2024年05月08日( 水 )

「BRING」が進めるサーキュラーエコノミー

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日本環境設計(株)/JEPLAN,INC.
取締役執行役員会長 岩元 美智彦 氏

北九州響灘工場

独自技術と30億円を投じ、北九州響灘工場建設

 ──工場立地に北九州を選ばれた理由は、何だったのでしょうか。

 岩元 北九州市から熱烈なオファーをいただいたことがきっかけでしたが、公害を乗り越えてきた工業のまちで、環境に寄与する企業として活躍できれば、という思いで選びました。とくに住宅地から離れているこの響灘のエコタウン敷地内は、広大な産業用地でリサイクルを行う企業も多い。当社が行うリサイクル事業においても、いわゆる「ごみ」といわれるものを扱う工場の建設は、近隣住民からの理解が必要になります。そういった面でも市のサポートが頼もしく、安心してプロジェクトを進めることができました。地理的優位性からも、響灘を選んで良かったと思っています。

 ──この響灘工場で行われている「BRING」とは、どのようなものですか。

    岩元 この工場では、既存のポリエチレンテレフタレートのケミカルリサイクル技術を応用し、繊維向けに自社開発した「BRING Technology」という技術を採用しています。全国から回収した洋服のうち、ポリエステル製のもの(現在はポリエステル100%に限定している)を、再生ポリエステルへと循環させています。

 参加企業さまには、古着の回収からリサイクルまでの一連のスキームの利用料などを、お支払いしていただくかたちになります。単なる製造業ではなく、技術・化学・アパレル・小売など、リサイクルに必要なインフラをすべてもつ“ハブ”になれたことが、「BRING」の仕組みを広げる強みとなったと思います。

 ──どのような企業が参加されていますか。

 岩元 現在では、50以上のブランドや百貨店などと協業し、全国1,500以上の店舗で古着回収を行えるまでに成長しました。たとえば、無印良品さんは店頭カウンターで回収、GUさんはボックス設置で回収するなど、それぞれの方法でご参加いただいています。

 また、アウトドアブランドのスノーピークさんやザ・ノースフェイスさんへは、「BRING」で生まれた再生ポリエステル原料を素材として提供しています。

 店舗における「BRING」の狙いは、ただ洋服を集めるだけではありません。来店されたお客さまが、リサイクル品を持ち込み、そして新たな洋服と出会い買い物をするといったように、消費行動そのものを変えていきたいという狙いもあります。

 当社でも同名のD2Cブランド「BRING」を展開しています。昨年11月には、初の実店舗を東京・恵比寿に開業しました。ご購入いただいた方が、循環型の衣料品を身近に感じられるブランドになれればと思います。

左:[BRING]DRYCOTTONY Sweat Hooded Pullover
右:[BRING] DRYCOTTONY Long sleeve T-shirt

北九州エコタウン事業の中核「響灘地区」

響灘大橋より撮影
響灘大橋より撮影

 1901年の八幡製鐵所の操業開始から、重化学工業を中心に日本の近代化・高度経済成長を牽引してきた北九州市。その一方で、60年代には深刻な産業公害に苦しんだ経験から、いち早く環境改善に取り組んできた都市でもある。そして97年からは、長年にわたる産業基盤や技術力、公害克服の過程で培われた人材・技術・ノウハウを生かした独自の地域政策「北九州エコタウン事業」を推進している。
 北九州エコタウン事業は、2020年3月時点で民間・国・市などからの総投資額が848億円となり、日本最大級の事業集積を誇る。その中心となる埋立地の響灘地区は、約2,000haの広さがあり、リサイクル工場など25社、26事業(21年1月時点)、62の実証研究(20年3月時点)などで構成され、雇用者数は約1,000名にもおよぶ。
 また、現在ある陸上風車17基に加え、25年には洋上風車25基の建設竣工を予定しており、良好な風況を生かしたさらなる産業拡大が期待されるエリアとなる。
 北九州市の公共施設である「北九州市エコタウンセンター」では、北九州エコタウン事業や各工場の取り組みを一般公開しており、国内外から年間10万人(コロナ前)と多くの人々が訪れる。来館者には実際にごみのリサイクル工場を見学してもらうなど、理解を深め、環境学習に役立てもらうことを目的に運営している。

北九州市エコタウンセンター
北九州市エコタウンセンター

【松本 悠子】


<プロフィール>
岩元  美智彦
(いわもと・みちひこ)
1964年鹿児島県生まれ。北九州市立大学卒業後、繊維商社に就職。営業マンとして勤務していた95年、容器包装リサイクル法の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。2007年1月、日本環境設計を設立。資源が循環する社会づくりを目指し、リサイクルの技術開発だけではなく、メーカーや小売店など多業種の企業とともにリサイクルの統一化に取り組む。15年アショカフェローに選出。著書『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。


<COMPANY INFORMATION>
日本環境設計(株)/JEPLAN,INC.

代 表:高尾 正樹
所在地:神奈川県川崎市川崎区扇町12-2
創 業:2007 年1 月
資本金:62億3,000万円(資本準備金含む)
URL:https://www.jeplan.co.jp

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