2024年05月23日( 木 )

「フル規格化」へ課題も、西九州ルートが今秋一部開業(後)

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【長崎駅】新幹線を反転のチャンスへ

 21年11月公表の20年国勢調査で、長崎市の人口は40万9,000人、県は131万人。15年調査比で市は2万人以上、県は6万人以上の人口が減少したこととなる。減少数で市は全国ワースト3位、県はワースト7位という状況だ。県も市も、新幹線開業は反転攻勢の絶好の機会と意気込む。市勢浮揚の「呼び水」となる再開発は大きく2つ。1つは長崎駅、もう1つは三菱重工業長崎造船所の幸町(さいわいまち)工場跡地だ。

 1つ目の長崎駅と周辺地区は、JR九州と市が主体で取り組む。JR九州が21年3月発表した計画では、新駅ビルは地上13階建で高さは博多駅並みの60m。延べ床面積は10万2,000m2。1階から4階(5階の一部含む)は商業施設、5階と6階はレンタルオフィス、7階から13階は米大手マリオット・インターナショナルの「長崎マリオットホテル」(200室)が入る予定となっている。駐車場は既存分と合わせ1,500台分を確保する。

 JR九州は、新駅ビルの全面開業を25年度から23年秋に前倒しした。今年3月には駅高架下に、飲食店や土産物店など約50店からなる「長崎街道かもめ市場」がオープンする。飲食店やシネコンなど約130店が入る駅直結の既存施設・アミュプラザ長崎と合わせ、新駅ビル完成後は九州最大級の商業集積エリアとなる。駅西口では21年11月に長崎市のMICE施設・出島メッセ長崎が開業した。イベント・展示ホール3,800m2とコンベンションホール2,700m2を備える。福岡市が23年のG7サミット誘致を発表したのを機に、長崎市もサミットに付随する関係閣僚会合の誘致を計画しており、隣接地に同時開業したヒルトン長崎と連携する。

 2つ目の三菱重工業長崎造船所の幸町工場跡地は、長崎駅から北に約1km進んだところにあり、敷地面積は6.8haにおよぶ。三菱重工業が跡地活用事業者を募り、通販大手ジャパネットホールディングス(HD)、米系大手総合不動産JLL日本法人、竹中工務店の3社連合が優先交渉権を獲得。ジャパネットHD傘下のリージョナル・クリエーション長崎が「長崎スタジアムシティプロジェクト」を進めている。

 計画では、2万人収容のサッカー専用スタジアムや5,000人収容のアリーナを軸に、ホテル、ショッピングセンター、タワーマンション、オフィスビルなどを配置する。「新しい街から新しい長崎の風景をつくり出す」のスローガンを掲げ、1月から順次着工し、24年の完成を目指す。

長崎市のまちづくりの核になる長崎駅周辺。
手前(南側)から国道202号線、MICE施設「出島メッセ長崎」、
「ヒルトン長崎」。右手(東側)は新しい長崎駅。

未開通区間に横たわる難問

 13年度以降、整備新幹線の建設財源は、既設新幹線(東海道、山陽、上越、東北・盛岡以南、九州・鹿児島、北海道)を経営するJR各社が、鉄道・運輸機構に支払う新幹線の貸付料と公共事業費で賄う仕組みになった。

 それでも財源確保のメドが立たず、北海道・新函館北斗~札幌、北陸・金沢~敦賀、武雄温泉~長崎は完成後の貸付料まで前借して工事を進めているのが実態だ。このため、敦賀~新大阪、新鳥栖~武雄温泉は、新しく財源を確保する枠組みをつくらない限り、着工できない。

 JR各社が支払う貸付料は、「受益の範囲」を限度に設定される。支払期間は30年。「受益の範囲」は、新幹線を整備する場合の収益と整備しない場合の収益の差で計算する。新幹線は在来線より収益が期待できるというのが前提となっているが、コロナ禍の影響もあり、それも不透明だ。

 さらに、その状況に佐賀県が立ち塞がる。全国新幹線網の一翼を担う博多~長崎の開業が遅れるほど、部分開業区間が“孤島状態”になり、JR九州の経営をも左右しかねないとの見方がある。事実、同社の青柳俊彦社長は「武雄温泉駅の対面乗り換えが長期化すれば、経営を圧迫する」と明かす。

 これに対して佐賀県は、「新鳥栖~武雄温泉のフル規格整備で在来特急が廃止されると利便性が低下する」として、時速200kmの低速FGT導入を提案するが、国交省やJR九州がこれに応じる気配はない。ここにきて、在来特急の維持、もしくは在来特急に代わる「急行」「準急」といった新形態の電車投入を条件に、フル規格整備を進めるという案も浮かんできている。建設財源の枠組みづくりが先か、佐賀県の同意取り付けを急ぐのか。どちらも解決の糸口をつかむには、なお時間がかかるとみられる。

(了)

【南里 秀之】

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