2024年05月03日( 金 )

関税法の規制緩和、日本のアート市場活性化へ

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2021年11月に開業したアジア最大級の現代美術館「M+」(香港)
2021年11月に開業したアジア最大級の現代美術館「M+」(香港)

天王洲で寺田倉庫が先鞭、常設型保税ギャラリー

 今回の改正によって、日本のアート市場が急速に拡大するとはいえないだろう。また、法令や決済、保管に関するインフラ整備には、まだまだ課題も多い。

 そのようななか、先陣を切って常設型保税ギャラリースペースの開設に乗り出したのが、東京・天王洲で美術品保管事業を手がける寺田倉庫(株)だ。今春にも日本最大級のギャラリーコンプレックス「TERRADA ART COMPLEX Ⅱ」内にオープンする予定で、美術品に適した温度・湿度管理、3.8mの天井高、セキュリティ体制、大型作品の搬入が可能なエレベーターなど、美術品の取り扱いに特化した環境を整備するという。

寺田倉庫の保税ギャラリースペース

※変更の可能性あり
<所在地>
TERRADA ART COMPLEX Ⅱ 4F
(東京都品川区東品川1-32-8)
<保税ギャラリースペース面積>
137.87m2
<保税保管スペース面積>
13.64m2
<天井高>
3.8m
<設備>
温度・湿度管理、美術品の運搬保税区域内 全域監視カメラ設置(関税法基本通達42-17準拠)、保税区域入場口 防犯ゲート設置(関税法基本通達42-17準拠)、大型エレベーターほか

寺田倉庫の保税ギャラリースペース(プレスリリースより)
寺田倉庫の保税ギャラリースペース(プレスリリースより)

 同社は「水辺とアート」をテーマに、天王洲エリアのブランド戦略を描いてきた“立役者”であり、もともとワインや美術品の保管などでは高名な企業だ。倉庫業としては後発だった同社では、個人向け事業に特化。温湿度といった環境変化に強い倉庫として評価を高め、ワイン保管サービス業務から美術品や骨とう品の保管サービスへと業務内容を拡大していった。同社の倉庫が立地する東京・天王洲ではアートイベントを数多く開催してきたほか、壁画の展示など、アートの街・天王洲のブランディングに尽力してきた。そういった背景や羽田空港と東京都心の中間地点である立地の強みがあるからこそ、アート市場活性化の先鞭をつけることに期待したくなる。

 まだまだアートと縁が薄い福岡市も、アジアに近く、空港から都心へのアクセスが良いという大きなポテンシャルがある。また、福岡市には「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」だけでなく、コロナ禍で見直しを余儀なくされた「ウォーターフロントネクスト」もある。福岡の国際金融拠点化を目指し、地場の錚々たる顔ぶれが名を連ねる組織「TEAM FUKUOKA」の目的とも合致するだけに、福岡が拡大するアート市場の一端を担うことに期待したい。

(了)

【永上 隼人】

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