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2021年08月13日 06:00

産地直売、時代の要求と裏事情 規模拡大に立ちはだかる高い壁(中)

我が国のスーパーマーケットの青果売り場はどこも似たり寄ったり。魅力に乏しく、消費者に感動を与えられない。一方、産直もブームとなったものの、リアル店舗を脅かすほどの影響をもてないでいる。産直とリアル店舗が直面している課題を紐解く。

道の駅とスーパーマーケット

 我が国の産直の始まりは1991年にスタートした道の駅である。93年には全国103カ所に施設が設けられた。食事、休憩のほかに農産物の直売所を併設したところ、予想外の人気につながる。それに触発され、農家やJAによる直売所が次々に登場した。

 産直の成長にはもう1つの事情がある。それは生鮮物の独特な流通形態だ。とくに青果物と水産物は特殊で、その流通に小さくない問題を抱える。生産された後、消費者の手に届くまでの鮮度管理と多岐にわたる加工工程だ。

 道の駅が始まったころ、スーパーマーケットの青果売り場はすでに大きな問題を抱えていた。売り場面積に見合わない低い生産性だ。生鮮物に限ったことではないが、売上が大きいほど生産効率が良くなる。逆に売上が小さいと、いかに経費を抑えようと利益は生まれない。

 たとえば、青果物は入荷後、「蘇生庫」といわれる冷蔵庫で冷やし、時には冷水槽でさらに蘇生工程を重ねる。さらに、小分けカットや売り場陳列にも人手がかかる。売り場に残った商品の処理も同じだ。売り場から引き揚げて、再加工や廃棄にかかるコストも小さくない。これに値下げによる利益減が加わる。

 商品1個あたりの平均単価は150円程度で、その値入率はせいぜい30%だから、1商品あたりの利益は50円にも満たない。つまり、3割値下げすれば利益がゼロになり、そこにかかる経費分が赤字になる。

 加えて、1時間あたりの生産金額も問題だ。生鮮食品の商品づくりには結構な手間がかかる。商品によって違うが、1個の商品づくりに3分かければ、1時間あたりの生産個数は20個で売上金額は3,000円。7時間労働で2万円に過ぎない。そのすべてが正価で売れたとしても、1日の1人あたり粗利益は6,000円。1時間あたりで見ると1,000円に満たない。従業者の平均時給を1,000円とすれば、利益のすべてが人件費に消えることになる。

 人件費のほかにも諸々の経費が発生する。消費頻度の高い青果物の価格に消費者は極めて敏感だ。1品の単価が150円を超えると、売れ行きが鈍くなる。経費に見合った利益率を設定すれば売上が落ちる。そうした商品特性が、安くてボリューム感にあふれる理想の売り場づくりを阻む。だから、お客が気軽に手を伸ばせる低単価の少量パック、販売効率の良い品目に絞った売り場、貧弱な陳列量というはなはだ魅力のない売り場を生む。これが今の大方のスーパーの青果売り場だ。感動のない売り場に「わざわざのお客」は来ない。それは精肉や鮮魚も同じだ。

(つづく)
【神戸 彲】

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