2024年04月27日( 土 )

【JR九州】「ふたつ星4047」で西九州の海めぐり 新D&Sトレイン(前)

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運輸評論家 堀内 重人 氏

 2022年秋に西九州新幹線の武雄温泉~長崎間が部分開業することを機に、JR九州は新たな観光客の誘致や在来線の活性化を目的に、「ふたつ星4047」という新たなD&S(デザイン&ストーリー)トレインを導入する。

JR九州に新たなD&Sトレイン誕生

はやとの風 イメージ    D&Sトレインとして、新幹線や在来線の特急列車から姿を消しつつあるビュッフェや車内販売などのサービスを提供する。

 「ふたつ星4047 」は、主に土日・祝日を中心に運転する臨時の特急列車である。JR九州では各線区の魅力を向上させるため、初期にはジョイフルトレインを導入し、1990年代に入りD&Sトレインを導入するようになった。JR九州としては、昨年10月登場の「36ぷらす3」以来のD&Sトレイン(第13弾)となる。

 「ふたつ星4047」の概要は昨年10月27日に発表された。日豊本線・肥薩線の鹿児島中央~吉松間で運転されていた特急「はやとの風」に使用のキハ47形・キハ147系気動車と、肥薩線の吉松~人吉間で使用されていた「いさぶろう・しんぺい」の予備車であるキハ147形気動車を種車にし、それを「ふたつ星4047」用に改造して転用される。

 既存の車両を改造して投入する理由として、JR九州の経営基盤が脆弱であることが挙げられる。特急用の車両の場合、新車を導入するとなれば、1両当たり1億5,000万円~2億円程度もかかる。既存の車両のマイナーチェンジであれば、改造費は1両当たり1,000万円強に抑えられる。また、土日・祝日などにしか運転しない臨時特急に新車を導入すると、費用対効果が悪くなるなどの理由からである。

「ふたつ星4047」のコンセプト

 この列車のコンセプトは、「西九州の海めぐり列車」。列車名は「佐賀県・長崎県という九州の観光における“2つの星”」、そして「キハ40、47形の車両」にちなんで命名された。余談だが、キハ140やキハ147は、キハ40やキハ47のエンジンを交換して、馬力アップを図った車両である。

 佐賀県・長崎県の西九州エリアは有明海や大村湾などに面し、車窓からの眺めが魅力的な地域である。西九州新幹線の開業を契機に、西九州エリアの魅力を多くの方々に感じてほしいと考え、JR九州では「ふたつ星4047」の導入を決めた。

 西九州新幹線は速達性を重視して建設されているため、山間部をトンネルで一直線になるように貫いているが、長崎本線や大村線は有明海や大村湾という美しい海が車窓に広がる魅力的な線区であることから、「ふたつ星4047」と西九州新幹線を組み合わせて利用してほしいとしている。

 車両は、キハ47・キハ140・キハ147気動車の3両編成。観光用の特急列車であることから、全車が指定席となる。2号車は、1両を共用のビュッフェ・ラウンジ車とするため、この車両は定員外の車両となり、1編成あたりの定員は80人程度になってしまう。1編成あたりの定員が80人ということは、貸切バス2~3台程度であり、観光列車では妥当な定員数といえる。

 D&Sトレインであることから、客室乗務員が沿線の素材を生かした軽食やスイーツ、地酒なども販売する予定だ。「地産地消」を実現する列車といえる。

運行ダイヤ

 「ふたつ星4047」は土日・祝日を中心に、武雄温泉~長崎間を1日に1往復運転するが、午前と午後とではルートが異なる。

 午前のダイヤは、武雄温泉を発車して肥前山口へ向かう。ここで進行方向を変え、長崎本線を走行して諫早へ向かう。諫早からは長崎本線の新線ではなく、「ななつ星in九州」と同様に、長与を経由する旧線を走行して長崎へ到着する。

 午後のダイヤは、長崎から大村線を経由して武雄温泉へ向かうことになるが、長崎から諫早までは午前のダイヤと同様に長与経由の旧線を走る。このため、長崎本線の旧線の活性化にも貢献するといえる。

 午前のダイヤでは有明海を眺めながら、午後のダイヤでは大村湾を眺めながらの旅行となり、武雄温泉を起点に肥前山口や長崎を経由して、武雄温泉へ戻るかたちでぐるりと1周する。

 ただし、往路の武雄温泉から肥前山口を経由して長崎へ行く場合は、片道の普通運賃は1,850円であるが、復路の長崎から大村線を経由して武雄温泉へ行く場合は、距離が長くなる分、片道の普通運賃も2,170円と割高になる。

 武雄温泉から長崎間も、長崎から早岐経由の武雄温泉間も、片道の所要時間は3時間程度。長崎本線の特急「かもめ」であれば、博多~長崎間を片道1時間50分程度で結んでいるが、「ふたつ星4047」は運転距離がはるかに短いにもかかわらず、所要時間は特急「かもめ」よりも1時間以上も要してしまう。

 時間を要するのは、臨時列車であるために単線区間の多い肥前山口~長崎間では定期列車のダイヤが優先され、行き違いの運転停車などの制約があることに加えて、「ふたつ星4047」は国鉄時代に製造された古い気動車が種車であり、最高速度が95km/hしか出せないことが要因である。

(つづく)

(後)

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