2024年04月24日( 水 )

【企業研究】セガサミーホールディングスとカジノ 情熱を傾けていたカジノ参入がトーンダウン(中)

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 政府は、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致の申請受付期間を2021年10月1日から22年4月28日までとすることなどを盛り込んだ基本方針を決定した。カジノ誘致に名乗りを上げている自治体は、大阪(夢洲)、神奈川(横浜)、長崎(ハウステンボス)、和歌山(マリーナシティ)、愛知(名古屋)、愛知(常滑)、東京(台場)。神奈川県横浜市の観光地域・ベイブリッジの内側、山下埠頭が有力視されてきた。総合エンターテインメント企業のセガサミーホールディングス(東京都品川区、東証一部)が横浜のIR事業に参画する。

有価証券や資産売却で、最終損益を黒字に

 セガサミーの2021年 3月期連結決算は、売上高は前期比24.2%減の2,777億円、営業利益は76.3%減の65億円、純利益は90.7%減の12億円だった。

 人員削減など構造改革費用など403億円の特別損失を計上したが、サンリオ株の投資有価証券の売却、SEなど固定資産売却による特別利益288億円の特別利益を計上したことに加え、繰延税金資産計上により税金費用が減少、122億円の法人税調整額を計上したことで、最終損益を黒字にする「ヤリクリ決算」だった。

 主要業態では、ホームビデオゲームやダウンロードコンテンツを含むエンタテイメント部門が、巣ごもり需要の効果で、前期比1.7倍の279億円の営業利益を叩き出した。

 しかし、パチスロ・パチンコ部門は苦戦。新型コロナ感染拡大防止によるホール閉鎖が響いた。そのため、パチスロ機の販売台数は前期の12.3万台から3.5万台に、パチンコ機は10.4万台から6.9万台へ激減。106億円の営業赤字(前期は232億円の黒字)に転落した。

セガサミーの主要事業の業績

宮崎のシーガイア、韓国のパラダイスのリゾート事業は赤字が続く

フェニックス・シーガイア・リゾート イメージ 国内のカジノを含むIR参入を目的としたリゾート事業を見てみよう。

 1つは「フェニックス・シーガイア・リゾート」を運営するフェニックスリゾート(株)(宮崎市)。敷地面積251万m2で、主要施設はホテル950室(シェラトン・グランデ・オーシャンリゾートなど3施設)、ゴルフ45ホール(フェニックスカントリークラブなど2施設)、コンベンション約5,500m2(約5,000名収容可能)。従業員数744名。

 コロナ禍で、施設利用者数は、前期の83.9万人から55.2万人に減った。

 もう1つが、韓国の統合型リゾート「パラダイスシティ」を運営する(株)パラダイスセガサミー(韓国仁川広域市)。韓国の(株)パラダイスとの共同事業で、投資金額は約1,567億円。セガサミーの投資額は331億円、持株比率45%。主要施設は、カジノ(テーブルゲーム158台、エレクトリックテーブルゲーム4台62席、スロットマシーン291台)、ホテル711室、コンベンションなど。従業員は1,610名。

 フェニックスリゾートとパラダイスセガサミーのリゾート事業の営業利益は41億円の赤字(前期も36億円の赤字)と赤字経営から脱け出せないでいる。

国内でのカジノを運営のノウハウを取得するため韓国で共同事業

 2017年4月、日本のセガサミーと韓国のカジノ大手パラダイスが共同出資する北東アジア初の統合型リゾート施設が韓国仁川にオープンした。

 訪韓中国人が増え始めた12年、韓国のパラダイスは複合型リゾートを計画。パラダイスの田必立会長が旧知であるセガサミーの里見会長に合弁をもちかけた。パラダイスグループはソウルのウォーカーヒルや釜山、済州でカジノを運営する韓国のカジノの最大手だ。

 日本政府はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)実施法案の国会提出を目指していた。リゾートを基幹産業の1つとして強化に務めるセガサミーにとって、カジノとリゾートをもつ統合型リゾート(IR)は成長戦略に欠かせない。里見会長は、日本でカジノが解禁となったときに備えて、韓国パラダイスとの合弁事業を決断。カジノ運営のノウハウを身につけるため、日本人スタッフを送り込んだ。国内ではIRの本拠地とすべく、宮崎のシーガイアを子会社に組み入れたのである。

 しかし、韓国の韓国カジノは出足からつまずいた。仁川空港の近くにある「パラダイスシティ」は外国人専用のカジノで、中国人観光客を想定していたが、在韓米軍の高度防衛ミサイルTHAAD配備に関連し、2017年3月に中国政府が報復として韓国への団体旅行を禁止したのだ。パラダイスを救ったのは日本人の利用客だった。しかし20年に入ると新型コロナウイルスが直撃。海外からの観光客が蒸発した。

 合弁企業パラダイスセガサミーの21年3月期の決算は、日本円換算で、売上高は前期比62%減の177億円、最終損益は106億円の赤字(前期は22億円の赤字)。カジノ利用者は前の期の38.2万人から17.4万人に落ち込んだ。セガサミーの持分法取り込額は47億円のマイナス。韓国事業への投資が負担になっていた。

(つづく)

【森村 和男】

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