2024年04月19日( 金 )

解体“一式”工事の確立へ(後)

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 建設業でありながら建てるのではなく“壊す”ことで、まちの新陳代謝に寄与している解体工事業。福岡県内の解体工事業者間の情報交換や関係性の構築および強化を担う(一社)福岡県解体工事業協会の会長・平典明氏に、業界を取り巻く現状や課題、解決策などについて話を聞いた。

(一社)福岡県解体工事業協会
会長 平 典明  氏

解体工事業の地位向上へ(つづき)

 ──(公社)全国解体工事業団体連合会(以下、全解工連)の副会長も務めておられますが、全解工連の主な役割などについて、お聞かせください。

 平 全解工連は93年9月に社団法人として設立し、13年4月に公益社団法人に移行した全国団体で、来年で設立30周年を迎えます。全解工連は一部の県を除く各都道府県の解体工事業団体41団体の正会員、賛助会員35者(社)、名誉会員3名で構成されており、正会員の41団体の傘下企業は約1,750社に上ります。

 現在、全解工連では全国の都道府県すべてに解体工事業協会をつくることを目標としています。具体的な問題点は、中国・四国地方はもともと解体工事業者が少ないため、協会が存在しない県があることや、各団体で名称が違うことなどです。一例を挙げれば福岡では「(一社)福岡県解体工事業協会」ですが、他県では「〇〇県解体工事業組合」などの名称もあり、法人化されていない団体もあります。各県団体の法人化を含め名称を統一し、全国的な組織化を図っているところです。

 全解工連の設立当初からの目的は「解体工事業」の確立です。解体工事や杭工事などのさまざまな業種は、とび・土工・コンクリート工事という大きな括りに入れられており、業種として確立していませんでした。そうしたなか、46年ぶりの建設業法の改正により「とび・土工工事業」から「工作物の解体」が分離独立し「解体工事業」として新たに追加されました()。そして21年3月末には「とび・土工工事業」の技術者を解体工事業の技術者とみなす経過措置期間が終わり、本当の意味で「解体工事業」が確立しました。現在では全解工連が実施している技術者資格制度「解体工事施工技士」は、建設リサイクル法上の国家認定資格として認められています。

 その他にも基幹技能者の資格制度に取り組んできて、22年2月に講習実施機関としての認定を受けました。23年6月以降には第1回目の「登録解体基幹技能者講習」実施が決定しました。その後は能力評価制度も導入される予定で、CCUS(建設キャリアアップシステム)への加入推進が期待されています。

 今後は解体工事業界の未来ビジョンの作成にも取り組み、目指すべき将来の解体工事業を創造していきます。

 ──業界が抱える課題について、お聞かせください。

 平 依頼する側からすると、解体=壊すだけという認識でしょうが、実際には違います。たとえば、発注者からの設計図書などによる事前の情報提供の有無の違いで、作業の安全性・効率性が変わってきます。しかし、設計図書を保管しているケースは少なく、解体が決まってから調査することが多く見受けられます。依頼者や関係者の方々に解体工事への認識・理解を深めていただくことで、建物の改修や改造の履歴が分かる設計図書の保管がなされるようになれば良いと考えています。

 解体工事業は、まだ成長途中だと思っています。建築工事や土木工事に比べると解体工事業は標準化が難しく、学問的な研究も進んでいません。しかし今後「30年経過した建物のスラブに重機を乗せるにはどの程度の補強が必要か」などの研究がなされ、学問として確立されていけば、建築一式や土木一式と並んで解体「一式」工事も、許可業として独立できるのではないかと考えています。もちろん簡単ではないと思いますが、業界としては前向きに取り組んでいかなければならない主要な課題だと認識しています。

解体現場を訓練に提供

新規入職者の獲得

 ──業界における職人不足について、お聞かせください。

 平 職人不足については、「解体工事業」でも非常に大きな問題です。高齢化が進むなか、各社とも新卒採用には苦慮しているのが現状です。この状況を打開するため、若い人たちに「解体工事業」の魅力を知ってもらうことで、入職を勧めていくことが重要だと考えます。

 その一環として、当協会も加盟している建設産業専門団体九州地区連合会が福岡県立鞍手竜徳高等学校で、今年5月に実施された専門工事を体験する「学校キャラバン」に参加し、解体重機の体験が生徒さんたちに大変喜ばれました。また、同建専連の事業として新規入職者向けのDVDを作成された際には次世会(当協会の青年部)が撮影に協力しました。解体現場や仕事の楽しさを紹介する内容が好評で、YouTubeにもアップされています。

 その次世会は、入社した若者の定着を図るために若い経営者や次世代の解体職人の勉強と交流の場として活動を行っていて、他県協会の青年部との交流会なども実施しており、「全国にもこんなに頑張っている若手職人がいるんだ」「自分たちも頑張ろう」というようなモチベーションの向上になっています。

(一社)福岡県解体工事業協会 会長 平 典明 氏
(一社)福岡県解体工事業協会
会長 平 典明 氏

 ──最後に、解体工事業を目指す人たちに向けて、メッセージをお願いします。

 平 人口減少が避けられないなか、新たに土地を開発して住宅をつくることよりも、いかに今ある建物を長く使うかということや、土地の有効利用を考えることで建物のリフォームや建替えの需要が増してくると思います。また、高度成長期に大量に建築された建物が更新期を迎え、まだまだ繁忙期が続きます。解体工事業は街の新陳代謝に必要不可欠な仕事です。環境保全、循環型社会構築など、未来に向けたSDGsなビジョンに携わる仕事として魅力的な業種でもあり、今後は成長産業となると考えています。また、防災活動などを通じ社会貢献できる業種として、自身の仕事にプライドをもって働くことができます。

 私は、かねてより「いつの間にかなくなっている」のが、良い解体工事だと考えています。解体工事ではどうしても騒音が出がちですが、できるだけ騒音を出さずに作業を行い、そこを通る人々が気づいたときにはいつの間にか建物がなくなっている、というのが理想です。

 そして、その場所に新たに素敵な街がつくられ、そこに集う人々の笑顔があふれることが願いです。

 今後も、解体工事の技術の研鑽や産業廃棄物の適正処理とリサイクルに取り組み、循環型社会の構築に向けたさまざまな活動を行っていきます。そして、日々の解体工事の施工を通じて地域社会に貢献できるように信用と信頼を積み重ね、(一社)福岡県解体工事業協会のさらなる飛躍を目指していきたいと考えています。

(了)

【内山 義之】

※:14年6月4日交付の「建設業法の一部を改正する法律(平成26年法律第55号)」のなかで、解体工事業の業種区分の見直しは16年6月1日に施行。 ^


<プロフィール>
平 典明
(たいら・のりあき)
1961年、福岡市出身。高校卒業後、大手資材メーカーに勤務しながら専門学校を卒業。退職後、(株)平組に入社。95年同社代表取締役に就任。2001年社団法人福岡青年会議所・副理事長。09年5月より(一社)福岡県解体工事業協会・会長を務める。11年大学卒業。19年上部団体である(公社)全国解体工事業団体連合会・副会長。博多ロータリークラブ・会員。
 

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