2024年05月23日( 木 )

木材の可能性を探る国産材の利用でSDGs実現へ

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国産材供給の現状

木材需要量の推移
木材需要量の推移

 木材の総需要量(2018年)は前年比0.8%増の8,248万m3――内訳は製材用材31.2%、合板用材13.3%、パルプ・チップ用材38.8%、燃料材10.9%、その他5.4%(19年森林・林業白書、以下、同)。製材用材の需要(18年)は前年比2.5%減の2,571万m3で、柱や梁など、その8割が建築用途となる。木造住宅着工戸数の減少により、ピーク時(1973年)の約4割まで減少し、08年以降はほぼ横ばいだ。合板用材の需要(18年)も、08年以降はほぼ横ばいで推移。前年比3.1%増の1,100万m3で、住宅の壁・床・屋根の下地材、フロア台板、コンクリート型枠などに利用される。

2018年の木材需要の構成
2018年の木材需要の構成

 国産材供給量(18年)は、合板原料や木質バイオマス発電施設の燃料材としての利用が進み、08年の水準を上回る3,020万m3(前年比1.8%増)と回復傾向にある。しかし、木材需要全体では、外国産材63%、国産材37%と国産材利用の割合は低い。国産材の用材需要量は2,368万m3(前年比1.6%増)で、内訳は製材用材1,256万m3、合板用材449万m3、パルプ・チップ用材509万m3。燃料材(非用材)は625万m3(前年比3.5%増)。製材用材で使用されている木はスギ・ヒノキが約8割、合板用材はスギ・カラマツが約8割だ。

 一方で、木材輸入量(18年)は前年比0.2%増の5,228万m3で、1996年をピークに減少傾向だ。内訳は丸太での輸入が1割弱、木材パルプ・木材チップ51%(2,692万m3)、製材品(板状の木材)18%(942万m3)、合板など11%(572万m3)、その他6%(291万m3)。主な産地は、丸太が米国、カナダ、ニュージーランド、製材がカナダ、フィンランド、ロシア、合板などがマレーシア、インドネシア、中国となっている。

林野庁の取り組み

 林野庁は国産材利用を促進するため、暮らしのなかに木材製品を取り入れる「木づかい運動」、身近なものを木に変える「ウッドチェンジ」、木材や木製品との触れ合いを通じて木材への親しみを深め、良さや利用の意義を学ぶ「木育」、住宅や公共施設、公共土木工事などへの国産材利用を行っている。また、木材利用を広げるプラットフォームづくりとして、木材利用の課題を解決し普及の在り方を建設、設計事業者や施主企業が協議する「ウッド・チェンジ・ネットワーク」を開催してきた。

国産材の利点と課題

 国産材を利用することで、森林の整備や保全を行いながら木材を再生産して森林資源を循環させることが可能となり、温室効果ガスであるCO₂排出量削減により「カーボンニュートラル」を実現できる。また、間伐を行い、よく手入れがなされた森林では、土砂災害を防ぐ機能が高まり、山崩れが起きにくくなる。

 ヒノキには腐りにくい性質があるなど、国産材は高温多湿の日本の気候で耐久性に優れているが、丸太価格は、安価な輸入材との競合により1980年をピークとして、スギがピーク時の約3分の1(1万3,300円/m3)、ヒノキが約4分の1(1万7,600円/m3)に下落した。そのため、川上の森林所有者、素材生産業者が収益化しにくくなり、供給体制が弱まった。木材・木製品製造業(家具を除く)の従事者数は年々減少し、15年に11.8万人となっていることも踏まえ、国産材のシェアを高めるには木材流通における課題解決が欠かせない。

 国産材の普及拡大に向けて、「国産材を利用した住宅に対する固定資産税の減税、住宅ローン補助などの措置を実施すれば実需につながるのではないか」「国の補助がある施設や国でつくる施設で使う木材は国産材の利用を義務付けてはどうか」という意見(※)も挙がっているが、世界貿易機関(WTO)協定上、外国産材と国産材を差別できない決まりがあるため、国の対応としては慎重にならざるを得ないようだ。

※「木材産業の体制整備及び国産材の利用拡大に向けた基本方針の骨子(案)に対する意見などへの対応」

SDGsの実現にも

 国産材の利用推進は、SDGs(持続可能な開発目標)にも生かされる。国産材利用により、持続可能な森林の経営(目標15)ができて、持続可能な生産・消費形態を確保する(目標12)。手入れのなされた森林は豊かな水を育み(目標6)、豊かな海を保ち(目標14)、CO₂を貯めて(目標13)、山の災害を防止する(目標11)。建築で木材を利用すると炭素の貯蔵(目標13)ができて、他の材料に比べて製造や加工に要するエネルギーが少ない(目標7)。木質バイオマスとして利用する場合は再生可能エネルギー(目標7)となり、気候変動対策として化石燃料の使用を減らすことができる(目標13)。化石燃料由来のプラスチックの代替となる木材製品をつくることで(目標9)、海洋環境の保全(目標14)を推進する。

 木材を循環利用することで、より豊かな社会が実現できるのだ。

我が国の森林の環境利用とSDGs との関係

【石井 ゆかり】

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