2024年02月29日( 木 )

建設業に必要なのは「公正な価格競争と賃金の価格転嫁」(前)

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(一社)建設産業専門団体連合会 会長 岩田  正吾  氏

会長 岩田 正吾 氏
会長 岩田 正吾 氏

    国土交通省は今年8月、担い手確保や生産性向上等の従前からの建設業における課題や、昨今の建設資材の急激な価格変動等の建設業を取り巻く環境の変化を踏まえ、将来にわたって建設業を持続可能なものとするために必要な施策の方向性についての検討を行うため、「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」を設置した。このことについて、健全な建設産業を目指し、担い手の確保・育成に向けた取り組みを進める(一社)建設産業専門団体連合会会長・岩田正吾氏に話を聞いた。

(聞き手:(株)データ・マックス取締役 児玉 崇)

建専連の役割

 ──(一社)建設産業専門団体連合会(以下、建専連)の役割と強み、全国各地区の団体状況を教えてください。

 岩田 高齢化で職人不足が深刻化するなか、次世代の担い手の確保や受注価格が安定しない問題に対して、建設現場の最先端で仕事をする職人が職種や団体、地域を越えて全体で声を挙げる必要があり、職人団体の連合体である建専連の重要性が増しています。

 建専連の加盟企業数は約5万4,000社で、正会員34団体、特別会員2団体、賛助会員3団体が加盟しています。建専連の初代会長・山崎善弘氏が、各種専門工事業団体を大同団結の下に結集させ、2代目会長・才賀清二郎氏が団体としての土台をつくり、2021年に私が3代目会長に就任しました。これまでの20年間の活動により、「とりあえず加盟しておく」という意識から、「建専連で声を挙げて現状を良くしよう」という意識が高まってきました。声を届けるまで時間がかかったとしても、業界全体の声として届けられることが建専連の強みです。

 ──そのなかで九州地区連合会には、どのようなことを期待していますか。

 岩田 地区建専連は全国10地区で組織されており、活動をともにしています。各地区連合会は建専連と対等な関係で、個々の業種団体を越えて横断的共通課題の解決に向けて、大同団結して取り組みを進めています。

 九州地区は、福岡県で活躍している杉山秀彦氏が会長を務め、地域の任務を担っていただいております。九州は地域としてのまとまりがあり、活気もあるため、団体の活動を後押ししてくれる存在として期待しています。お酒を飲んで語るなかで本音を伝え、地域として団結できるのは九州の「血筋」ですね。

施工現場(建専連提供)
施工現場(建専連提供)

環境整備検討会への期待

 ──建設業界では担い手確保が喫緊の課題とされるなか、今年8月には国土交通省が「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会」を設置しました。建専連としては、何を期待されますか。

 岩田 人材不足を解決するためには、2つの取り組みが考えられます。1つは次世代の担い手を確保すること、2つ目は外国人材を活用することです。

 職人の高齢化が進むなか、企業は人件費として確保できる原資は限られ、受注単価の範囲内で解決すべきだとされてきました。24年からは、建設業も時間外労働の上限規制が適用されるようになり、罰則もあります。割増単価の残業代を支払うのは当然ですが、総価請負で金額の安値競争をしているのでは対応できません。

 米国のニューヨークでは昨年、採用が難しいレストランで残業代が時給5,000円を上回る賃金で採用しておりますが、人件費の上昇分は価格転嫁することが当たり前です。一方、日本では「ワンコインランチの美学」により、ランチを500円にすることを優先して高い賃金を払えず、高い賃金をもらっていない人のために安い価格でランチを提供するという、悪循環に陥っています。政府もこの流れを変えるために取り組んでいますが、公共工事だけでは効果が限定的です。民間の発注者であるデベロッパーは、元請のゼネコンが賃金や物価の変動リスクを見込んで価格を設定しているという認識ですので、専門工事業の人材確保は「元請と下請の問題だから関係ない」と、これまで踏み込んできませんでした。

 職人の賃金は全産業と比較して大幅に低く、年間勤務日数も多いという調査結果があります。地震大国で技術を蓄積してきた日本の職人は世界と比べても圧倒的に優秀な水準にありますから、賃金をせめて全産業平均にまで高めることが必要でしょう。

【石井 ゆかり】


<プロフィール>
岩田 正吾
(いわた・しょうご)
1964年10月生まれ。大阪府枚方市出身。2002年、正栄工業(株)代表取締役社長の就任を経て、関西鉄筋工業協同組合理事長、(一社)大阪府建団連副会長、(公社)全国鉄筋工事業協会会長、(一社)建設業振興基金理事、職業訓練法人全国建設産業教育訓練協会理事、(一社)建設技能人材機構理事、(一社)建設産業専門団体連合会会長、中央建設審議会委員、優秀施工者国土交通大臣顕彰審査委員会委員、勤労者退職金共済機構運営委員を現任。

(後)

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