「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【1】 人口減少下にあるべき商業とは(前)
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ららぽーと九州初進出
大型商業施設「ららぽーと」が福岡都心にやって来た。「ららぽーと福岡」は、延床面積20万6,500m2、店舗数222店舗、駐車場3,100台。三井不動産が仕掛ける巨大リージョナル型ショッピングセンターだ。面積でいうと、ららぽーとEXPOCITY(大阪府吹田市、2015年開設で7万1,000m2)と同程度の規模だが、EXPOCITYがテナント300店舗あるのに対して、福岡は222店舗と少なめ。1店舗あたりの売り場面積を大きめにとり、ゆとりある設計にしているのが特徴といえる。余談だが、ららぽーと福岡には「とんかつ知青」「Pizza & Pasta Piazza Nao」「九州 はかた 大吉寿司」「久留米ラーメン清陽軒」「うどん大学」「焼とりの八兵衛」など、地元の人気飲食店も軒を連ねる。
さて、広域から集客を得るために“九州初出店”や“ショッピングセンター(以下、SC)初”など、一部では目玉店舗を誘致し地元密着を謳っているが、はたして地域に支持され、地元の人は足しげく通うことになるだろうか(しばらくは渋滞、混雑を避けて様子を見ている筆者だが…)。遠方から来る観光客、大行列の車を収容する立体駐車場が満たされ、消費者が一日その施設のなかで過ごし、お金を落として帰っていく。周辺環境への波及効果はあるだろうか。もしかすると、周辺にある中規模・小規模SCや路面店・専門店は素通りになる可能性もある。地元客に支えられるか、もしくは苦しい撤退になるか。大型商業施設の横行闊歩による地域経済の混乱は、良くも悪くもしばらく続くだろう。
地域密着型となれるか
コロナ禍でアパレルや雑貨などの物販店は、どこも厳しいと聞く。ECサイトへの移行や供給過多による競争、また地域柄の特色を出しにくい特性などが挙げられるが、その一方で期待されているのは、体験型店舗や、そこでしか味わうことのできない飲食店。ららぽーと福岡でも、「スポーツパーク(陸上トラック、サッカー、テニスコート)」「パブリックビューイング、大型液晶観覧」「アグリパーク(貸農園、BBQサイト)」「キッズパーク」「職業体験(キッザニア)」「フードマルシェ(産直市場、グローサラント)」など、地域に根差したアトラクションは多い。スポーツパークは、地元の中学校が部活で使うのではといった話も耳に入ってくる。このように、近隣の生活者の暮らしに沿ったアクティビティを多用することで、消費と結びつける空間経営は流石である。
消費や体験ができることは楽しい。不足しているものを満たしてくれるかもしれない。
しかし、需要と供給という“経済の接点”が一時的にあるだけで、人と人、買い手と売り手の機微の接触や濃い結び目は生まれない。資本主義のなかで、現代の人付き合いは空虚なものだ、というのが寂しい現実だ。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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