2024年04月19日( 金 )

「マッスル倶楽部」をつくって感じたこと(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 運営する「サロン幸福亭ぐるり」(以下「ぐるり」)に「マッスル倶楽部」という少々場違いな同好会を立ちあげた。「ぐるり」は高齢者が集う居場所である。いいにくいが「一丁上がり」に近い人も来る。来亭する高齢者の大半は、自ら努力して何かを成し遂げようとは思わない。残りの人生を仲間とともに楽しく過ごしたいというのが彼らの偽らざる心境だと思う。そこが亭主である私の考えとは大きく違う。「美魔女」は大嫌いだが、「美マッスル」は大好きである。

2カ月で体重4キロ減

 「人生百年時代」というとんでもないお題目の下、当自治体でも「トコろん元気百歳体操」なる筋力アップ運動を採り入れ、各団体に向けて普及活動を展開して4年。活動団体の数も増え、それなりの成果を上げていると聞く。この筋力アップ体操、1本200グラムの鉄の棒をバンドと呼ばれる装置に差し込み(本数を可変可能)、それを手や足に巻いて負荷運動をするというモノ。ただひたすら同じ上下運動を続けるだけの体操なので、正直面白味も何もない。予想通り最盛期15人ほど参加していた高齢者も、3人にまで落ち込む有り様だ。その3人も私がやめないように必死に懇願しての残留である。他地域からきてくれるインストラクターさんに申し訳ないという気持ちからだ。それがここにきて急展開を来したのだ。

 コロナ禍で「ぐるり」の来亭者はほぼゼロ。一番人気のカラオケができないのだから無理もない話。入亭料ゼロ。運営する亭主は頭を抱えるだけだ。そこで発想を少しばかり変えてみた。人気のない「ぐるり」を、自分の仕事場に変えたのだ。外に出す看板に「亭主の時間」という張り紙を出した。私がURから個人的に借りているのだから、何に使おうと自由だ。使用するのは主に午後から夕方の時間帯。執筆に専念する時間、読書の時間、趣味のギターやフルート、リコーダー(これは呼吸の調整と肺活量増大にいい)の練習にあてた。ついでにダンベルとソフト亜鈴を使った簡単な運動にも時間を割いた。すると2カ月後、体重が4キロ減となったのだ。腕っ節も太くなり、たるんだお腹もへこみ(自己評価だが)、毎日やるウォーキングの足取りも軽くなった。このことを負荷体操を続ける3人に話した。途端に目の色が変わった。当然のことだが、負荷体操の効能を事前に聞かされても、それが実感されない限り続けようという気持ちは萎える。それと、関係部署からの一方的な押しつけは私の意向に沿わない。「マッスル倶楽部」はこうして意識的につくった。

 「マッスル倶楽部」のメニューはこうだ。

誤嚥予防体操

(1)「トコろん元気百歳体操」
 手足に負荷をかけた体操。身体全体の筋肉が鍛えられ、トイレ使用時の腰の上下運動。重い物をもったり、速く歩いたり、転ばない身体にする。

(2)「とこしゃん体操」(器具不使用)
 ラジオ体操より部位の鍛錬になり、よりバランスの良い体につくり替える。

(3)「誤嚥予防体操」
 主に顔面や口内の筋力を鍛えることで、誤嚥を予防する。

ダンベル体操(4)「ダンベル体操」
 可変式(重さを自由に変換)ダンベル(ないときはペットボトルで代用。水の量を変えることで可変可能)で部位の筋肉を鍛える。このことでダイエットに効果あり。筋肉を鍛えると同時に、余分な脂肪を燃やしやすくする身体に変身。

 考案した鈴木正成(筑波大学体育科学系教授:当時)によると、「エネルギーをもっとも燃焼させる筋肉を鍛えて、基礎代謝を高めるから。車にたとえればエンジンが大きくなったのと同じで、ガソリン(脂肪)を多く必要とする状態。体をこういう体質に改善できると、食べても太りにくくなるし、睡眠中も筋肉が体脂肪を燃焼してくれるようになります」(出典雑誌不明)という。ただし、オーバーワークと睡眠不足、極端な食事制限は逆に体を壊すことにもなりかねない。近日中に、理学療法士を招いて話を聞くことにしている。

(つづく)


<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)『「陸軍分列行進曲」とふたつの「君が代」』(同)など。

(第104回・後)
(第105回・後)

関連記事