2024年05月03日( 金 )

「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【2】商いと暮らしの中和点を論考する(前)

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「ハコベル」の躍進

ハコベル    2015年から始まった配送サービス「ハコベル」は、デリバリーなど個別運送依頼の受注プラットフォームとして、ドライバーの働き方を変革させた。まず、ドライバーの所属する運送会社がハコベルに登録し、荷主の配送依頼を受け付け、時間や場所に応じて空いているトラックを手配する。案件終了後に次の仕事をスマホでチェックし、近くて時間の合いそうな集荷依頼を受注し、現場に向かう。ハコベルを使うことで待機時間がほとんどなくなり、空き時間をうまく活用して効率良く仕事を受けることができる。あるドライバーは、長時間働いて疲れて帰っていく日々だったが、今では1日の短い時間でたくさんの案件を捌き、収入も前より上がったという。

 荷主にもメリットがある。法人契約している企業が自社の物流センターから全国の倉庫へ商品を運ぶとき、自社で運送トラックをもたずハコベルのネットワークを活用する。契約運送会社が決められた日時に集まったうえで情報を一元化することで、各運送会社への配車状況が一覧でわかるようになり、手配漏れも配車業務の時間も短縮(年間280時間減)され、配車伝票も削減(年間4,600枚減)されたという。現在のハコベルの登録車両は全国で3万4,000台。ハコベルを主な収入源にするドライバーも、増えているようだ。

物流の最適化

 ハコベルの功績は、物流を最適化させたことだ。以前の配送の仕組みは、大手運送会社の下にいくつもの下請が連なり、発注は電話・FAXのようなアナログなものだった。空いているドライバーがいても、仕事をうまく振り分けることができず、非効率だった。たとえば飲料メーカーは、夏の繁忙期に出荷できる実働部隊としてトラックを自社で所有する。しかし閑散期には、その多すぎるトラックを余らせてしまうという課題もあった。ハコベルにより、繁忙期に合わせてトラックを保有するのではなく、閑散期に合わせることで少数精鋭の人員に絞ることができるようになったわけだ。

物流の最適化
物流の最適化

 業界によってその繁忙期の波は少しずつずれているので、困っているタイミングだけハコベルを活用する仕組みを構築し、年間を通じて安定した受注が見込めるのである。無駄や非効率、機会ロスをなくしていくことで、充実した無理のない働き方が実現できている好例ではないだろうか。

▼関連リンク
「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【1】 人口減少下にあるべき商業とは


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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