2024年04月27日( 土 )

「BRING」が進めるサーキュラーエコノミー

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日本環境設計(株)/JEPLAN,INC.
取締役執行役員会長 岩元 美智彦 氏

 サステナビリティに関する機運が高まる昨今、ファッション業界を中心に繊維産業でも世界中でさまざまな取り組みが行われている。なかでも、神奈川県川崎市に本社を置くベンチャーの日本環境設計(株)は、2007年の創業以来「あらゆるものを循環させる」というビジョンを掲げ、繊維をはじめとしたリサイクル事業に取り組んでいる。17年には独自開発したケミカルリサイクルの技術を採用した北九州響灘工場を建設し、翌18年から再生ポリエステルの生産を開始した。同社によるリサイクルプロジェクト「BRING」が目指す循環型社会とは――同社の取締役執行役員会長・岩元美智彦氏に話を聞いた。

デロリアン再現のインパクト、楽しむリサイクルで参加者拡大

岩元 美智彦 会長
岩元 美智彦 会長

    ──創業の経緯についてお聞かせください。

 岩元 私が繊維商社で営業マンをやっていた1995年に「容器包装リサイクル法」が制定され、それを機に繊維リサイクルに深く関わるようになりました。ちょうどそのころ、異業種交流会で高尾(現・社長)と出会いました。彼は当時、大学院で技術経営を専攻していたのですが、意気投合し、2007年に資本金120万円の会社を起業したのが始まりです。最初は、企業で不要になったユニフォームを適切な管理のうえリサイクルをして、その情報を一元管理するコンサル事業を軸に活動し、そこで得た利益で研究開発や設備投資を行っていました。

 当初から繊維リサイクルの技術はすでに開発されていたのですが、リサイクル繊維のもととなる回収・入手方法を確立するまでに、3年かかりました。そうしてスタートさせたのが、使わなくなった洋服や繊維製品を回収する「FUKU-FUKU(ふくふく)プロジェクト」で、これが現在の回収プログラム「BRING(ブリング)」の前身になります。

 ──当時は真新しい事業だったと思いますが、需要はありましたか。

 岩元 プロジェクトの開始当初は、小売企業のリサイクルニーズは高くありませんでしたので、簡単ではありませんでした。ただ、これまでのように「つくって売る」といったサイクルだけのモノ売りの時代は、長くは続かないと感じていました。そこで、循環型社会に向けた取り組みについて説明をするなかで、意義に賛同してくださる方々が少しずつ増え、年間20~30tくらいを回収できるようになりました。

2015年10月に行ったイベントで実現した、ごみを燃料に走る車「デロリアン」
2015年10月に行ったイベントで実現した、
ごみを燃料に走る車「デロリアン」

 さらに15年10月に行ったイベントでは、たしかな手ごたえを実感しました。それは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の劇中で登場する、ごみを燃料に走る車「デロリアン」を実現させるというもの。この夢のような企画で、衣料品回収を呼びかけたところ、日本全国から3カ月間で一気に約20tの洋服が集まったのです。それは当時の年間回収量に相当し、Tシャツ1枚に換算すると6万枚ほど回収した計算になります。イベント当日、700人収容の会場は溢れんばかりの人で盛り上がり、「リサイクルを楽しむ」画期的なイベントとして、世界中へ発信することができました。

 このイベント以降の技術開発において、再生ポリエステル事業にフォーカスし、拠点をすべて集約しようと、工場建設を計画し、投資家にお願いをしました。事業者やVC、銀行から30億円の資金調達ができたのは、創業から10年間ずっと利益を出し続けていた信用も大きかったと思います。

北九州響灘工場

【松本 悠子】


<プロフィール>
岩元  美智彦
(いわもと・みちひこ)
1964年鹿児島県生まれ。北九州市立大学卒業後、繊維商社に就職。営業マンとして勤務していた95年、容器包装リサイクル法の制定を機に繊維リサイクルに深く携わる。2007年1月、日本環境設計を設立。資源が循環する社会づくりを目指し、リサイクルの技術開発だけではなく、メーカーや小売店など多業種の企業とともにリサイクルの統一化に取り組む。15年アショカフェローに選出。著書『「捨てない未来」はこのビジネスから生まれる』(ダイヤモンド社)。


<COMPANY INFORMATION>
日本環境設計(株)/JEPLAN,INC.

代 表:高尾 正樹
所在地:神奈川県川崎市川崎区扇町12-2
創 業:2007 年1 月
資本金:62億3,000万円(資本準備金含む)
URL:https://www.jeplan.co.jp

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