業者名、処分業者名、取扱い上の注意事項などを記載したマニフェストを交付して、適正に処理されたか確認する義務が課せられている。

【特別取材班】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年06月21日 14:19

【スクープ】豊前市3セクが詐欺疑惑の取締役を解任 三原朝彦衆院議員の元「顧問」

 いったい何者だったのか?――福岡県豊前市が出資する第3セクターが5月に解任した取締役の正体について、関係者が一様に首をひねっている。衆院議員・三原朝彦氏の顧問も務め...

2021年06月22日 06:00

バイデン大統領を手玉に取り世界制覇を狙うイーロン・マスクの戦略(中)NEW!

 そんな資本主義の権化のようなイーロン・マスク氏であるが、2018年6月16日、自らのTwitterで「自分は社会主義者だ。真の社会主義とは万人のために尽くすこと」と...

2021年06月22日 06:00

サムスンを引き離しトップを走っているTSMC(後)NEW!

 前回述べたように、TSMCは米国や日本と緊密な関係を構築するため、果敢な投資を実行しており、その投資額は毎年サムスンの約3倍になっている。半導体はタイミングを見極め...

2021年06月21日 17:49

総予算1兆1,485億円の事業再構築補助金、第1回公募は5150者が採択 「データ・マックスの企業情報検索サービス」も

 6月18日、経済産業省中小企業庁による令和2年度第3次補正予算「事業再構築補助金」について、第1回公募に対する採択結果が公表され、応募のあった17,050者のうち、...

2021年06月21日 17:39

元労働基準監督官・中野公義弁護士の著書『同一労働 同一賃金 裁判所の判断がスグわかる本』プレゼント~先着で5名さまに

 元労働基準監督官という経歴を有する「労働事件のスペシャリスト」中野公義弁護士の著書『同一労働 同一賃金 裁判所の判断がスグわかる本』が6月20日に発刊された...

2021年06月21日 17:28

【好評御礼 応募締め切り】『福岡市長 高島宗一郎の日本を最速で変える方法』

 福岡市長・高島宗一郎氏の2冊目の著書『福岡市長 高島宗一郎の日本を最速で変える方法』が発売された。これを受け、NetIB Newsでは読者にプレゼントすることをお伝...

2021年06月21日 17:23

【九州FG】「遺言代役特約」付きの代理人指定金銭信託発売へ 傘下の肥銀と鹿銀

 肥後銀行と鹿児島銀行は6月21日、全国の地方銀行では初めて契約者の希望に応じて「遺言代役特約」を選べる金銭信託商品「代理人指定信託」を、両行の全営業支店で発売する...

2021年06月21日 17:14

アビスパ、わずかにおよばず連敗 福岡1‐2神戸

 サッカーJ1リーグのアビスパ福岡は19日、ホームのベスト電器スタジアムにヴィッセル神戸を迎えて第18節の試合を行った...

2021年06月21日 16:43

2050年代を見据えた福岡のグランドデザイン構想(30)~新福岡空港島(案)の配置による高さ制限の緩和

 これまでの検討内容を踏まえて新空港島を配置すると、下の図のようになる...

2021年06月21日 16:20

市民体育館解体工事、占部JVが落札

 福岡市発注の「市民体育館第1工区解体工事」を、占部建設(株)を代表とする占部・妹尾・藤田JVが2億4,631万2,000円(税別)で落札した...

pagetop