2022年01月20日( 木 )
by データ・マックス

地方路線バスの危機脱出へ向けた模索-長電バスの事例を基に考察する(後)

運輸評論家 堀内 重人 氏

バス イメージ    地方鉄道では、話題づくりのため、著名なデザイナーに車体や車内の内装デザインを依頼する傾向にあるが、デザイン料だけで2,000万円もの高額な請求される割に、地元が冷めてしまう傾向にある。

 その点、地元の高校の美術部の生徒に依頼すれば、5万円程度のデザイン料で引き受けてくれるだけでなく、生徒がデザインしたバスが運行を開始すると、学校新聞で取り上げられ、宣伝と教育効果も高い。また美術部の生徒の友人も、各家庭で話題を振りまいてくれると思われ、平素は自家用車しか利用しない人も、「一度は路線バスを利用してみよう」という動機がめばえるだろう。

 その次の段階として、バスマップを作製する必要がある。筆者も、滋賀県彦根市でバスマップの作製に携わったが、バス事業者が作成したバスマップは、デフォルメされ過ぎており、バス利用を考える人には、方角や距離などがわかりづらいため、利用しようとは思わないかもしれない。

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 やはり事業者主導や行政主導、有識者主導では駄目であり、事業者、行政、有識者に加え、地域住民の参加が不可欠である。地域住民が参加するといっても、老若男女さまざまな人が加わることで、さまざまな視点から意見が出る。

 学生からは通学時や帰宅時のバスの利便性および運賃に対しての意見が出るだろう。若い主婦であれば、子どもに予防接種を受けさせるためにバスが必要なことがあるかもしれない。筆者が携わった地域だけの事情かもしれないが、高齢者は病院だけでなく、地元の大手スーパーマーケットのタイムサービスを利用するため、「路線バスが必要だ」という意見もあった。

 各年代や性別により、路線バスに対する使い方や要望に大きな違いがあった。路線バスの需要が減って困っている地域が多数あることから、このような地道な取り組みが必要だといえる。

 話を路線バスに戻すが、土日・祝日には利用者が減少してしまい、1日当たり3往復まで減便すると、クラブ活動で高校へ登校せざるを得ない生徒は、家族によるマイカー送迎となってしまい、道路渋滞を激化させるだけでなく、交通事故を増加させるリスクがある。

 そこで通勤定期券を所有している人は、土日・祝日に限り、本人も含め家族4名まで乗車可能として、路線バスの運転本数を極力、維持するようにしたい。

 バス事業者は、子どもなどの運賃収入が得られなくなり「減収」になると感じるかもしれないが、道路渋滞や交通事故減少に繋がるため、県や各自治体が、バス事業者に対し、減収分を補助してもらうようにすれば良いだろう。

 家族がバスで出かけてくれれば、街なかで食事や買い物をするだけでなく、飲酒もできるため、地域経済の活性化にも繋がり、減収分の補てんよりも高い経済効果をもたらすだろう。

 長電バスの事例は、決して長野県内だけの問題ではなく、全国の路線バス事業者にとっての問題でもある。コロナ禍を「未曽有の危機」として捉えるだけでなく、「チャンスの仮の姿」というかたちで発想を変え、路線バスの存在を知ってもらい、従来以上に地域密着のサービスを検討することで、路線バスの活性化を図ってほしい。

 そうした取り組みをしないと、アフターコロナになって、バス事業者に運転手が集まらず、バスを走らせることができなくなる危険性がある。コロナ禍の今こそ、バス事業の活性化を検討する必要があるといえるだろう。

(了)

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