【唐津街道中膝栗毛/後編】景観保存と開発の狭間で揺れ動く箱崎~小倉の旧宿場町(後)
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小倉(北九州市小倉北区)
現在は北九州市の中心地となった、街道の起点となる城下町
小倉については「I・Bまちづくりvol.37」(21年6月末発刊)でも触れたが、江戸期には小倉藩・細川家および小笠原家の統治下で、小倉城の城下町としてかなりの賑わいを見せていたとされる。紫川に架かる「常盤橋」を起点に唐津街道や長崎街道、中津街道などの街道や往還が延びており、「九州のすべての道は小倉に通じる」とまでいわれていた。また、現在の小倉駅南側の京町や、西小倉駅やリバーウォーク北九州などがある室町には宿屋が集まり、当時の小倉藩の特産品であった小倉織などを取り扱う商店なども軒を連ねていたようだ。城下町では城を中心とした周囲に家来の武士らが住み、さらにその周りに町人街が形成。魚の荷揚市場があった「魚町」や、鍛冶屋が多く住んでいた「鍛冶町」、馬で荷物を運搬する輸送業者が多くいた「馬借町」、ほかに「船頭町」や「米町」などの職業ごとに分けられた当時の町名は、今なお小倉の街中の地名として使われている。なお、小倉城のすぐ北西あたりで長崎街道と唐津街道が分岐していたとされるが、沿岸部を通る唐津街道のほうは都市開発がとくに進んでおり、かつての街道の遺構はあまり残っていないようだ。
現在では、ターミナル駅である小倉駅のほか、小倉城に隣接する北九州市役所およびその南側の小倉北区役所などの行政関連施設などを中心として中心市街地が形成。小倉城に隣接するリバーウォーク北九州などの大型商業施設から、「北九州の台所」である旦過市場、魚町銀天街をはじめとする各商店街などの商業機能も集積しており、名実ともに北九州市の政治・経済・文化の中心地となっている。住居ニーズも相応に高く、(株)九州三共による「リヴィエールベイステーション小倉」(51戸、22年7月竣工予定)や第一交通産業(株)による「グランドパレス小倉小文字通り」(総戸数51戸、22年11月末竣工予定)など、複数のマンション開発が進んでいる。
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「唐津街道中膝栗毛」と称して前編・後編の2回に分け、唐津街道の旧宿場町の歴史や現在の様子などを追ってきた。古い街並みなどの旧宿場町の面影の保存・活用に努めているところがある一方で、都市開発あるいは衰退によって、すでに失われてしまっているところもある。歴史的な景観保存と都市開発という、ある意味で二律背反な課題に対して、それぞれのエリアがどのような答えを導き出していくべきか――。これは今回取り上げたような旧宿場町のみならず、さまざまな地域が都市発展の過程で直面せざるを得ない、共通の課題だろう。
(了)
【坂田 憲治】
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