2024年04月23日( 火 )

ダイバーシティのまち 住吉・美野島がたどってきた歴史(4)

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近代
対岸の遊郭誕生と蓑島駅周辺の工業地帯化

大型マンションが林立する美野島4丁目南エリアのリバーサイド
大型マンションが林立する美野島4丁目南エリアのリバーサイド

 明治期になると、1889(明治22)年4月の町村制施行によって、住吉村は東中洲の一部を除いた春吉村と合併し、「那珂郡住吉村」となった。その後、96年2月に那珂郡が御笠郡および席田郡と合併して「筑紫郡」となり、1911(明治44)年6月には町制施行によって住吉村が「住吉町」へと変更。22(大正11)年6月には福岡市に編入されることになる。この間、住吉・美野島エリアでは、97年2月に現在のキャナルシティ博多の場所に「博多絹綿紡績工場」が開業(02年12月に鐘ヶ淵紡績(後のカネボウ(株))博多工場へ)するほか、08年9月には博多電灯(株)の住吉発電所が紡績工場のすぐ南側に開業するなど、とくに住吉神社の北西側の那珂川との間で都市化が進んでいった。

 なお、89年12月に九州初の鉄道として博多~千歳川仮停車場間が開業し、このときに住吉神社のすぐ東側をかすめるようなかたちで鉄道線路(現在の「こくてつ通り」にあたる)が敷設されているが、住吉・美野島エリアに駅などはなく、こちらの沿線ではとくに開発は進まなかったようだ。

 そうした近代化にともなう都市化とは別に、とある要因で町の様子が変化していくことになるのだが、それが那珂川を挟んで対岸にあたる清川エリアへの遊郭移転だ。

 もともと福岡における遊郭街は、初代福岡藩主・黒田長政によってつくられた「柳町遊郭」として現在の博多区下呉服町にあった。だが、1886年に帝国大学令が公布されたことで九州に帝国大学を設置しようという機運が高まり、その設置場所として、御笠川の対岸にあたる千代エリアが選定されると、「帝国大学のすぐ近くに遊郭があるのは、勉学の妨げになる。けしからん!」という意見が噴出。そこで、当時の福岡県知事が遊郭の移転を約束したことで帝国大学の設置が決定し、1903年4月に「京都帝国大学福岡医科大学」(現在の九州大学医学部)が設置され、11年1月には九州帝国大学が創立された。その一方で、行政による強制移転が行われることになった柳町遊郭は、10年1月に筑紫郡住吉村高畑(現在の中央区清川)に移転。新たに「新柳町」として誕生した。

 最盛期は定かではないが、30(昭和5)年発行の「全国遊廓案内」によれば、貸座敷約40軒が軒を連ね、娼妓約500人がおり、長崎・丸山(長崎市)や熊本・二本木(熊本市西区)と並んで、新柳町遊郭は九州でも指折りの歓楽街だったようだ。

昭和の風情を色濃く残す「美野島商店街」
昭和の風情を色濃く残す「美野島商店街」
Modern-Palazzo博多Prost
(モダンプロジェ)

 美野島で5棟目のマンションを計画中の(株)モダンプロジェ・別府大力社長は、美野島の特徴について次のように話す。
 「徒歩圏に多種多様な飲食店やスーパーマーケット、ホームセンターなど、生活に必要なお店がそろっている。また、15分あれば自転車で天神に行くことも可能で、博多駅なら10分かからずに行ける」。

 同社は、博多駅南エリアも含めれば7棟の供給実績(21年12月時点)がある。現在、美野島で計画中の物件は、家賃は抑えながらもロフト付きのマンションとなる予定。博多駅南では、メゾネットタイプのファミリー向けのマンション計画もあるという。学生向け、ウィークリー・マンスリーマンションや法人向け社宅など幅広く取り扱う同社ならではの企画といえるだろう。

 「いくら魅力的なマンションといえど、入居者から求められるものでなければ意味がない」(別府社長)という同社の物件は、すべての物件で「敷金・礼金ゼロ」「退去時の清掃費定額」といった初期費用がかからない仕組みを採用。このような「わかりやすい契約」が、入居者から好評を得ているようだ。

(つづく)

【坂田 憲治】

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