【球磨川水害から1年】「流水型ダム」が球磨川治水の要(中)
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治水効果はダムが最も大きい
あくまで個人的な意見になるが、緊急治水対策プロジェクトのさまざまなメニューのなかで、最も重要であり、最も象徴的な対策は、流水型ダムだとシンプルに考えている。なぜなら、他ならぬ国土交通省が「川辺川ダムが存在した場合、すべての被害を防ぐことはできないが、浸水面積や浸水深は減少すると推定される」と説明していたからだ。逆にいえば、ダムが完成しない限り、既往水害に照らして、水害リスクは残り続けるということになる。ダムの治水効果はそれだけ大きいからだ。
そうだとすると、「なぜダム以外の治水対策が必要なのか」という話になるわけだが、これもシンプルに、ダムが完成するまで時間がかかるからだと考えている。もちろん、本省から「流域治水プロジェクトをやれ」と言われたこともある。そもそも流域治水プロジェクトがスタートしたきっかけが、球磨川の水害だったからだ。
基本方針の見直しもスタート
7月上旬には、2007年に策定された球磨川水系河川整備基本方針の見直し作業が始まった。流水型ダムをはじめ、流域治水プロジェクトで取りまとめられた一連の流域対策が、どのようなカタチで基本方針に盛り込まれるかが、議論のポイントの1つだと思われる。いわゆる上下流バランスの設定も注目される。個人的には、流域治水プロジェクトに示されたすべての対策が実現すると、「過大な治水対策」になりはしないかという疑問がある。その辺がどう整理されるかに関心をもっている。
基本方針見直しを審議する、社会資本整備審議会の会合をリモート取材した。100人を超える傍聴者がいて、注目度の高さをうかがわせたが、最初なので顔合わせ、タマ出しといった感じで、見直しに関する具体的な議論はとくに出なかった。大学や研究機関の専門家が委員として居並ぶなか、熊本県知事が臨時委員として加わっていた。違和感しかなかった。
今年度はダムのスペック作成がメイン
球磨川治水関係の所管所掌については、流域治水プロジェクトや緊急治水対策プロジェクトは八代河川事国道務所、復旧復興工事は八代復興事務所、そして流水型ダムは川辺川ダム砂防事務所という具合に分かれている。それだけ仕事量が多いからだろうが、正直わかりにくい。それはともかく、流水型ダムの建設に向けた本格的な調査検討は、21年度から始まっている。ただ、本当に「本格的」なものが始まるのはまだまだ先の話で、当面は、環境調査、測量調査、ダム諸元の設計などがメインになる。
いつ設計に入るかとか、工事着手はいつで、完成はいつかなどについては、内部的な見通しは当然あるだろうが(なければおかしい)、公式には「今後の見通しはまだ立っていない」(川辺川ダム砂防事務所担当者)という。
流水型ダム諸元検討業務として、ダムの形式や高さなどの基本的なスペックをまとめる作業をコンサルに発注している。「ダムの基本的なことすらまだ決まっていない。まずは丁寧に設計を進めることが大事だ」(同)と話す。
(つづく)
【フリーランスライター・大石 恭正】
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