わらび座ミュージカル「北斎マンガ」特設ページ
【八ッ場ダムを考える】群馬県は水没住民と どう向き合ってきたのか?(後)
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2021年03月10日 07:00

【八ッ場ダムを考える】群馬県は水没住民と どう向き合ってきたのか?(後)

 国直轄ダムの八ッ場ダムであるが、水没自治体である長野原町、その住民との交渉などを実質的に担ってきたのは、ダム受益者でもある群馬県だった。県は1993年、水没住民やダム周辺住民の生活再建や地域振興を目的に、出先機関である八ッ場ダム水源地域対策事務所を設置。現在も引き続き出先機関として業務を継続している。群馬県は、水没住民とどう向き合ってきたのか。同事務所に取材した。

継続的な中止撤回活動を展開

 ――2009年、当時の国交相がダム建設中止を表明した際、どういう思いだったのか。

 事務所 09年9月に、八ッ場ダム本体工事の契約手続き段階にあった八ッ場ダムは、当時の国土交通大臣により、一方的に「建設中止」が表明された。

 その後、再検証を行うなど、東京都知事や埼玉県知事の声かけのもと、関係する1都5県知事は速やかに連携した。また、都県知事による「現地調査」や「地元住民との意見交換会」、さらに「国土交通大臣との意見交換会」を行うなど、継続して中止撤回活動を行ってきた。

 1都5県知事が、全員そろって課題解決に取り組んだ例はほとんどないと思われるが、地元を抱える群馬県にとっては大変心強く、関係議員を含め一致団結した中止撤回活動が、ダム事業継続へ大きく貢献したものと感謝している。

 官房長官裁定などいくつかの条件もあり、結果としてダム本体の工事発注(14年)が5年遅れることとなった。反対から賛成へと苦渋の選択によってダムを受け入れた地元の皆さんにとって、5年もの間、先行きの見えない不安のなかで翻弄されたに過ぎず、自らの生活設計を大きく見直さざるを得ない状況となってしまったことについて、県としても申し訳ない気持ちでいっぱいである。

いかに観光客を呼び込めるかが課題

 ――八ッ場ダム関連の県事業にはどのようなものがあるのか。

 事務所 生活再建事業は、ダム補償事業、水特事業(水源地域対策特別措置法に基づく事業)、基金事業(利根川荒川水源地域対策基金に基づく事業)により実施してきた。水特事業のうちの県事業は、国県道7路線、砂防6渓流、治山1カ所。国と県の基本協定などにより、国が行う代替地造成と一体的に施工すべき事業は、国で施工するなど連携して実施してきた。

 また、町道や林道および下水道事業、スポーツレクリエ-ション施設事業など多種にわたる町事業は、町の行政負担増の軽減を図るため、県が受託し施工するとともに、土地改良に対する技術的支援を行ってきた。さらに、基金事業においても、各地区の地域振興施設の整備に対する支援を行ってきた。

 ――ダム関連観光振興はどうなっているのか。

 事務所 一般的に、ダムの建設地は、山間部の行き止まり地であることが多いが、八ッ場ダムは背後地に観光地として有名な「草津温泉」や「万座温泉」「北軽井沢」を抱えていることもあり、ダム周辺地域には多くの観光客が訪れている。

 ダム完成により、生活再建を本格的にスタートさせている地元住民が、直接、施設の運営に携わるなど、観光誘客による地域の振興は生活再建そのものである。このため、ダム周辺地域を訪れる多くの観光客をいかに呼び込めるかが課題である。

 また地元では、八ッ場ダムの治水や利水の面で新たに結ばれた下流都県の皆さんとの「上下流交流」を望む声もあり、八ッ場ダムを活用した「学びの場」を提供するべく、「水源地域ビジョン」に位置づけ、地元、国、観光関係団体などとともに県も参加し、上下流交流事業を推進していく予定である。

 県としては、まずはより多くの方に八ッ場地域のことを知ってもらい、年間を通して訪れていただくため、県の動画・放送スタジオ「tsulunos」を活用して、PR動画「グンマ×ヤンバー」を制作・配信し、八ッ場地域の魅力を伝える取り組みを独自に開始したところである。引き続き、観光PRのための情報発信に努めていきたい。

八ツ場ダム(写真提供:国土交通省)

(了)

【大石 恭正】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年05月06日 07:00

【特別対談】ピエトロ新工場を起点に、賑わい&活力を古賀市全域へ――(後)NEW!

 『この地区にある「古賀グリーンパーク」周辺ではもともと、道の駅の整備に向けての調査・検討を行ったうえで、19年8月末に道の駅の整備は行わないという決断をしました。と...

2021年05月06日 07:00

【熊本】暮らしに付加価値を、ミリーヴグループが提案する「よりよい住まい」NEW!

 『15年以上前になりますが、ミリーヴグループ(当時は明和グループ)各社が宅建業許可を取得し、不動産売買の仲介を行っていた時期があります。グループの中核企業である(株...

2021年05月06日 07:00

熊本トップクラスの管理戸数、豊かなまちづくりに貢献するコスギ不動産NEW!

 『私の叔父が不動産売買を目的に小杉不動産を創業したのが、当社の始まりです。その後、当時熊本県警に勤めていた父が退職後に合流し、法人化をはたしました。同時に、売買中心...

2021年05月06日 07:00

【熊本】城下町の面影残す中心市街地、九州第3位・熊本市の今昔――(5)NEW!

 戦後、熊本市では戦災復興計画基本方針に基づいて、恒久的復興計画を策定した。これは、都市機能の向上や衛生面および都市美の増進など、近代都市としての形態を整えながら急速...

2021年05月06日 07:00

大西一史・熊本市長に聞く、ポスト震災まちづくりの進捗(4)NEW!

 『昔の熊本駅周辺は、線路によって東西に分断されていたエリアでした。とくに新幹線口周辺は、人の行き来がない住宅地でした。県が事業主体となった連続立体交差事業が18年に...

2021年05月05日 08:00

コロナ拡大後に「自宅で食事を食べる回数」が増えた人は35.5%~農水省の調査

 農林水産省がこのほど公表した2020年度「食育に関する意識調査」結果から、新型コロナウイルス感染症の拡大前と変化した点について、「自宅で食事を食べる回数」の増加を挙...

2021年05月05日 08:00

西鉄「パークサンリヤン大橋」耐震強度問題~仲盛昭二氏、弁護士懲戒請求を提出!(7)

 前回に続き、原告側弁護士からの質問に対する仲盛氏の回答を以下に紹介する...

2021年05月05日 07:00

【特別対談】ピエトロ新工場を起点に、賑わい&活力を古賀市全域へ――(前)

 『当社では現在、古賀市の食品加工団地内に3つの工場を構え、ここですべての製品の製造を行っています。一番新しい第三工場は昨年竣工したばかりなのでまだ大丈夫ですが、第一...

2021年05月05日 07:00

【熊本】城下町の面影残す中心市街地、九州第3位・熊本市の今昔――(4)

 1891年7月には、九州鉄道の高瀬(現・玉名駅)~春日(現・熊本駅)間が開通。このとき、植木駅、池田駅(現・上熊本駅)も同時に開業している。当初の計画では、中心地に...

2021年05月04日 08:00

九大と丸紅、医療・ヘルスケア分野などで協定締結

 九州大学と丸紅(株)は「医療・ヘルスケア」「新技術・新素材」などの分野で「連携・協力の推進に関する基本協定書」を締結した...

pagetop