公共と資本のレイヤー|再開発から見る「都市と建築」(3)
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公共空間となるか国立競技場
最後に向かったのは国立競技場である。隈研吾氏デザインによる、木の軒が四重に重なるデザインが印象的である。オリンピックが終わって、今では地上の軒下空間が開放され、ランニングや散歩に活用されている。
施設の看板を見れば、競技場5階の軒下空間も「有効空地」として「都市計画法に基づく再開発等促進区を定める地区計画」により立体的に位置付けられているようである。ここ外苑周辺は、オリンピックを契機とした高さ規制の緩和を受けて再開発されつつある。このことは中島岳志氏らがいう「祝賀資本主義」とも関連するだろう(東京新聞21年9月1日)。
奇しくも隈研吾氏は、都市における格差とメリトクラシー(実力主義)批判の議論のなかで、ニューヨークのセントラルパークを引き合いに出しながら、東京の高層ビル開発にはそれを補完する公共空間がないことを指摘した(KUMA NEWSLETTER#45, December 20,2021)が、この国立競技場でも同じことを言及されているのだろうか。● ● ●
さて、1日歩いて見えてきたのは、公共空間と資本の空間がセットでレイヤー状に、しかも同時に開発されつつあるということである。その背後には、ここ数十年ほどの公共部門の縮小にともなう公共用地の払い下げ、鉄道用地の再編、都心への回帰とその一方での郊外の再興があり、直近ではオリンピック投機があった。
注意すべきは、その公共と資本のレイヤー空間が、いつの間にか一握りのプラットフォーマーだけによって誘導されていた、そんな事態を避けることだろう。そんなことを考えさせられる1日であった。
<プロフィール>
角 玲緒那(すみ・れおな)
1985年北海道生まれ、札幌市立高等専門学校、九州大学21世紀プログラム、九州大学芸術工学府博士後期課程単位取得退学。専門は建築。現在は歴史的建造物の保存修復に従事する。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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