2024年04月16日( 火 )

物価高騰で国交省がゼネコンへ聞き取り

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 活況な建設市況下でのコロナ禍で、原材料費が高騰している。政府はこういった状況を踏まえ、「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」に乗り出した。この対策は、新たな価格体系への適応の円滑化に向けた中小企業対策の一環として行われ、建設業における適正な請負代金の設定や適切な工期の確保について、政府全体で取り組むとしている。

 企業が収益の増大を原資とした賃上げに積極的に取り組むことができるようにするためにも、請負代金や工期について適切に対応することで、中小企業との取引において円滑な価格転嫁を進めることは重要である。国土交通省も、「パートナーシップによる価値創造のための転嫁円滑化に関する事業者団体に対する要請(令和3年12月27日国総政第30号)」などによる周知を図ってきた。

 このような状況を踏まえ国交省は、今年1月から3月にかけて、昨今の資材や原油の価格高騰下における標準見積書の活用状況や見積もりに基づく協議の状況などについて、モニタリング調査を行った。また併せて、昨今の資材や原油の価格高騰による影響や、これに対する受注者・発注者の対応などについてのヒアリングも行った。

 なお、受発注者間や元請下請間での価格転嫁に関する相談などについては、「建設業フォローアップ相談ダイヤル」にて受け付けているという。

調査内容(国土交通省)

調査結果 発注者との関係

価格高騰による影響

 93%が「影響が出ている」状況であり、そのうち57%が「影響が大きく出ている」と回答した。

<影響が出ている(93%):回答例>
■2021年夏過ぎ頃から鉄、鉄筋、石油などの単価が14~15%上昇している。
■18年5月頃と21年12月頃の比較では、資材価格が鋼材1.4倍、鉄筋1.7倍、その他業種で1.2倍程度高騰し、請負金額比で1.0%~5.0%程度の変動が見込まれる。
■金属関係は21年夏頃から、ガソリンは最近高騰。ガソリンが上がることで、運輸関係や材料などに影響が出ている。生コンは22年4月から数千円アップしていると聞かれる。
■鉄鋼材の価格についても21年1月より徐々に上がり始め、同年6月以降さらに加速している。また、21年初め以降にウッドショックによる木材の高騰、同年10月以降に材料メーカーの値上げによるガラス・軽鉄・ボード・防水材などの高騰と、全体で請負金額比約5%前後の変動が見込まれる。

物価等の変動に基づく契約変更条項の有無

 84%が「含まれている」、9%が「含まれていない」のほか、6%が「公共では含まれるが、民間では含まれていない場合がある」と回答。発注者の属性によって異なる状況も見られた。

<含まれていない(15%):回答例>
■資材などは契約直前で資材業者から押さえるので、変動の影響を受けないため。
■(民間工事)物価上昇について施主に説明しているが、受け入れてもらえず契約書に明記できない場合があるため(公共工事では公共約款に物価変動に関する契約条項が含まれている)。
■(民間工事)物価変動の条項を含め交渉しているが、顧客からの要望により物価変動の条項を削除せざるを得ない状況もあるため。2割程度は物価変動の条項を認めてもらえていない。
■公共工事では契約書などにスライド条項を含むが、民間の発注者は「物価変動リスクは請負者負担」という考えが根強い傾向があり、見積要綱などに見積提出後の物価上昇による請負金の変更が認められておらず、質疑においても物価上昇に対する請負金の変更が否定されるケースが多いため。

契約金額変更の申出状況

 「予定を含め、申出を行っている」は81%、「申出を行う予定はない」は19%となった(下請から相談があった場合、71%が発注者へ相談している)。

<申出を行う予定はない(19%):回答例>
■受注時に、将来の物価上昇分も踏まえて受注金額を決定しており、その後の申出は発注者の理解を得るのが難しいため。企業努力で収まらない場合は協議することもある。
■契約条項には含まれているが、民間建築工事において当該条項による変更契約は通例として実施していないため。
■当初契約の範囲内であれば行っていないため。ただし、追加が出れば、その時点の物価変動に応じた単価での変更をお願いすることはある。
■建築工事は発注者と契約してから、鋼材関係もすぐに業者と契約してしまうので、(当社としては)あまり上昇の影響を受けにくいと思われるため。

契約金額変更申出の発注者受入状況

 「受け入れてもらえている」が59%。一方で、「受け入れてもらえない」が16%、「民間では受け入れてもらえない場合がある」が9%と、合計25%となった(元下間は、82%が変更契約を実施)。

<申出を受け入れてもらえない(25%):回答例>
■客先の予算枠の都合により、ほぼ受け入れてもらえない。
■発注者と協議をしたが、理解をいただけなかったため。
■発注者も理解は示されることはあるが、実際に請負契約の変更に至るケースは少ない。
■予算やコストなどによる。なお、物価変動でなく、工期に起因するコストについては、元請たる自社がいったん負担し、その後施主と交渉して交渉不成立なら、そのまま自社で負担し、下請への転嫁はしていない。
■(民間工事)営業と客先の関係が良好の場合は、協議をすることがある。

【内山 義之】


<INFORMATION>
建設業フォローアップ相談ダイヤル(国土交通省)

TEL :0570-004976
受付時間:10時00分〜12時00分
     13時30分〜17時00分
     (土日・祝祭日・閉庁日を除く)
メール :hqt-kensetsugyou110@gxb.mlit.go.jp

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