福岡都心再生サミット 2021開催、市民がより幸福を感じるまちへ
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企業の「ウェルビーイング経営」
事業におけるウェルビーイング実現の取り組みについて、イニシアチブ議長・岡島氏は、「ウェルビーイング経営とは、事業を通じて株主、従業員、地域社会、将来世代を含めたすべてのステークホルダーを対象とし、自社の成長と持続可能な社会の実現の両方を目指して取り組んでいくもの」との概念を説明。企業がウェルビーイングに取り組む背景には、第1に株主の意向が強く反映される行き過ぎた資本主義に限界が感じられること、第2にコロナ禍で職場が家庭に入り込んできたこと、第3に社員、とくにミレニアル世代・Z世代の幸福感が変化していることの3点を指摘する。
そのうえで、企業経営にとっては社員という人的資本をいかに活用するかが問われるようになっており、「企業が社会的存在意義を明確にし、従業員から選ばれる企業にならないと、持続的な存続・発展が難しくなる」と岡島氏は指摘する。
岡島氏はウェルビーイングの取り込みの例として、丸井グループと味の素グループを紹介した。丸井は、2026年までの中期経営計画にウェルビーイングを取り入れており、同社の青井浩社長が「中期経営計画にどれだけ数字を盛り込んでもワクワクせず、それよりも未来がどう良くなっていくのかなどを盛り込もう」と語ったことを紹介した。味の素は、自社のことだけではなく未来も考えるというスタンスで、30年までに10億人の健康寿命を伸ばすことを掲げて、地域と協力して健康寿命の延伸に取り組んでいると紹介した。
岡島氏は、現在の課題として、ウェルビーイングな社会の設計、実現のために、国、地域、アカデミズム、企業が一体となったエコシステムの必要性を提唱した。
高島市長は岡島氏の話を受け、ウェルビーイングがCSRとしてではなく、経営の真ん中において進める段階にまでなっていることへの驚きを吐露した。さらに、福岡市が毎年実施している市民意識調査において、「住みやすい」との回答が今年度まで9年連続で95%を超えている一方で、リバブル・ウェルビーイング・シティ客観指標((一社)スマートシティ・インスティテュート)によると、福岡市が政令指定都市20市のうち17番目と低い位置づけであることを紹介。今後は、市民の住みやすさの実感など主観的な指標がこういった調査項目に加わることで、福岡の良さは際立っていくだろうとの見通しを示した。石川氏も、最も重要な指標は主観的な実感であると同意する。
ウェルビーイングを可視化
石川氏は、主観的なウェルビーイング関連のデータを作成し取り入れていくべきであり、その主体を基軸に置くべきとして2つの提案を行った。1つ目は学校、とくに生徒および教師のウェルビーイングに関するものだ。石川氏は、学校を外から見ると、進学や部活動の実績など客観的なものしかわからないが、一番肝心なのは生徒および教師のウェルビーイングであるとして、生徒および教師のウェルビーイングを測定して状況を把握することを提案。それにより、学び合うことが実現できるとの期待を表明した。
2つ目は、働く人のウェルビーイングに関するもの。石川氏は、企業が「社員にこうなって欲しい」と定義し、測定して公開することを提案する。定義の内容や仕方は異なってよく、併せて、実施企業へのウェルビーイング認証制度を福岡市が金融機関と連携して創設することを提案。それによりウェルビーイングが企業の格付け、融資を行う際の情報になっていくとした。石川氏が目指すのは、学校や企業のウェルビーイングに関する可視化だ。
岡島氏は可視化について、働く人の観点からも意義を付け加えた。ミレニアル世代・Z世代たちが企業で働いていて楽しく感じられ、それを数値化するとともに、彼らが周囲の人を誘うような状況を実現できれば、福岡市は今後も魅力あるまちとして人口を増やしていくことができるという。
高島市長は、現状では社員、生徒および教師にどのような指標を設けるのが良いのかという問題があるとした。また、学校においては生徒に関する指標を公開することへの抵抗感など、課題はあると続けた。ただし、企業にとっては、「そうした指標が設けられればウェルビーイングに取り組みやすいのでは」と、その意義を評価。福岡でも、過去に認証制度を設けた実績があり、検討したいと表明した。
最後に「福岡市として、地域の皆と一緒になって何ができるのか、FDCとして取り組んでいく」(高島市長)と決意表明し、トークセッションを締めくくった。
【茅野 雅弘】
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