「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【1】 人口減少下にあるべき商業とは(前)
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“東京発の終わり”の始まり
東京の方法が、その他の地方都市にとって、参考にならない時代がやって来た。
都心部の超高層マンションを売り切ったお金で開発費を払い、残りを利益として手に入れる。有名なショップを組み合わせて呼び込めば、人が集まる。そんな開発型の利益モデルは、今やほとんどの地方都市にとって参考にならないものだ。むしろ、緩やかに人口が減っていく地方都市において、若者と高齢者の関係をうまくつなぎながら、あるいは地域の資源をうまく生かしながら、幸せに暮らしていく方法にこそ、多くの人が興味を持ち始めている。
人口増加時代、多くの市町村では常に人口の将来予測が「50年後に倍増」とされていた。5,000人の町は1万人になるし、10万人の市は20万人になる。100万人の都市は200万人になるわけだから、常に人口が多い都市を見に行けば、自分たちの将来像がつかめた。そう考えれば、日本の最先端は東京であり、先進事例は東京から学ぶのが定石だったのだ。
地方に最先端を学ぶ
2015年から20年の間に人口が大きく減ったのは、秋田、岩手、青森、高知、山形、徳島、長崎、新潟、山口、和歌山、福島県。横ばいないし増加したのは、東京、横浜、名古屋、福岡、沖縄。エリアでいえば関東圏など、大都市を抱える都県やその周辺の県に多い。福岡も微増ではあるが、この状態がいつまでも続くとは考えにくい。
人口減少時代において、先端事例はどこにあるのか。今や日本の6割以上の市町村は、50年後の人口が「倍増」ではなく「半減」すると予測している。だからこそ今、全国の自治体が求めるものは、「人口が減っているにも関わらず楽しそうに暮らしているまちにはどんな秘密があるのか」「人口が少ないにも関わらず住民の満足度が高いまちには、どんなカラクリがあるのか」という情報なのだ。
コロナ禍で、東京でも商店街の空洞化など、まちの空白を体感することになった。しかし人口減少先進地にしてみれば、そんなことはもうすでに20年前から体験していることだ。そこでどんな課題が発生するのか、それをどうやって乗り越えればいいのか、新しい時代に対応したライフスタイルや政策が必要になってくる。人口が減ることは不幸なことなのか、それとも適正な規模に戻ろうとする健全な動きなのか。人口10万人の市が5万人に向かおうとしているのであれば、人口を再増加させようとするのではなく、すでに5万人になっているまちがどのように幸せな生活を実現させているのかを研究すべきだ。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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